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流枝の松

造園術の流枝(なげし)の松も同じことで、松の枝ぶりで水への接近をほのめかしながらも、岸の一部を隠して、水際線のあからさまな露呈を嫌う。こうすると、水面にぼうっとした鈍い影が差して、それがまた水辺になくてはならない余情を生むのである。

中村良夫『風景学入門』

このような美文でしか伝えられない事柄がある。

流枝の松とは、水面に平行にのびている松のことらしい。

このような用語があること、造園術の奥の深さ、繊細さに驚嘆する。

自然を矯(た)めて美をつくる技術には型があり、昔から伝たわってきたものがあるようだ。

「流枝の松」という言葉に触れたのは、その一端を垣間見たに過ぎない。

それがねらう効果というのも、まことに玄妙なものがある。


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