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【薬剤師】バイオ後続品(バイオシミラー)、オーソライズドジェネリック(AG)について
こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。
後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、先発医薬品と治療学的に同等でありながら、一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから、薬価が低く設定されています。増え続ける医療費を節減するため、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用の促進は薬剤師に期待される役割の1つです。そうした中で、バイオ後続品(バイオシミラー)やオーソライズドジェネリック(AG)が注目を集めています。
なお、後発医薬品(ジェネリック医薬品)については、詳しくは以下の記事をご参照ください。
今回は、バイオ後続品(バイオシミラー)、オーソライズドジェネリック(AG)についてについてまとめたいと思います。
1.バイオ後続品(バイオシミラー)
(1)バイオ医薬品とは
バイオ医薬品は遺伝子組換えや細胞培養などバイオテクノロジーの技術を応用して製造された医薬品で、ホルモン、酵素、抗体などのタンパク質を有効成分としています。
従来の医薬品では治療の難しかった疾患への効果も期待されており、そのほとんどが注射剤です。バイオ医薬品はすべて医療用医薬品で、OTC医薬品はありません。そして、従来の医薬品に対する後発医薬品(ジェネリック医薬品)と同じように、バイオ医薬品にも特許期間が切れた後に製造・販売される「バイオシミラー(バイオ後続品)」があります。
バイオ医薬品に期待できるのが、体内に不足した生理活性タンパク質を補うことで病気を治療する働きです。たとえば、生理活性タンパク質の一つであるインスリンの不足は糖尿病の原因になります。バイオ医薬品で足りないインスリンを補うことで、糖尿病治療に役立てるのです。
また、体内では病原菌やウイルスなど外来性の異物が侵入すると、これに対して特異的に反応・結合する「抗体」が発生します。抗体は、病原菌やウイルスなどを攻撃する免疫のもととなる存在です。バイオ医薬品には抗体を有効成分とする「抗体医薬品」があります。たとえばがんの治療においては、抗がん剤でがん細胞を攻撃する化学療法が一般的ですが、正常な細胞も攻撃してしまい副作用も起こりやすい状況にありました。一方で抗体を有効成分とするバイオ医薬品(抗体医薬品)では、がん細胞の抗原に結合するためがん細胞を狙って攻撃でき、副作用を少なくすることが可能です。そのほか、関節リウマチやクローン病、腎性貧血など様々な疾患への治療に用いられています。
バイオ医薬品は、標的とする分子への特異性の高さや体内でアミノ酸として代謝される性質をもつため、一般的な医薬品と比較すると副作用が少ないとされていますが、全くないわけではありません。
薬の効きすぎや有効成分が複数の作用をもつ場合、薬が作用する分子に複数の生理作用がある場合などに副作用が出たとの報告があります。また、体内で薬が受けつけられずアレルギー反応を起こす場合もあるため注意が必要です。
(2)バイオ後続品(バイオシミラー)とは
バイオシミラーは「バイオ後続品」とも呼ばれ、バイオ医薬品の特許期間が切れた後に製造・販売されたものです。先行バイオ医薬品(先に製造販売され特許期間が切れたバイオ医薬品)と類似した品質や有効性、安全性をもっています。
後発医薬品(ジェネリック医薬品)は先発医薬品と有効成分の構造が変わらず、製造販売にあたっては生物学的同等性が証明できれば多くの場合で臨床試験を行う必要がありません。一方でバイオ後続品(バイオシミラー)は、臨床試験を含め後発医薬品(ジェネリック医薬品)よりも数多くの試験を行い、先行バイオ医薬品と同等の有効性や安全性があることを示さなければなりません。これはタンパク質の分子量の大きさや構造の複雑さなどが要因で、先行バイオ医薬品との同一性が示しにくいためです。この点が、バイオ後続品(バイオシミラー)と後発医薬品(ジェネリック医薬品)との大きな違いと言えるでしょう。
また、厚生労働省は後発医薬品(ジェネリック医薬品)の数量シェアについて、2023年までに全国で80%以上を目指すとしています。一方、バイオ後続品(バイオシミラー)の使用目標は検討状態が続いていることも相違点のひとつです。
