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完全メタバース音楽イベントマニュアルとAWAKE24の裏側
こんにちは!
VRChatで『V-Kitazawa AWAKE』というライブハウスを運営しているYAMADAです。
当ライブハウスにて、去る2024年12月6-7日にかけて、24時間音楽イベント『AWAKE24 3rd』を開催いたしました。
#AWAKE24 3rd、無事完走いたしました!
— V-Kitazawa AWAKE (@AWAKEVRC) December 7, 2024
出演者の皆さん、ご来場の皆さん、配信でご覧になった皆さん、AWAKEを楽しんでいただきありがとうございます!
このライブハウスも5周年を迎えましたが、VRCの音楽文化とともにまだまだ続いていきます。
イベントのご相談、お待ちしております! #AWAKEVRC pic.twitter.com/BtrjRzoWaA
3rdとついている通り、3回目の開催となり運営ノウハウもだいぶ蓄積してきました。
今後のメタバースの音楽文化醸成に寄与するため、微力ながら反省点なども踏まえて運営面のナレッジを共有したいと思います。
が、先に結論から言うと最も必要なのは『人手』です。まずは過酷なイベントの旅に出る心強い味方を作りましょう。ちなみに本記事では味方の作り方は解説できません。よろしくお願いします。
読む前にAWAKE24ってなんやねんという方のために、
・前々回の振り返り記事
・各メディア様に執筆いただいた記事
https://metacul-frontier.com/?p=17644
・配信アーカイブ
上記共有しておきます。お時間ある際にご覧くださいませ。
どういうレベルのイベントなのか
本題に入る前に、規模感の話から。
開催時間は12/6 19:30 ~ 12/7 24:30 の合計29時間(うち4時間休憩)。
述べ人数は計測できていませんが、現地は深夜帯、朝方を除いてほぼ常に満員(70人上限)、12/9現在の配信アーカイブ(Part1,5~8)の合計再生数は5000程度とユーザーコンテンツとしてはそこそこ注目していただけた方かなと思います。
合計34組の出演者の幅も広く、VRChatユーザーに偏重してはおりますが、VtuberやVRChatをベースとしていないユニットやバンドにも出演していただいており、お祭りという面は演出できたと実感しております。
なお、参加費、出演費共に無料です。
運営面を抽象的に現すと、無料イベントにしては頑張りすぎ、有料イベントにしてはちょっと足りないくらいの塩梅だったかと。
ですので、本記事を読むなら無料イベントだけどクオリティをちょっと上げたいくらいの方がちょうどいい気がしています。
長時間イベントという特殊性はありますが、なるべくほとんどのイベントに当てはまることを抜粋して記載していきます。それではいってみます!
事前準備篇
コンセプト策定
まずは自分の中で、何をやりたいか、どういうイベントにしたいかなどを考えて言語化します。適当にメモしとけばいいと思いますが、後述の企画書にも関わってくるので適当すぎは良くないんじゃないかな……
⭐️Summary⭐️
コンセプトを言語化しよう
やりたいことをまとめよう
日程調整
ここがスタート地点です。スタッフたちと日程を決めます。音楽イベントなら土日の夜が無難でしょう。外部の会場を使用するならそちらとも連絡を取って押さえておきましょう。
また、この段階でいつまでにポスター作る、告知する、演者に情報共有する、といったロードマップ、マイルストーン的なものを作っておくとどうなってんのこれ?と途中で迷うのを防げます。
ちょっと待って!出演者の都合を聞いてからじゃないとダメじゃない?と思った方はコンセプトに戻りましょう。「○○さんを出したい!」というコンセプトがあるならその通りですが、AWAKE24のようにお祭りをやりたいという狙いが先に立っているなら、日程を先に打ち出したほうが何かとスムーズに運びます。
⭐️Summary⭐️
日程を確定しちゃおう
会場を押さえよう
稼働できるスタッフを確保しておこう
ロードマップを組んでおこう
ブッキング
ではどうやって出演者に日程を合わせてもらうのか?
