失語症を何とかして克服したい(1)

何から話せばいいだろう?
私は50代の平凡なサラリーマン。自分としては真面目に働いてきたと思うし、このまま定年までこつこつ働いて行くんだろうなと思っていた。

ある休みの朝、好きなジョギングに走りに出かけた。ちょっと寒いかな?と感じる程度の11月下旬、何の予兆もないまま走り出した。

走るって楽しい。風を切って、いつもの風景が通り過ぎていくのを感じると、何とも言えない、ただただ気持ちが良いと感じるばかりだ。

でもこの日、「気持ちが良い」を感じる前に「あれ?」となった。歩道を走りたいのに、身体は右へ旋回するかのように車道に出てしまい、そのままどんどん制御不能になって反対車線で出てしまったと思う。あとは断片的にしか記憶がない。
自分の状態をしっかり認識したのは夕方だった。脳梗塞だった。

ただ、この話を続けるつもりで書き始めたのではない。
私は脳梗塞による失語症を発症したのだが、最初は宇宙語を話していると周りからは言われるほどだった。それが、リハビリの先生の指導のおかげで、今では日常会話程度なら問題ない。知らない人が見れば「普通の会話」に見えるレベルまで回復している。

ただ、頭の中では、失語症を発症する前とは全く違う世界が広がっている。
というか、「会話」など自然に出てくるものだった。
なのに今は、頭をフル回転して、聞き取り、理解し、文章を作り、発声した時点で初めて会話になる。それでも「言葉が出ない」こともたびたびだ。
でも、言葉を発するまでに、こんなにたくさんの工程を経ているのなら、「言葉が出ない」というのも分かってもらえるのではないだろうか。

私は医療従事者ではない。研究者でもない。はたまたエッセイのような文章を書いた経験もない。
でも、私が失語症リハビリをしながら「もやもや」するんだけどこれは何?ということを記録し、まとめたら何か見えてくるかも、と思って始めてみることとする。


いいなと思ったら応援しよう!