後発医薬品(ジェネリック医薬品)と同様に、バイオ後続品(バイオシミラー)も先行バイオ医薬品と同等の効き目や安全性が期待でき、かつ安価に利用できる点がメリットです。患者にとっては治療の費用負担が軽減され、薬剤師にとっては治療の選択肢を増やすことができます。
医療費の負担は社会的な課題の一つであり、バイオ後続品(バイオシミラー)の活用が医療費の削減にも繋がります。ただし、先行バイオ医薬品が複数の効能や効果をもっていても、バイオ後続品(バイオシミラー)もまったく同じ効能や効果をもっているわけではない点、薬剤の使用量や患者の年齢などによってはバイオ後続品(バイオシミラー)で負担が軽減されないこともある点に注意してください。
2.オーソライズドジェネリック(AG)
(1)オーソライズドジェネリック(AG)とは
オーソライズドジェネリック(AG)とは「許諾を受けたジェネリック医薬品」という意味です。先発医薬品メーカーから許諾を得て後発品メーカーが製造した、先発医薬品と原薬、添加物や製造方法などが同一の医薬品のことをいいます。
開発にかかる費用や時間が削減できるため、後発医薬品(ジェネリック医薬品)と同じく薬剤費の負担を下げられるのが大きな特徴です。後発医薬品(ジェネリック医薬品)を不安視する患者も一定数いるなかで、先発医薬品メーカーとほとんど同等の条件で製造されるオーソライズドジェネリック(AG)が注目されはじめています。
(2)オーソライズドジェネリック(AG)が広がる背景
近年、国内の先発医薬品メーカーの間で、オーソライズドジェネリック(AG)を戦略的に活用する動きが活発になってきています。これまでは先発医薬品から後発医薬品(ジェネリック医薬品)への切り替えのスピードは緩やかで、特許期間満了後も長期収載品として販売を続けたほうが、経営上のメリットは大きいと考えられてきました。
しかし、国をあげた後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進により、後発医薬品(ジェネリック医薬品)への切り替えが加速しています。さらに、2014年から後発医薬品(ジェネリック医薬品)への置き換え率に着目して、切り替えが進まない長期収載品の価格を更に引き下げる「Z2ルール」が策定されるなど、度重なる薬価の引き下げにより従来のような収益を確保することが難しくなりました。
先発医薬品メーカーにとって、オーソライズドジェネリック(AG)を発売することは売り上げを減らすリスクもありますが、許諾したメーカーからのロイヤリティ収入などが見込めるため、一定の収益を確保する効果も期待されています。自社の市場を守りながらジェネリック医薬品の普及をすすめるため、オーソライズドジェネリック(AG)が広がりはじめているのです。
(3)後発医薬品(ジェネリック医薬品)やバイオ後続品(バイオシミラー)との違いは
後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、特許期間が切れた新薬と同じ有効成分を含む薬のことで、オーソライズドジェネリック(AG)は後発医薬品(ジェネリック医薬品)のなかの選択肢の1つです。
後発医薬品(ジェネリック医薬品)は先発医薬品と同じ有効成分ながら、原薬や添加物、製法などは異なる場合があり、それがオーソライズドジェネリック(AG)との相違点といえます。また、後発医薬品(ジェネリック医薬品)は先発医薬品の特許が切れてから製造が開始できますが、オーソライズドジェネリック(AG)は先発医薬品の特許が切れる前に発売することができます。
バイオ後続品(バイオシミラー)とは、特許が切れたバイオ医薬品の後発医薬品です。オーソライズドジェネリック(AG)はおもに薬品を化学反応させて作られていますが、バイオ医薬品やバイオ後続品(バイオシミラー)は遺伝子組換えや細胞培養などバイオテクノロジーの技術を応用して製造されます。
バイオ後続品(バイオシミラー)は、タンパク質の分子量の大きさや構造の複雑さなどが要因で先行バイオ医薬品との同一性が示しにくいため、オーソライズドジェネリック(AG)よりも多くの試験を行う必要があります。
(4)オーソライズドジェネリック(AG)のメリット
<医療従事者のメリット>
