真剣の扱い方とは? 日本刀の正しい斬り方と、現代の剣士の稽古について
こんちには、山田大生(やまだたいき)です。第3回目のnoteでは真剣の使い方をご紹介したいと思います。
皆さんは、真剣を手に持ったことはありますか?
さらに、真剣を振って物を斬ったことはありますか?
ほとんどの日本人は、日本刀を振ったことがない
きっとほとんどの人はNOですよね。展示などで刀を見たことはあっても、手に取ったことがある方はなかなかいません。歴史の教科書では何度も見たはずなのに、現代では手にすることがない刀。抜刀道をやっている身としては少し寂しくもあったりします。
これが僕の刀。上が居合刀で、下が真剣です。ほぼ同じ長さですが、真剣は約1.5キロ、居合刀は約1.1キロと、真剣の方が重たいです。
この真剣は、刀剣乱舞ファンの方にはお馴染みだと思いますが「打刀(うちがたな)」です。打刀は、太刀よりやや短く反りが浅めです。室町時代後期から、武士に普及したとされています。
打刀は鞘に収めたとき、刃を上に向けた状態で腰に差すのが特徴。帯刀時は特に見分けやすいですね。
刀剣乱舞の場合、 綺伝の主役の歌仙兼定を始めとして、山姥切国広、蜂須賀虎徹、陸奥守吉行 、加州清光といった、ゲーム開始時に選べるキャラクターは皆打刀。それだけスタンダードな刀だといえます。威力と機動力のバランスが取れており、扱いやすいです(とはいえ重いですが)。
日本刀の切れ味はというと、思いっきり振ると人の骨は余裕で切断できてしまいます。かつて納刀をミスし、手のひらをざっくり切ってしまったことがあるのですが、大量に血が出て焦りました。ちなみに、切れ味が良すぎて切断面が綺麗なため、傷の深さの割に治りは早かったです。マンガの主人公達の驚異的な回復力もあながち嘘ではないのかも知れません。
血が付くと刃はすぐに錆びてしまうため、何人も斬り続けるのは現実的ではないように感じます。乱世の武士はどのように刀を維持していたのか、機会があったら聞いてみたいですね。
真剣の稽古って何するの?
稽古では、居合刀(模造刀)を用いることもあります。その際に僕が心がけているのは、真剣と居合刀で意識を分けないこと。居合刀だからといって、居合刀用の振り方をするのは無意味だと思うので、常に真剣を持つ心構えで稽古をしています。
それは、舞台に出演しているときも同じ。これまでのnoteで書いたように、客席からの見栄えを最優先していますが、できる限り真剣を扱うときの動きを心がけています
真剣の稽古で行うのは、主に藁斬りです。
刀を扱うために、腕の力よりも重要なこと
「腕の力が要りそう」とよく言われますが、
実は違います。大事なのは腕ではなく、体の動きです。体幹で斬るようなイメージですね。腕は体の動きに合わせて振り下ろしているだけです。腕に変な力を加えてしまうと、刀の軌道がズレて、スパッと斬れないんです。
スラムダンクの桜木花道の「左手は添えるだけ」にもちょっと似ているかも知れません。「腕は体に合わせるだけ」なんです。足を肩幅くらいに広げ、右半身を重心にして全身で斬ることを心がけています。
ここで僕の失敗例を見てください。
斬り残しが生じてしまっています。このように藁がうまく斬れないときに何が起きているのでしょうか。
斬り損じが起こるとき、たいていは引き斬りをしてしまっています。日本刀は斬れ味がいいので、刃を対象(ここでは藁)に当てて、振り下ろすと、それだけで切断できるようになっています。そのため、大切なのは刃にまっすぐ力を込めること。
日本刀を包丁のように扱うと斬れない
対して引き斬りとは、対象を、刃をスライドさせて斬ろうとすることです。包丁やのこぎりは引いたり押したりして切りますよね。そのイメージで、日本刀も扱ってしまうんです。手と刃の力のみで斬ろうとしてしまうんですね。
失敗例では、肩が上がり、腰が引けていることから、刀が立ってしまっています。刃筋(刃の軌道)が悪い上に、手首を支点に刀だけを振り、刀だけで斬ろうとしてしまっていることが伝わるかと思います。
刃は鋭いので、引き斬りをしても全く斬れないわけではありませんが、失敗画像では藁が一枚残ってしまっています。これは実践でいうと、敵の皮が残ってしまっていて、とどめを刺すことができない状況。戦国時代ならば命取りですよね。
対してスパッと切ることができると、腕と刀が一直線になり、腕の付け根が支点になるんです。
切っ先(日本刀の先端の部分)から弧を描くように切ることで、大きな力が生まれ、また、対象が逃げません。(どちらかというと引き寄せる)そのため、刀の力が全て対象を斬ることに注がれます。
鬼滅の刃の炭治郎の動きは、正しく美しい斬り方
普段感覚で行っているため、めちゃくちゃ説明が難しいんですが、この軌道が表現されている一例が、鬼滅の刃の炭治郎です。水の呼吸を使う際は、水が炭治郎を取り囲むように円を描いていますよね。まさにあのイメージです。
ではなぜ引いて切ってはだめなのでしょうか。それは力を逃してしまっているからです。刃を引いてしまうことは、対象を後ろに押し倒す動作でもあります。そのため、対象が自分から遠くなってしまい、力を100%対象に注ぐことができなくなり、切り逃しが生じるのです。
対象が逃げるよりも早いスピードで刀を動かせれば、引き切りで切ることもできますが、それよりは切り方を変えるほうが合理的だといえます。
ここでわかることは、動いているものを切るのは相当難しいということ。目隠しをせずにスイカ割りをするのは簡単ですよね。それは、スイカが動かないからです。
後ろに倒れていく藁を切るのですら集中力がいるのに、実戦の緊迫した場で、動く敵と斬り合うのはどんなに大変だったでしょうか。戦闘の場に立ってみたいなと思うことはありますが、手元が震えて刀を握るだけでも大変だったかも知れないですね。
現代版剣士のお仕事、藁の設営
ちなみに、練習で使う巻き藁は、自分たちで設営しています。
まず畳屋さんで藁をいただき、くるくると巻いていきます。そして巻いた藁を水に2〜3日漬け込みます。なぜ水を染み込ませるかというと、感触を人の肉と骨に近づけているのです。これも実戦を意識した大事な工程です。
あまり水を染み込ませてしまうと柔らかくなりすぎるので、藁加減のチェックは重要。見た目で違いはわからないかと思いますが、何度も設営しているため、藁の状態が見極められるようになりましたが、真剣を扱うとき以外で役に立ったことは特にありません(笑)。
真剣を実際に試してみてください
今回は、真剣の使い方をご紹介しましたが、普段感覚的に行っている動作を言語化するのはとても難しかったです。ここまで読んでくださりありがとうございます。
伝えきれない部分も多かったので、もし興味を持った方は、真剣による藁切り体験にいらしてください。ストレス解消にもおすすめです。舞台がない期間は僕が教えていることもあります。
まだまだ刀について伝えたいことはありますが、そろそろ舞台『刀剣乱舞』綺伝いくさ世の徒花 福岡公演が始まりますので、今日はこのあたりで。お越しくださる皆様、会場にてお待ちしています。時間遡行軍の動きにもぜひご注目ください!
TikTok:@taiki_yamada
Instagram:@yamad_taiki
Twitter:@taiki_yam
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?