【薬剤師】在宅医療について
こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。
年々高齢化が進む日本では、在宅医療のニーズが高まっています。これまでは医師や看護師が中心となって支えてきた在宅医療も、医薬品の服薬管理を行ううえで薬剤師の存在が欠かせないものとなっています。
今回は、在宅医療についてまとめたいと思います。
1.在宅医療とは?
今までは入院医療や通院医療の2通りが主流でしたが、「在宅医療」の登場で、患者自身とその家族の意思を反映されることが可能になりました。また、自宅で医療サービスを受けたい、自宅で最期を迎えたいと思う人も少なくありません。
在宅医療とは、病気や加齢による身体の衰えなどによって通院が困難なとき、自宅や老人福祉施設などの「生活の場所」に医師や看護師などが訪問して、診察や治療、健康管理などを行うことを言います。入院医療、通院医療に次ぐ第三の医療として注目されています。病院に行かなくても病院と同じように医療を受けられるので、寝たきりの高齢者や身体の不自由な方、認知症などを患っている方にとって、非常に便利なシステムです。
(1)在宅医療の対象
足腰が不自由となり、一人で外出や通院が難しくなった
病院から退院したが、自宅での療養が必要となった
認知症の進行により、自宅でより手厚い看護、介護が必要
がんにより痛みや体力低下によって、通院が難しい
自宅での看取りを希望している
人工呼吸や経管栄養などの医療処置が必要
心臓や肺の病気が原因で、少しの動作でも息切れなどあり、通院が難しくなった障がいがあり、医療的なケアが必要なお子さん(医療的ケア児)
在宅で寝たきりとなり、入れ歯が合わなくなった(訪問歯科診療)
(2)在宅医療推進の背景と現状
最近になって注目されるようになった在宅医療ですが、最初に居宅が医療提供の場として制度上認められたのは1992年。在宅医療がここまで普及してきたのは、高齢化など人口構造の変化に伴う疾病の多様化、慢性疾患の増加、長期間の医療的ケアを必要とする療養患者の増加などがおもな理由です。
また、「身体が不自由な方も健康な方と同じように平等に生活できる社会であるべき」という思想への変化や、病院から出て自宅で過ごしたいと願う方が増え、住み慣れた場所に医療の基盤を移すケースが増えてきたことも在宅医療推進の背景にあります。
その後、医療制度の積み重ねを経て2006年に在宅療養支援診療所が本格的に制度化され、24時間対応する在宅医療が推進されはじめました。また、今までの医療福祉のベースであった医療や介護に、予防、住まい、生活支援などの要素が加わり、地域全体として相互支援を行う「地域包括ケア」という概念が生まれ、在宅医療はその根幹をなすものとして重要視されています。
現代の在宅医療は、医師の定期的な訪問と24時間対応の2つが主として構成されています。自宅で最期を迎えたいというニーズの高まりもあり、24時間対応は在宅医療において非常に重要度を増しています。さらに2017年からは「医療介護連携推進事業」が全国の市町村で行われるなど、自治体と共に取り組むべき事業として推進されています。
2.在宅医療のメリット、デメリット
在宅医療のメリット、デメリットは以下の通りです。
<メリット>
通院に対する負担を軽減させることができる
住み慣れた環境で過ごすことができる
いつでも家族や友人と過ごすことができる
生活の質(QOL)の向上につながる
家族の目が届く場所で治療を受けることができる
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や入院より費用がかからない
時間の制約が少ない
医師が複数の職種や医療機関と連携し、役割分担しながら診療できる
24時間365日体制の対応を受けることができる
<デメリット>
高度な検査や治療を受けることができない
家族の介護負担が増える
医師が居宅に訪問する時間が必要であるため、急変時に適切な対応が難しい
多職種の連携が確立されていない
3.在宅医療における薬剤師の仕事内容と役割
在宅医療が普及した現代においては在宅薬剤師という新しい職種も生まれ、薬剤師が活躍する場は薬局の中から外へと広がっています。
(1)在宅薬剤師の仕事内容
具体的な仕事内容には以下のようなものがあります。
処方箋による調剤
患者さまの状態に応じた調剤を行う(一包化、粉砕調剤、麻薬調剤など)
