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【JapanOpen2024 Top16】スタンダード陰湿な根 デッキガイド/調整録 ~夢は大きく、根は深く。~

(ほぼ全文無料で読めます)


あらすじ

この物語は、リミテ専のJDが構築でオリジナルデッキで結果を残すという夢を追い続け、ついにそれを叶えるまでの道程を綴った調整録である。



山辺カフカの根源ルーテージ

何度も繰り返すようだが、私は構築が苦手だ。
それでも、今年に入って2度も構築フォーマット(エクスプローラー)での予選ウィークエンドDay1通過を経験し、少なからず苦手意識は薄れてきた。

だが、以前以下の記事でも述べた通り、元来私はオリジナルデッキもといデッキビルディングを好んでいる。
リミテッドに関しては勝ちに拘るスパイクよりの人種だが、構築に関しては自己実現を優先したいジョニーなのであろう。
記事にもしたアルケミーネクスト恐竜の出来にはそこそこ満足できたが、戦績は4-2でDay1敗退と、成功と呼ぶにはあと一歩足りない結果であった。

自分がなぜオリジナルデッキを好むか、その本質はかなり根の深いところにあり、筆者自身も言語化できていない。
最近、ゆうやん氏の以下の記事も拝読したが、筆者自身「オリジナルデッキを使った方が勝てるから」という点には全く当てはまらない。
一方で「オリジナルデッキを回す方がモチベーションが上がる」点には共感を覚えており、言語化への突破口にはなりそうである。

そして、言語化の難しい根本的な原因として、場数の少なさも挙げられよう。
まともに構築の大会に出場したことがあるのは予選ウィークエンド(と一応まじすと)くらいであり、しっかりとデッキを調整した経験の絶対数が他の多くの構築プレイヤーより少ないのだ。

さらに言えば、予選ウィークエンドの特性上、筆者には得意とする構築フォーマットがない。(強いて言うならアルケミーが好きではあるが)
悪い言い方をすれば予選ウィークエンド前に一夜漬け的に環境理解とデッキ選択を繰り返している訳である。
腰を据えて取り組んだ構築フォーマットが存在しないことは、筆者の嗜好の本質:「根」の理解に近づけない理由の一つにはなっていそうである。



山辺カフカの復活リバイバル

時は2024年8月、筆者山辺カフカは一時的に配信活動を復活した。
復活といえどわずか3週間の期間であるが、ちょうどブルームバロウという新セットのリリースやそれに伴うスタンダードのローテーションを迎える時期であり、絶好のタイミングであったと言える。

ゆるふわもふもふのお陰でMtGに復帰した人もいる偉大なるセット

アルケミー予選のときも書いたが、ローテーション直後のスタンダードもまたアルケミー同様に「最強デッキがわからない」フォーマットである。
過疎フォーマットではないため環境習熟までの速度は過疎に喘ぐアルケミー村の比ではないが、それでも習熟度が上がるまでに一定の時間は要するであろう。
界隈では環境初期はローテーション後に失うカードの少ないゴルガリミッドレンジボロス召集アゾリウスアーティファクトを軸にメタゲームが回ると言われていたが、筆者はそれを安易には信じたくなかった。

そんな折に大きなイベントが2つ開かれることとなった。
蒼紅杯(8/4)とジャパンオープン(8/10-11)である。

初の有料化も100名以上の参加者を集めるモンスター個人主催大会
年に一回のMTG日本公式主催のアリーナ大会

いずれも過去にも催されたことのある大イベントであるが、筆者は未だかつて参加したことがなかった。
その理由の一つはリミテ勢だから興味が薄かったこともあるが、ここ1年間については配信活動ができなくなった理由でもある昼間にMTGAで遊べない事情に拠るところの方が大きい。

環境初期ということでブルームバロウのリミテッド配信に注力したい気持ちも大きかったが、ちょうど配信可能期間と被るこの千載一遇のチャンスを逃したくないという思いの方が強かった。
果たして、筆者は迷わずに両トーナメントに参加登録した。



山辺カフカの陰湿インシデュアス

参加登録をしたは良いものの使うデッキのアイデアすらない状態で、気づけば蒼紅杯まであと4日と迫っていた。
(そもそも蒼紅杯の性質上ブルームバロウ実装~開催までの期間は短いので多くの人がそうかもしれないが)

