愚者のボランティア 一二

 炊き出しボランティアが終わり、事務所を後にした。まるで山崎パン工場の弁当ラインのような、難しい職場だった。自ら率先して働かないと何もさせて貰えない、またはいきなり命令が飛んできたりする、ピリピリとした緊張感のある職場のように思えた。それでへとへとに、泥のように疲れた。愚者は疲れのため死人のようになって、電車で帰路を進んだ。
 あまりボランティアの人たちと打ち解ける事が出来なかった。作業の失敗もいくつか有った。あまりお役にも立てなかった。なんか迷惑をかけただけで終わってしまったような、情けない印象である。
 愚者一人だけ浮いてしまっているようにも思えていた。愚者がいる事で場の会話も弾まなくなってしまうような、そんな異物感が感じられた。
 愚者の態度が偉そうに感じられ、それでベテランの人たちの反感を買ったのかもしれない。それは愚者の場合、日雇い仕事でよくある事だった。ベテランの人に対して警戒心むき出しで無愛想なものだから、やはりうまくはやっていけない。その自らのキャラクターを久しぶりに思い出した。
 いつもは在宅勤務で家で一人で作業しているため、こういう経験からは長らく遠ざかっていた。最後はイジメ抜かれ、すっかり萎縮し切ってしまった愚者を、みんな気の毒そうに見ていた。まさに社会不適合者の典型のように見えたのかもしれない。
 そして夜、体調が悪くなり苦しんだ。寝不足状態で過酷なボランティアをこなし、その後、小作駅に帰ってきてから、セブンイレブンでジャックダニエルを買って、飲んだ。
 家に帰って、ゆで卵とパスタを食って、再びジャックダニエルを飲み、ユーチューブを観て、風呂に入って寝た。すると苦しくなって寝てられず、時計を見ると、まだ深夜一時半だった。

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