エポキシカチオン電着塗料構成成分
塗料はF-1(顔料分散液)とF-2エマルション溶液の2液混合系になる
エポキシ樹脂はベンゼン環を持っておりために、紫外線で劣化しやすいため、下塗りで使用されるか、光が当たらないところで使用される。
F-1 構成成分
分散樹脂
アミン変性エポキシ樹脂(エポキシ樹脂とアミンを反応させて水溶化)
分子量や水和官能基量は各社様々だが、多くの場合、塗料メーカーで
合成を行っている
顔料
着色顔料:酸化チタンやカーボンブラック、その他着色顔料
体質顔料:沈降性硫酸バリウム、カオリン、タルク等
防錆顔料:モリブデン化合物、ランタノイド系(エッジ防錆用)
硬化触媒:スズ化合物、ビスマス化合物等
添加剤
消泡剤:分散時に必ず泡が立つために添加
F-2 構成成分
メインエマルション
エポキシ樹脂(シェル):アミン変性エポキシ樹脂
多くの場合は直鎖のエポキシ樹脂(分子量1000~2000程度)の
エポキシ末端を2級アミンと反応させ、末端3級アミン化している。
単純なBis-Aエポキシ樹脂(例 JER-1004等)をベースとすると、軟化点が
高く融着性が悪いために、脂肪族エポキシ樹脂と液状Bis-Aエポキシをビス
フェノールAでつないで分子量を調整したもの(2段方エポキシ樹脂合成
と同じ)をアミン化したものが主流になっている。
ブロックイソシアネート(コア)
イソシアネートの種類やブロック材を工夫することで、電着性や硬化
性、乳化性の調整を行い、複数種類を組合わせて塗料化していると考
えられる
・芳香族イソシアネート系(MDI,TDI)
安価、黄変しやすい
ブロック剤の種類によっては強固なウレタン結合の結晶を作るため、
特許ではεカプロラクタムとブチセロの2種類でブロックしていること
が多い
・脂肪族イソシアネート(HDI、HDIヌレート、IPDI)
芳香族系と比べてやや高いが黄変しにくい。
HDIは分子量が低く、ブロック化した際にはウレタン結合が多く結晶
化しやすい、IPDIはTgが高いが価格が高いために主にHDIヌレートが使
用されていると推測される。
エポキシ樹脂(シェル)とブロックイソシアネート(コア)を適量で混合後、酸中和(コスト面から主に酢酸)し、徐々に水を加えていき転相乳化を行うことで塗料化をしている。
粘弾性調整剤
レオコン剤、流動調整剤等各社呼び方様々
析出塗膜は焼き付け時に粘度が下がり、表面張力によりエッジが透けてしまう。対策として粘度を高くするために主にアクリル架橋粒子が添加されている
作り方A(主流?):乳化重合での合成
水に水溶性アクリル樹脂溶かしたところへ、アクリルモノマー、多官能アクリレート、重合開始剤を徐々に入れていく。
製造コストは安いが水溶性アクリル樹脂を過剰に使用すると電導度が高くなりクーロン効率が低下するため、ピンホールが発生しやすくなる(量は少ないので防錆用途では問題なし。別章で記載する絶縁用途では課題になる)
作り方B :シランカップリング剤の使用
アクリル樹脂の側鎖シランカップリング剤を持ったアクリル樹脂合成し、中和後水を入れてエマルション化する。その後、エマルションを80℃~90℃で反応させることで側鎖のシランカップリング剤同士を反応させ粒子化する。
原料コストが高く、仕上がり品中の溶剤量が多くなるため防錆用途には現在ではほとんど使われていないと考えられる
まとめ
電着塗料の詳細な組成は公開されていないが、特許開示情報からは樹脂はほぼ近しいものになっている。
各社の性能差は味付けの部分にそれぞれノウハウがあると思われる
樹脂設計開発側からの考えだが、エポキシ樹脂の分子量ばらつき(Mw/Mn比)を抑えることで樹脂の粘度が低下をさせ、より高分子のものを塗布することが性能の向上方法だと考えられる。