そんなの、さっさと声をかけるに他なりません。3~4ヶ月前くらいに声かけるのがいいかと思います。
じゃあどうやって声かけんねんという話ですが、こちらも企画書をぶつける以外にありません。企画書なんて作ったことねーよという場合でも大丈夫です。必要事項がまとまったテキストであれば大丈夫です。以下に必ず記載するべき事項をまとめておきます。
・開催日程
・コンセプト、やりたいこと
・配信の有無
・出演時間(出番が何分あるか)
・報酬の有無
・スポンサーの有無
特に重要なのは『報酬の有無』です。これによって出演の優先度がかなり変わってくるからです。そして、ないならないで出たいと思ってもらうために、『コンセプト、やりたいこと』が重要になってきます。そういうわけで適当すぎてはいけないのです。
また、大手に声かけるなら競合の恐れもあるので『スポンサーの有無』も注意したい事項です。ないならないで報酬がない理由にもなります。
つらつら説明されてもアレなので、実際に今回使用した企画書を公開します。言葉遣い的な面で、有料イベントならだいぶNGな企画書であり、筆者と出演者の関係値に依存する内容であることはご留意の上お読みください。
出演を承諾してもらえたら、Discordのグループなどまとめて連絡できるところに案内しましょう。
配信する場合は楽曲やオケの権利関係のチェックも肝要です。
そして必ずやるべきこととして、出演者の名義チェックがあります。無償にしろ有償にしろ、イベント運営側がこれを間違えた状態で外部に公開することは大変失礼な行為です。マジでこれできてない人多すぎてどないなってんねんってなること、かなりあります。TwitterやDiscordネームからコピペしたから大丈夫、ではなく必ず本人に確認してもらいましょう。
⭐️Summary⭐️
企画書をしたためよう
3~4ヶ月前には声をかけよう
配信するなら権利チェックも
⚠️名義をチェックしておこう⚠️
出演者との関係値を客観的に理解しよう
告知
日程、出演者が決まったらいよいよ告知を打ちましょう。
こちらは大体開催日の1~2ヶ月前に打っておくのがいいと思います。
載せたい情報としては、
・日時
・出演者
・参加方法
・配信の有無(あるなら配信チャンネルも)
あたりがあれば必要十分かと思います。できるだけかっこいいのを作ろうね!
余談ですが、そこそこの頻度でイベントのタイムテーブルを公開してほしい!とお客さんから聞くことがあります。ここの対応には諸説あると個人的には思っており、長時間イベントなら公開する、短時間で出演者も少ないイベントなら公開しないのがポリシーです。
ライブハウス仕草ではありますが、一度イベントに来たならそれを最初から最後までトータルで楽しんでくれ、文脈があるから。というイベンターのエゴからくるものです。しかし長時間だと流石にそれにお客さんをつき合わせるのも悪いし公開します!って考えですね。ここは本当に諸説あるので、皆さんにお任せします。
また、大型イベントなら告知を小分けに行うのも効果があるでしょう。
そのあたりはロードマップの段階で決めといたほうがいいと思います。
⭐️Summary⭐️
告知を打とう
ビジュアルにはこだわろう
告知の戦略も事前に決めておこう
タイムテーブル
香盤表と呼ばれたりもするタイムテーブルですが、これは出演者的には最も早めに教えて欲しいところです。できれば1ヶ月前にはわかってると嬉しいでしょう。また、何度も見返すと思うのでDiscordには専用チャンネルを作ってください。
出演者が多いと調整も大変ですので、ブッキングの段階で〜時なら出られるとか、予定もふんわり把握しておくとベターです。
雑な香盤表のサンプルも貼っておきますね。
また、副次的なものとして、イベント当日の台本(タイムライン)を作っていつ誰が動けばいいかを可視化したり、運営マニュアルを作って出演者が迷わないようにするのも大切です。手間はかかりますが、本番中に問い合わせ対応をするより遥かにマシなのです。いかに事前準備するかが大切です。孫子もそういってました。とはいえ毎回準備するのは結構大変なので、イベントの規模感に応じて用意、でいいかと思います。
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![](https://assets.st-note.com/img/1733717262-mfKNUeJXq6cz8BEkY7Punpg3.png?width=1200)
⭐️Summary⭐️
出演者の予定に応じて香盤表を組もう
香盤表はめっちゃわかりやすいところに置いておこう
当日のイレギュラーを減らす準備をしよう
リハーサル
メタバース上ということで勝手が違うので、会場の導線や動きを理解してもらうためにもリハーサルの機会を設けましょう。
MCがいるなら台本読み合わせをして進行を理解してもらうことはかなり大切ですし、キュー出しなどコミュニケーションラインを把握してもらわないと本番に支障が出るでしょう。
出演者にとっても、会場の設備や音の出し方は理解しておきたいものです。
欲を言えば通し練習、通称ゲネプロを行えたらもはや盤石ですよね。
