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前鬼山峰入修行(二日目朝)
翌朝5時、小仲坊(おなかぼう)にてパチリと目が覚めた。
他の者を起こさぬよう静かに起き上がり、障子をあけて縁側に出る。
小仲坊はわたしたちが休ませてもらうL字型の三間を囲うように東側と南側がぐるりと縁側になっている。
わたしを含めた女性の行者はいつもその三間の南の奥側で休む。
そろりと縁側に出て静かに歩きながら、はじめてここに来た2年前を思い出していた。
あの時は人数がもっと多く、行者以外の参加者も半数ほどいた。
一番下っ端のわたしは師僧の侍者(じしゃ:お世話係)をしながら彼らにも常に気をかけねばならないのだが、わたしもあの時は初めての修行。全く勝手がわからない中必死で周りの様子を見ながら動きまわっていた。
ずっと緊張していたせいか、あの朝は強烈な頭痛で四時前に目が覚め、一人縁側で首や肩をほぐして明けゆく空を眺めていた。
そんなことを思い出しながら山門の階段に座り、遠く山の下に見える雲海を眺めていた。
今日はいい天気。やっと裏行場に行ける。
緊張と期待の入り混じった高揚感を山を見ながら落ち着けていた。
6時の起床後、行者堂(小仲坊のお堂)で勤行。
部屋の掃除、朝食。
時間が経つほどに晴れゆく空。
その空とともに皆の気持ちも高まってゆくのを感じる。
今年も皆無事に、帰ってこられますように。
↑小仲坊には電気が来ていない。
今は発電機があるが、昔の名残のランプが今もかかっている。
衣帯(えたい)に着替えたら、
いざ、出立。
宿出(しゅくで)の法螺を高らかと立てながら、先達を先頭にわたしたちはお山へ歩を踏み出した。
空はすっかり青く晴れわたっていた。
つづく
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