時に、蒼紅杯前日には電脳灯争戦の前哨戦として、じょーくるほーぷす VS BLITZのチームブロール戦が開催された。
筆者はチームには所属していなかったものの、粋な計らいのお陰でじょーくるほーぷすの一員として前哨戦にゲスト参加させていただくこととなった。

畏れ多すぎるポスター。なお筆者はこの過大広告が噓のようにボロ負けした。(チームは勝利)

この大会のためにローテ後のブロールの調整もしている最中に、じょーくるほーぷすの大将でありリーダーを務める天紅龍より、新デッキについてのアイデアを頂戴する。

「陰湿な根楽しいぞ」

ここだけの話だが、天紅龍氏はその後陰湿な根デッキを見限り、残虐爪デッキでJapanOpenに参加

天紅龍氏のアドバイスの通り、新カードである《骨術師の達人》がとんでもないパワーカードであることが試運転だけでも理解できた。
アルケミーで陰湿な根デッキ(以下、単に根デッキとも呼ぶ)を成立させた根幹は歩くヨーグモスウィルこと《甲殻の這うもの》の存在であったが、《骨術師の達人》はほとんど《甲殻の這うもの》であったし、筆者の目には《隠された手、ケシス》にすら映った。

スタンダードでガチャガチャやっていいのか!

幸い、筆者はアルケミーエクスプローラーの根デッキを回したこともあったし、ヒストリックでケシスデッキを回したこともあった。

あのボロスエネルギーに支配された2024年7月のヒストリック予選ウィークエンドにすら直前までオリジナルのケシスデッキを持ち込むか悩むくらいにはガチャガチャするのが好きな人間なのである。

邪悪鳴らし…お前とケシスしたかったよ…(なお当然筆者は勝つためにボロスEを握った)

そんな人間にこの実質ケシスを得たスタンダード根デッキが刺さらない筈もなく、ここから根デッキ調整の道程が始まった。
6月頃よりお世話になっているShelterサーバにも根デッキで蒼紅杯に向けて調整していることを共有し、いくつかアイデアも頂きながらオリジナル根デッキを練りだした。
その過程では蒼紅杯優勝経験もあるNelson氏に必要カードの言語化をしていただき、脳内整理にも大変役立った。

最終的に出来上がった蒼紅杯用デッキリストがこちら。
骨術師以外にもいくつかブルームバロウの新カードを採用しており、その理由を簡単に述べる。

骨術師の達人

私にはケシスです

説明不要。このカードがなければこのデッキは成立しない。
タップ起動が悠長に見えるが、タイヴァーの常在型能力で即起動できる上にタイヴァーで釣れるのでタイヴァーの嫁。
デメリットのはずの給餌コストがたまに根を誘発させるのもすごい。
実質虫の上位互換であり名誉ケシス

鋭い目の管理者

もう軟泥と呼ばないで

アルケミー根デッキを触ったことがある人なら分かるが、あのデッキの強さを引き立てているのは《繁殖の原基》によるビートダウンプランが無視できないためである。
事実、3~4試合に1試合くらいは普通に原基で殴り勝つ。

陰湿な根オリカ。虫がスタンにあってももう要らないかもしれないが、こいつは多分要る。

ダブルシンボルは重いし墓地も肥やさないが、代わりにコンボにも絡みフィニッシュ力の高い原基がスタンに来た!
ボロス召集にチャンプブロックを許さないのも好印象。

茨越えの餌あさり

ドカ食い大好き!マナクリ

Nelson氏による言語化で、必要なカードは以下の条件を多く満たすものにしたかった。

①根がなくても仕事がある(除去を吸わせられる)
②根やキーパーツを探せる
③根と組み合わせると爆発力がある

ここで、マナクリというだけで除去を吸わせやすく、《骨術師の達人》をサーチでき、こちらも給餌により根との爆発力もあるこのカードにスポットライトを当てた。
1T目切削⇒2T目《陰湿な根》設置⇒3T目タイヴァーから《茨越えの餌あさり》が成功すると、上手くいけば追加で最大4マナ得られる爆発力は魅力的であり採用を決めた。
地味ながら下の能力は好きな色のマナを出せるため、手札で腐りがちな《ヴォルダーレンの興奮探し》を唱えやすくできる点も評価した。