……というものの、出演者の拘束時間を増やすのもあまり良くないので(無償なら尚更)、運営マニュアルや台本をしっかり準備しているなら希望者のみとかでもいいかもしれません。AWAKE24はそうしています。
ぶっちゃけ、本番の1ヶ月前に会場リハしたけど全部口頭で説明されたので本番で何も覚えてないとか全然発生します。可視化は大事。
ついでに配信のチェックもやってしまうことをお勧めします。
URLやストリームキーが合ってるか、カクついたり音が消えたりしてないかなど。別のチャンネルに流し込むなら限定公開のテスト用枠を作ってもらって。
演者への案内を円滑に行うために大切なのは、対応するスタッフが流れを理解しており、決裁権を持つ人間が誰なのかを現場が把握していることです。本番篇でも同じことを言います。
⭐️Summary⭐️
リハーサルを行おう
リハがなくてもわかる資料を用意しよう
配信もテストしよう
少なくともスタッフは流れを理解しておこう
決裁者をはっきりさせよう
座組
関わるスタッフが多いなら、役割分担はもちろん必須です。AWAKE24では長時間になるのでシフト組んでました。
お仕事ベースで言うなら、基本的に一人一役が鉄則です。とはいえ人数的に厳しいとか全然あることなので、全員が自分は何をすればいいか把握していれば兼任も良いでしょう。抽象的な物言いになりましたが、必要なポジションを具体的に解説していきます。
ディレクター(以下D)
当日の進行管理をする、最も大事な役割であり最も暇であるのが理想のポジションです。当然ながら進行を全て理解しており、イレギュラーが発生した場合に判断を下し責任を取る必要があります。
ほんっっっっっっとうにこのポジションは切らないでください。何かあった時の立て直しの速さ、決裁者がわかることでの現場の心理的安心、そして現場全体の空気と影響を及ぼす範囲が本当に広いのです。
大切のなのは、何があっても(メタバースでも)笑顔を絶やさないことです。ポジティブな空気を漂わせることです。あなたの双肩にすべてが乗っていることを忘れないでください。サブディレクター(以下SD)
Dに何かあったり、トラブル対応中などで使い物にならなくなった時に矢面に立つのがサブディレクターです。同じく進行を把握している必要があり、Dの指示で動いたり、Dが忘れてそうなことを耳打ちして動かしたりとこちらもやることが多いです。
AWAKE24では筆者が出演者でもあったり配信もしていたりとてんやわんやしていたので、SDには本当に助けられました。マジでありがとう。演出
会場の設備に応じて、出演者を演出して会場を盛り上げます。
基本的に手が離せず、集中力が必要なポジションなので、イベントの尺に応じて途中交代するリソースを確保しておきましょう。
セットリストをもらっているならそれに応じて演出を操作したり、ないならないでそれっぽく演出するアドリブ力もあるといいね。配信
youtubeなりtwitchなり、配信プラットフォームに映像を流し込むポジションです。OBSなど配信ソフトの使い方を理解し、配信するチャンネルによっては事前にストリームURLとストリームキーを把握しておく必要もあるため最も専門性が高いと言えるかもしれません。
本来はカメラ、スイッチャー、配信はすべて別の人間が行うのが理想ですが、メタバース上ではこれらをすべて一人で行うことが多い気がします。過労死すっぞ。
また、別の人間がやるべきこととして配信監視というものもあります。配信開始後に何かトラブってないか、その内容はどういうものかを配信担当に伝える役割です。いるかいないかで復帰の速度がダンチです。余裕があれば立てましょう。予備人員
上記いずれかのポジションに何かあった時、スッと入ってなんとかできる人間です。必要ないのが一番ですが、実際いると助かることも多いです。
変なユーザーがいる時の治安維持とかもしてもらいましょう。
このように、人がいればいるほど現場は安定します。役割分担をはっきりできればそれぞれの負担は減り、割り振られたポジションを集中して全う出来ます。だから大切なのは人手なのです。
座組を出演者に公開する必要はないっちゃないですが、責任者をはっきりさせるためにもディレクターは公開しておきましょう。
⭐️Summary⭐️
ディレクターは必ず立てよう
座組を組んでおこう
何かあったらディレクターを吊し上げる準備をしておこう
セットリスト
出演者が何を演奏し、どう演出して欲しいかをまとめたリストです。
スプシでテンプレ作って編集可能リンクを送りましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1733722193-Hx4KicLTgt1YOnlRQqGBepvP.png?width=1200)
セトリありきで演出を作る場合、当然早めに欲しいものかと思います。しかしながら、演者側としては新曲の完成度や前後のライブの兼ね合いなどで、直前まで決めたくないという都合もあります。
そういうことで、早めにセトリの提出をお願いする際は、理由を添えて記入をお願いすると良いかもしれません。ちなみに現実のライブハウスとかだと当日にセトリ提出も結構多いです。
また、音源やMVが必ずあるとも限らないので、そういう時はイマジネーションで演出さん頑張って!