まずは先発医薬品と変わらない情報提供体制が維持される点があげられます。オーソライズドジェネリックには先発医薬品において長年にわたり集積された知見やデータが引き継がれているため、文献や臨床データなどの情報が多いことが特徴です。
また、近年では製薬会社の相次ぐGMP違反などを背景に、出荷調整が行われるケースも増えています。オーソライズドジェネリック(AG)では、これまで培った経験をもとに安定供給が確保されているため、供給不足を起こしにくい点もメリットの1つです。
<患者のメリット>
大きなメリットは、先発医薬品と同一という信頼感をもてる点です。オーソライズドジェネリック(AG)は通常、先発医薬品と同じ原薬・添加物・製造方法などが用いられるため、後発医薬品(ジェネリック医薬品)に不安を抱えている方でも安心して服用できます。PTP包装も先発医薬品のデザインが踏襲される場合が多く、切り替え後でも服薬しやすいこともポイントです。もちろん薬価はほかの後発医薬品(ジェネリック医薬品)と同様に安価となるため、経済的負担を減らす効果も期待されています。
(5)オーソライズドジェネリックのデメリット
<医療従事者のデメリット>
医薬品卸売業者から薬局への納入価格が比較的高額であり、薬価差益が確保しにくい点があげられます。薬価差益が減少すれば薬局全体の利益率も悪化してしまい、よりよい薬局づくりのための投資も難しくなるでしょう。最終的には患者に不利益が生じてしまう可能性も考えられます。
<患者のデメリット>
オーソライズドジェネリック(AG)は先発医薬品と同一の製造方法が用いられているため、製品によっては飲みやすさへの配慮など製剤的工夫に欠ける場合があります。また、すべての薬剤でオーソライズドジェネリック(AG)が発売されているわけではなく、まだまだ数が少ない点も知っておきましょう。
3.服薬指導でおさえておきたいポイント
政府によって後発医薬品(ジェネリック医薬品)のさらなる使用促進のためのロードマップが掲げられ、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がますます普及していくなかで、薬剤師に求められる役割も大きくなりつつあります。ここでは、バイオ後続品(バイオシミラー)やオーソライズドジェネリック(AG)を扱う薬剤師がおさえておきたいポイントについて解説していきます。
(1)薬価や製品の特徴など、正確な知識を身につける
一般的な後発医薬品(ジェネリック医薬品)とバイオ後続品(バイオシミラー)、オーソライズドジェネリック(AG)の違いについて理解するだけでなく、薬価や製品の特徴についての最新情報を集めておくことも重要です。
(2)情報提供のスキルを磨き、わかりやすい説明を心がける
一般的な後発医薬品(ジェネリック医薬品)とバイオ後続品(バイオシミラー)、オーソライズドジェネリック(AG)の違いを、患者が明確に理解することは困難です。個人の理解度に合わせながら、わかりやすい説明を心がけましょう。日ごろから患者との信頼関係を構築することも忘れてはなりません。
(3)患者の希望を考慮して、一人ひとりに合わせた提案を行う
患者のなかには、過去に後発医薬品(ジェネリック医薬品)に漠然とした不安を抱えている方も少なくありません。オーソライズドジェネリック(AG)だからと無理に勧めるのは避けるべきです。患者の話に耳を傾けて、丁寧な説明で不安を取り除くなどそれぞれに合わせた提案を行いましょう。
4.まとめ
バイオ後続品(バイオシミラー)、オーソライズドジェネリック(AG)の概要やメリット・デメリット、薬剤師がおさえておくべきポイントについて解説していきました。
バイオ医薬品は一般的な医薬品と比べて認知度が低く、患者はもちろん医療従事者の理解が不足しているケースもあるかもしれません。しかし、これまで治療の困難だった疾患への効果が期待されており、今後ますますニーズが高まると予測されます。医薬品の専門家として、バイオ後続品(バイオシミラー)やオーソライズドジェネリック(AG)について知識を身につけておくとよいでしょう。
また、先発医薬品を希望する患者に対して、オーソライズドジェネリック(AG)の活用も期待されています。オーソライズドジェネリック(AG)は今後もさらに増えていくことが予想されるため、今のうちに知識を身につけておきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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