好奇心旺盛な餌あさり

ドカ食い大好き!永遠の証人

デッキを試運転していくと、クリーチャーにアクセスするのに比べて根やタイヴァーにアクセスするのがかなり難しいことに気づいた。
そこで、《茨越えの餌あさり》からサーチでき墓地に落ちた根やタイヴァーを拾えるこのカードをピン刺しすることに決めた。


調整を終えたリストはランクマッチでも悪くない成績を収め、試行回数はわずかだがサーバでの壁打ちでも勝ち切ることはできていた。
これにより、蒼紅杯の提出リストが完成した。



山辺カフカの失策ミステイク

蒼紅杯でのプレイは全編筆者のYouTubeチャンネルにて配信しており、アーカイブを参照されたい。

結果は4-3で28位/111名とプライズ圏外であった。
3-0スタートの好発進はできていたためデッキ選択が的外れとまでは思わなかったものの、当然仮想敵とすべきゴルガリミッドレンジに0-2している点にかなりのわだかまりを感じた。
(逆に言えば、malseman氏のアブザンコントロールは相性差がありすぎて負けて仕方ないと感じた)

そしてこの失策により筆者は天啓を得ることとなったのだ…



山辺カフカの天啓エピファニー

まずは蒼紅杯を経て、Japan Openでも根を握り続けるかどうか考えた。
配信者らしくリスナーの意見を元に決めようとアンケートを取ると、僅差で「また陰湿な根が見たい」が勝った

これによりJapan Openでの筆者の陰湿な根縛りが決まり、蒼紅杯敗戦を経た根デッキのリスト再考が始まった。

再考しているとゲームプランの前提に何か大きな勘違いがある気がしたのである…


実は、この根デッキ、所謂根デッキではなくてボロス召集なのでは?

舞い降りてきた天啓


当然、根デッキはボロス召集ではない。
上記で言いたいことは主に以下2点である。

①キルターンが早い

筆者はエクスプローラーよりもアルケミーの根デッキの方を擦っていたため、今回のスタンダードの根デッキもどちらかと言えばそちらをベースに検討していた。
既に述べた通りアルケミーの根デッキは《繫殖の原基》のビートダウンプランで勝つことも多いほどミッドレンジ的な戦い方をするものであり、現行スタンダードで言えばコンボ搭載型ミッドレンジであるゴルガリ亭主に近いかもしれない。
最終的に強かったリストは赤を足して《暗黒時代の後継、ジャーシル》を積んでいたことからもその傾向が色濃いことが分かると思う。

このアルケミー根デッキは《甲殻の這うもの》自体のマナコストや、アガサ経由でも能力に落魄8条件が付いているため、コンボのキルターンとしてそこまで早いものではなかった。

一方で、比較対象として上述したケシスデッキの強みはその早さだと筆者は思っている。
ケシスデッキもアグレッシブサイドボーディングによりミッドレンジプランを取ることは多いが、メインでは原則コンボデッキとして振る舞う。
理論上可能な3ターンキルの確度が《邪悪鳴らし》によっても上がっており、ボロスエネルギーのキルターン(3~4ターン)にも張り合え得ると考えたのが、7月のヒストリック予選で検討をしていた理由である。

翻って、現行スタンダードの根デッキも理論上3ターンキルが可能である
1T目に適当に切削したのち、2T目に根を設置、3T目にタイヴァーから骨術師を釣り上げて即起動、根から生み出された1マナでクリーチャーを釣り上げることでチェインコンボが始められるのである。

ここでコンボを継続するために超重要になるのが、蒼紅杯で筆者は不採用とした《うなる大殺犬》である。
このクリーチャーがいれば釣り上げたクリーチャー+根の植物トークンで最低2切削できるため、釣り上げたクリーチャーの切削効果や2枚目の犬・根と合わせてチェインを最後までつなげることが可能になる。

リミテ専ですら最初は採用を躊躇したコモン犬

コンボの過程では給餌コストにクリーチャーを当てることでマナを増やすこともできる。
これによりマナを少しずつ増やしながらデッキを全切削できれば、あとは残ったマナと墓地に落ちたクリーチャーだけで試合を決めればよい。

試合を決めたいと聞いて

そして最悪チェインが止まっても、盤面にはやばい数とサイズの植物トークンが並んでいるはずである。
このうまくいけば3T目で勝ったりやばい盤面が並ぶデッキ、スタンでもなんか聞いたことがあるような気が…

そう、ボロス召集だね!

