正直な話。
私は精神に障害を持っている。患ってもう約20年。そのせいで大好きだった食堂の仕事もやめた。好きなものばっか集めたお店。今も思い出すと甘く香る。
今はもうすっかりおばさんになって、太ったせいで膝が痛くてもう立ち仕事は無理。今は羊毛をのんびりと紡いで毛糸にするのを仕事にしている。屋号は「のんびりや」。スピンドルという糸巻き棒と枷一本であくせくせずに作業をしている。ひとりで。
趣味ではじめた羊毛紡ぎを仕事にできないかと思ったのは割と最近。
思っていたら叶ったりして、古い友人が声をかけてくれて初めて売れた!自分の思いのこもったものが売れるというのは本当にうれしい。食堂の時もそうだったけど。
ぜんぜん量産はできないしマーケティングとかもわからない。今はやりの糸とかも。ただピン!ときた羊毛を仕入れてのんびりと紡ぐ。年中売れるものでもないので夏は別のことをしたいとも思っている。なにやるかな?
私はきままな人間なのに、この地味な羊毛仕事を続けてやっているのは奇跡だ。コロナと膝痛の恩恵だ。そうでもしなきゃ四方をくんくんしながら歩き回っているよ、犬のように。奈良県に来て三年。あんまりどこにも行けていない。旅好きな犬なのに、悲しいね。
しかしコツコツとした地味な仕事も案外好きで、小さいときは母の実家が農家でみかんを栽培していて、実をわっかに通してサイズごとに分けるという作業を手伝っていた。大きくなってからはみかんの収穫もした。沖縄にいた時は農協のアルバイトでサトウキビ植えをやった。これも地味で地道な仕事。
そのまま農家に嫁いだので子供が小さいときは、たくさん収穫したかぼちゃでとろとろプリンを作って農協に卸したりもした。暑い沖縄でも夜なべ仕事だ。かぼちゃが一段落すると中学生が作った紅芋でクッキーを焼いては卸した。お菓子を作るのは子供の時から大好きなのでそれでお金がもらうのはうれしかった。
精神の病気になってからはあまり働けず、苦しかった。
再婚して奈良県に来て奈良県のことをあれこれ調べていたら、綿を育てて糸にしているところを見つけた。「!」と思ったけどもう定員いっぱいだった。がっかりしながら「紡ぎ」でググっていると「羊毛紡ぎ」にいきあったった。羊毛を販売しているところを見つけて、羊毛とスピンドルと枷を買った。本を買って見よう見まねではじめた。
「羊毛をさわるのは精神の安定にいい」とある人から聞いたので、信じて続けてみた。そうしたら買いたいという人が現れるまでになった。まだまだ未熟者だけど前進あるのみです。