【薬剤師】少子高齢化と2025年問題について
こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。
超高齢社会となった日本では、社会の構造や体制に大きな影響が出てきています。とくに医療や介護の分野においては、社会保障費の急増が懸念されています。団塊の世代が後期高齢者になることによって生じる「2025年問題」が話題にあがることも多くなりました。
今回は、少子高齢化と2025年問題についてまとめたいと思います。
1.2025年問題とは?
2025年問題とは、戦後の第一次ベビーブーム(1947~1949年)期に生まれた、いわゆる「団塊の世代」である約800万人が後期高齢者(75歳以上)になることによって起こり得る様々な問題の総称です。
厚生労働省の資料によると、2025年には後期高齢者の人口が約2,179万人にまで膨れ上がると推計されており、これは国民のおよそ5.5人に1人にあたります。
さらに世帯主が65歳以上である高齢者のみの世帯数は約1,346万世帯に達し、そのうち高齢者の単身世帯数は約645万世帯となる見込みです。
認知症の高齢者数も、約675万人に増加すると予想されています(発症率が一定で上がらないことを想定した場合)。急激な高齢化によって社会保障費は大きく増加する一方で、社会保障の担い手である労働人口は減っていきます。
今後は現役世代が支える社会保障のバランスが崩れ、医療や介護において大きな影響があらわれることが懸念されるのです。
2.少子高齢化とは?
日本において、特に平成以降、バブル崩壊による不景気の影響もあり、合計特殊出生率は減少傾向にあり、2005年には最低となる1.26を記録し、2000年代後半から人口が減少し始めています。
少子高齢化には、次のような原因が考えられます。
都市化による物価の高騰
核家族化による育児面の負担の増加
価値観の多様化による未婚化
女性の社会進出による晩婚化、晩産化
医療技術の進歩や生活環境、栄養状態の改善による平均寿命の延伸
3.2025年問題が医療・介護分野に与える影響
2025年問題は、少子高齢化により高齢者が増え、逆にそれを支える現役世代は減っていくため、次のような社会的影響を及ぼすと予想されます。
労働力が不足することで国力が低下する
社会保障などに対する国民負担が増える
医療・福祉の体制の維持が困難になる
特に医療と介護分野において、次のような社会的影響を及ぼすと予想されます。
(1)医療分野
高齢者は免疫力の低下などによって若い人より病気になりやすく、通院の頻度や処方薬が増える傾向にあります。医療費は一部が国や自治体の財源でまかなわれており、高齢者はその割合が高いため、高齢化に伴い国の財源に占める医療費の割合も大きくなってしまいます。
財務省は、2020年度に予算ベースで約46.8兆円だった医療費の保険給付金額が2025年には約54.9兆円に達すると推計しており、医療費の増大は深刻な課題です。
加えて、重症の患者さまの受け入れや精密検査を行うためには、一定の規模を有する大病院が必要です。一方、資金繰りが悪化している病院も増えており、病院数の減少が懸念されています。
同時に、地方都市を中心に医師や看護師などの不足も問題となっており、全国で平等に良質な医療を受けられなくなる可能性も指摘されています。
(2)介護分野
2025年問題は医療分野のみならず、介護分野にも大きな影響をもたらします。これまで国では、支援や介護を必要とする高齢者などに対して、生活のサポートや介助、身体能力の維持などを目的とするサービスを社会保険制度で提供してきました。
こうした介護サービスを受けるための費用は利用者が1割を負担し、残り9割は公費と保険料で半分ずつの負担です。そのため、高齢化で介護サービスの利用者が増えることにより、支出の抑制と国民医療費と同様に財源の確保が課題となっています。
介護を担う人材の確保も重要な課題の一つです。厚生労働省によると2025年には約243万人の介護職員が必要になると予想されていますが、介護職員数は2019年時点で約211万人に留まっています。
また、年間死亡者は2025年には160万人に達すると予想され、病院のみでの受け入れは困難です。そうした理由から、在宅で看取りができる体制の整備も求められています。
(3)社会保障費
厚生労働省によると、2020年度の国民一人当たりの医療費は33.5万円と発表されています。75歳以上の後期高齢者で見ると、一人あたり92万円となっており、75歳未満の21.9万円と比較すると約4倍です。
医療費や介護費に大きな影響を与える後期高齢者の数が増加し続ける一方で、社会保険制度の主たる支え手となる20~64歳の人口は、今後中長期的に減少が続く見込みです。
さらに、高齢者の増加により、現在の日本の年金システムである「賦課(ふか)方式」が抱える問題も指摘されています。賦課方式とは、高齢者に年金を給付するために必要な原資を、現役世代の給与から引かれる保険料でまかなう仕組みです。
年金を受給する高齢者が増え続ける一方で生産年齢人口の減少が続くと、社会保障制度が貧弱なものになってしまうでしょう。
4.2025年問題への政府の対策