超余談ですが、筆者がAWAKE24の準備で忙しかったのでメンバーにセトリ提出をお願いしました。入れたと言ってくれたので安心していたのですが本番終わった後に見たらこれでひっくり返りました。照明スタッフほんとにごめんね。新曲もあったのに……わかんなかったよね……
![](https://assets.st-note.com/img/1733722164-rXYOpAh1eCSiQcRoGDVJ235M.png?width=1200)
⭐️Summary⭐️
セトリを書いてもらおう
早めに出してもらうなら理由も添えよう
本番篇
ここまでマニュアルを読んで完璧に実行したあなたは気づいたはずです。
そう、本番でやることそんなになくね?と。
そうなのです。事前準備がすべてなのですから、事前準備がすべて完璧に行われていれば、すなわちイベントは完了しているに等しいのです。
基本的には香盤表、タイムラインに沿ってディレクターがキューを出し、それに応じてスタッフと演者が動く。何かあったら粛々とディレクターに報告し、判断を仰ぐだけ。
まぁそれで終わってくれるわけがないのが現場なのですが……
よくあるトラブルとかまとめようと思えばまとめられるのですが、対応策のほとんどが事前にチェックをよく行い人的リソースを割きなさいで終始してしまいます。あとはシステム起因などどうしようもないことも多いです。
実際にAWAKE24 3rdで起こったこととしては、AMOKAの最後の曲の時にインスタンスがバグって7割のユーザーが落ち、AMOKAのふたりも当然落ちて、虚空に音楽だけが流れてました。マジで焦りましたが、次のパートの頭にAMOKAも合流してもらい、当該の曲を演奏してもらい配信にも載せるという措置を取りました。筆者のわがままでしたが、対応してくれたAMOKAありがとうございました……!
このように、イレギュラーが起こった時、スタッフの配置組み換え、「10分対応して直らなかったらこのまま進める」とか、「このまま15分押しで進行するけど出演者さんは気にせず本来予定していたパフォーマンスをやってください」といった現場判断を下すのがディレクターです。それが正しいかどうかではなく判断をすることで周囲を安心させ、迷う隙を与えないということです。
"会議は踊る、されど進まず"という言葉がありますが、現場ではそんなこと許されません。気合いでいきましょう。そうすれば押したりトラブってもポジティブな空気のまま進行し、最後には大団円が待っていることでしょう。
マニュアルはここまでです!
筆者が5年間で蓄積したものはほとんど出力できた気がしています。
あとは経験あるのみ、音楽イベントやってみましょう!
⭐️Summary⭐️
想定通りの進行を目指そう
トラブったらひとまずディレクターに報告しよう
ディレクター、がんばれ!
大団円を迎えよう
AWAKE24 3rdの裏側
ここまで偉そうに語ってきましたが、これまでの内容のほとんどが3rdで新しく試みた内容だったりします。筆者がイベントも行う会社に転職したため分かったことでもありますが、正直なところ現実もメタバースもイベント進行に必要なことはほとんど同じです。事前準備がすべてです。
とはいえ本番の魔物に翻弄されたのは1st~3rdに共通するもので、今回は流石に盤石だろうと思ったものの配信がプツッたり進行に誤算があったり、寝てなさすぎてディレクターが木偶の坊になったり、裏ではしっちゃかめっちゃかしておりました。
そんな時に助けてくれたのは、いつもシフトに入れていないはずだったり無理してでも二役を買ってくれたスタッフたちでした。
AWAKEというライブハウスは、VRChat上に生を受けて早くも5年が経ちました。その年月と共にした多くの現場からなのか、いったいどういう理由でかはわからないのですが、AWAKEのスタッフたちとは信頼関係を築けている自信が確かにあります。実際のところ筆者がいない現場も多く回してもらいました。
人手が必要なのであれば、人手を確保するのは代表者の仕事でもあり、報酬を払えないなら仕事ではなく一緒に遊ぼう、楽しもうと思ってもらえるイベントにするのも代表者の仕事です。
AWAKE24という24時間を超える本気のお遊びの裏には、過酷にも関わらずおうやろうぜと言ってくれる多くのスタッフの血と汗と(あくびの)涙が流れています。彼らがそれらを流すのを楽しめるようにする責任が筆者にはありました。1回目から3回目まで、いつも最後まで自問するのはその責任を果たせたかどうかです。
今後もその問いに自信を持って答えることは難しいと思いますが、これを読んでくれた皆さんも共に遊ぶ仲間たちと楽しめるイベントを作れることを願っております。
末筆ながら、この度もAWAKE24に出演してくれた皆様、メディア関係者の皆様、コラボしてくれたがそさん、ロゴデザインのAMOKAのあいぽさん、ワールド制作のコクリコちゃん、照明その他ギミックのたいらしゃん、香盤組んでくれたnusaちゃん、長時間の稼働を物ともせず走り抜けた全てのスタッフ、そして現地及び配信に遊びに来てくれたお客さまに感謝いたします。
YAMADA