残る作曲家、消える作曲家
時代の最先端にいて、音楽に変革をもたらした作曲家は何人かいるが、そうした作曲家は長く残らないことが多い。後世の人に評価されるのは、バッハやヘンデルのような作曲家だ。同時代に存在する多様な音楽を吸収し、それを組み合わせ、加工することで独自の音楽に仕立てる。そういう人が、後に音楽家として尊敬を集めることになる(Howard Goodallハワード・グッドール、夏目大訳)
バッハやヘンデルは、突出した個性だが、彼らが生きた時代様式の枠内でその個性を発揮した。決して、最先端にいたわけではなく、変革者でもなかった。紫式部とバッハの共通点は時代様式の集大成者であることである。
シェーンベルクの例を見てほしい。12音技法は音の仕組みそのものにメスを入れる試みを行った。しかしながら、「浄められた夜」など初期の作品は今日も演奏されるものの、12音技法の楽曲は聴く機会が少ない。
大衆は改革にはついてこないものなのである。