患者さまの自宅への医薬品、衛生材料の供給
服薬指導、服薬支援
服薬状況、管理状況のモニタリング
副作用等の体調管理チェック
在宅担当医への適切な助言、処方提案
残薬管理、麻薬の管理、廃棄
ケアマネージャーなど医療福祉関係者との連携
医療福祉関係者への薬剤についての教育
(2)在宅薬剤師の役割
次に、薬剤師の担うべき役割について解説します。
患者の居宅や高齢者施設に薬剤を持参して服薬管理を行う
一般の患者さまであれば調剤薬局に処方箋を持参し、薬剤師はその場で調剤および服薬指導を行います。一方で、在宅薬剤師の場合は処方箋の内容を確認して調剤を行い、患者さまの入居宅に薬剤を持参し、薬剤の提供および服薬指導をします。
服薬管理服薬管理および健康相談に対応する
服薬管理や健康相談にあたることもあります。とくに薬剤の管理は、高齢者や認知機能が低下した患者にとって非常に困難なもの。誤飲や過量服用などのトラブルにもつながりかねません。在宅薬剤師は、薬剤の保管状況を整えるため、必要に応じて服薬カレンダーなどにセットすることもあるでしょう。
また、複数の病院で薬剤をもらっている場合には、飲み合わせのチェック、重複薬剤のチェックなども行います。飲み込みが難しくなってきた場合には粉砕調剤に対応したり、飲み間違い防止のために1回分の飲み薬をまとめたりなど、生活面からも患者さまの服薬管理を行います。
ケアマネージャーなどほかの医療従事者、医療福祉関係者との連携
薬剤師は服薬に関することだけではなく、患者さまの健康状態の管理にも関わります。たとえば、服薬中の薬剤から予見される副作用のモニタリングを実施し、副作用と思われる場合には医師に報告および処方変更の提案を行います。また、介護に携わっているケアマネージャーなどに、患者さまが使っている薬剤の注意事項などを教育、助言をすることも在宅薬剤師の仕事です。
4.在宅医療を支えるべく薬剤師に求められるスキルとは
薬剤師として社会に貢献したい、もっと医療に深く携わりたいという方にとって、在宅医療は大変やりがいのある職場です。 今後ますますニーズが高まる在宅医療。それを支える薬剤師になるためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。
(1)コミュニケーションスキル
在宅薬剤師は薬局内で働く一般薬剤師の場合と比べ、患者さまと関わる時間が大幅に増えます。ほかの職種と比べても関わり方がより密になり、患者さま本人だけでなく、患者さまの家族との円滑なコミュニケーションをとることも求められます。
また、訪問医師やケアマネージャーなどの医療福祉関係者と連携して、患者さま一人ひとりに合わせた対応をしなくてはなりません。そのため、薬剤師という職能に加えて、コミュニケーション能力の高さが必要となってきます。
(2)「在宅療養支援認定薬剤師」「緩和薬物療法認定薬剤師」などの資格取得
在宅医療を行ううえでの必須資格ではありませんが、「在宅療養支援認定薬剤師」「緩和薬物療法認定薬剤師」という認定資格の取得を目指すこともひとつの方法としてあげられます。在宅医療を実施するにあたり、これらの資格を持っていると患者さま本人や家族、また医師やそのほかの介護関係者などからの信頼にもつながり、さらに品質の高い医療を提供できるようになるでしょう。
(3)多剤併用や副作用に関する薬剤師としての専門性とスキルの高さ
調剤薬局で働いている場合には、外来で訪れる患者さまの対応に追われることも多いでしょう。しかし、在宅医療の場合は一人ひとりの患者さまと積極的に関わり、服薬管理や服薬指導を行うことがとても大切です。
体調変化や嚥下状態の変化、生活スタイル、性格や家庭環境なども理解したうえで、よりよい薬物療法を模索して提案できる能力が求められます。
5.まとめ
「自分が慣れ親しんだ場所でずっと暮らしたい」「自宅で最期を迎えたい」という思いをもつ患者さまが増え、在宅医療はますます必要性が高まっています。
今後も増え続ける在宅医療へのニーズに応えていくためには、医師や看護師による医療やケアだけではなく、薬物療法の専門家である薬剤師の存在が欠かせません。
今後、より高齢化が進み在宅医療の存在価値は高まっていくことでしょう。今一度薬剤師としての存在価値を見つめ直し、在宅医療に携わる道を検討してみてはいかがでしょうか。
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