2025年問題に対して、政府は次のような対策を行なっています。
(1)地域包括ケアシステムの構築
2025年問題への対策の一つとして、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。これは、可能な限り人生の最期まで住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることのできる体制のことです。
なるべく在宅での診療や介護ができるように、地域全体が連携して医療や介護サービスを提供する仕組みを整えます。これには、病院や介護事業者の負担を軽減しつつ、医療費を抑制する狙いもあります。
また、地域包括ケアシステムでは「予防」も重要です。地域で協力しながら日常的に高齢者の状態を確認できる環境を作ることができれば、病気が重症化する前に適切な医療を提供できます。地域連携薬局やかかりつけ薬剤師なども、薬剤師に大きな役割が期待されている分野です。
(2)医療・介護人材の確保
介護業界における人材不足を解消するために、政府も様々な取り組みを進めています。たとえば、2019年10月より、技能・経験のある介護職員の処遇改善を目的に、介護職員等特定処遇改善加算が導入されています。
同加算では、内閣府が2017年12月に閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」で提示された、「勤続年数 10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」という方針に基づいて制度が設計されています。
(3)公費負担の再検討
政府は「全世代型社会保障検討会議」を設置して、医療、介護、年金、労働など各分野における改革のための検討を行っています。2021年12月には、一定以上の収入(単身で年収200万円以上、夫婦で年収計320万円以上の世帯)がある後期高齢者の医療費について、2022年10月から窓口負担を1割から2割に引き上げる方針が決定されました。
また、薬剤給付の適正化の観点から、湿布薬やビタミン剤、うがい薬、保湿剤などに対する保険給付についても議論が交わされるなど、公費負担の再検討が行われています。
5.薬剤師の働き方への影響
ここまで、2025年問題についてご説明しました。それでは、薬剤師の働き方にはどのような影響があるのでしょうか。
(1)地域包括ケアシステムにおける薬剤師の立ち位置
高齢者が住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるように、地域包括ケアシステムの構築が進められています。薬局やドラッグストアで働く薬剤師には地域医療の窓口として薬や健康についての相談に対応することや在宅医療を支援する役割が、病院薬剤師にはチーム医療や薬局薬剤師との連携(薬薬連携)における役割が期待されています。
また、病状に合わせて入退院を繰り返す患者さまの増加が予想されるため、職種の垣根を超えて活躍することが求められています。
(2)薬局の役割の変化
厚生労働省の示す『患者のための薬局ビジョン』によると、2025年までにすべての薬局において、かかりつけ薬局としての機能を発揮することが求められています。
服薬情報の一元的・継続的把握や24時間対応・在宅対応、医療機関などとの連携はもちろんのこと、患者さまのニーズに応じて健康サポート機能や高度薬学管理機能を強化することも期待されています。
(3)予防医療・セルフメディケーション
近年では健康意識の高まりから、疾病の予防やセルフメディケーションに対する考え方が国民の間に浸透しつつあります。
薬剤師には、地域における健康相談の窓口や薬と健康の良きアドバイザーとしての役割を果たすことが期待されています。健康食品やスイッチOTC医薬品の販売、生活習慣に対するアドバイスなど、処方箋調剤以外でも力を発揮することになるでしょう。
(4)在宅医療・在宅介護の支援
薬剤師も地域包括ケアシステムを担う一員として活躍しています。在宅患者さまや介護施設などの施設入所者の薬剤管理はもちろんのこと、健康状態の管理や多職種への情報提供、医療材料の供給など、薬剤師は様々な役割を担っています。
また、ICT(情報通信技術)の発達により、医療連携や患者さまに関する情報の共有など、多職種との連携と相互理解も進むようになりました。
(5)医療費削減への貢献
医療費削減のために助言や提案を行い、後発医薬品の使用を促すことが求められます。
さらに、服薬指導や薬学的管理により、処方カスケードや残薬問題を解消することも必要とされるでしょう。
6.まとめ
今回は、2025年問題による医療や介護への影響、政府の対策、薬剤師の働き方への影響について、詳しくご説明しました。
2025年が間近に迫るなかで、引き続き対策が求められています。限られた労働力で高齢者をサポートしていくためには、地域の連携によって医療サービスや介護サービスを提供していかなくてはなりません。
薬剤師においても、セルフメディケーションや在宅医療など、これまで以上に多岐にわたる活躍が期待されています。
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