奇しくも、ボロス召集は昨年のJapan Open 2023にて上記記事著者のやまげん氏が結果を残し注目を集めたデッキである。
その後、新セット追加のたびに強化を受けて今に至るのは周知の通りである。

さすがにヒストリックではないので張り合うべきはスタンダードの他のデッキとのキルターンである。
環境最速と名高いボロス(ジェスカイ)召集が2T目イーオスの理不尽なムーブをしてきても、3T目イモデーンで削れる最大火力は18点であり、こちらにダメランがなければ3Tキルには2点足りない。
(なお、旧スタンは《ヴォルダーレンの美食家》がいたため最大19点削れた)

また、蒼紅杯のリストを見渡していて、今の環境におけるサイドボードの墓地対策の少なさと、そもそもの墓地対策カードの弱さに気づいた。
致命的である《安らかなる眠り》の採用枚数は少なく、次点で脅威である《温厚な襞背》は間に合わないことも多い。

以上の発想から、キルターンの理論値がこのボロス召集よりも速いゴルガリ召集を組むつもりで、筆者はデッキの抜本的な再調整を始めた。


②アガサのバリューが低い

アルケミーでもエクスプローラー(パイオニア)でも、《アガサの魂の大釜》(以下、アガサ)は基本パーツである。

渋沢栄一を煮込んでます

アガサは一般的に、キーパーツであるシステムクリーチャーを単体除去するだけではコンボを止められなくするために積まれている。
加えて、アルケミーではキャストするのに重い《甲殻の這うもの》を実質的に早く場に出すのにも貢献していた。
また、エクスプローラーでは《忘れられた神々の僧侶》以外に《死儀礼のシャーマン》をコピーすることでのリーサルや、お供である《見捨てられた鉱夫》を釣り上げるための悪事源としても有用であった。

虫スープとDJスープ、あなたはどちらがお好き?

翻って、スタンダードの根でアガサの能力コピーをする先は基本的に骨術師(+ヴォルダーレン)になる訳だが、スタンダードでは骨術師の能力をコピーできたとてタイヴァーが存在しないと無限コンボにならない。
(根の植物トークンから即時にマナが出なくなるため)
したがって、当然であるが基本的にコンボを開始するときにはタイヴァーが場に存在する。
そして骨術師はタイヴァーの[-2]能力で釣れるので、アルケミーのように「タイヴァーはいるのに甲殻の這うものが釣れない」状況は発生しない。
そしてエクスプローラーのように「コンボ以外にアガサを有効に使う」方法も存在しない。
さらには、骨術師の起動型能力はインスタント起動可能なため、大殺犬のETBに合わせて骨術師に除去を打たれても(タイヴァーさえいれば)対応して起動可能であり、単体除去にもそもそも強い

強いて言うならば墓地の骨術師を事前に追放されるリスクをアガサにより減らすことができるが、そもそも環境の墓地対策が弱いことに加え、ゴルガリ亭主コンボのせいでディッチャはそこそこ環境に積まれてきており、アガサで追放することが裏目になる可能性すら高くなっている。

このような背景からアガサを抜くことの検討を始めた。
ここまでの言語化はせずにShelterサーバにてメモ書きを残したところ、もう1名のゴルガリ根調整者であるadver氏も大いに賛同してくださった。

この①②の天啓から、筆者が辿り着いた構築がこちらのJapan Open 2024提出リストである。

大殺犬以外の新規採用カードについて採用理由を以下に記す。

蓄え放題

インスタント《邪悪鳴らし》うおおおお

元々は骨術師で釣れることを評価してブランチウッドを採用していた枠をこれに差し替え。
コンボに特化して最速キルを目指す構築にするので、キーカードへアクセスできないただの切削は減らしたかった。
このカードは墓地を4枚肥やしながらタイヴァーも根も探せる上にインスタントである最高級のサーチカードであり、文句無しに4枚採用。
たまに生まれる食物もコンボ継続に貢献するから無視できない。

泥沼の略奪

スタンでデモチューしていいのか?!

実質チューターは言い過ぎだが、平均で8枚くらいは見るので4積みのタイヴァーや根には辿り着きやすい。
切削しないため骨術師を落としたり給餌コストを稼ぐのには貢献せず、2枚採用に留める。
ソーサリータイミングでしかディッチャ・PW除去できない相手に対して、5T目に根+タイヴァーで勝つためのキーパーツ。

古の放漫トカゲ

「みんな発売前は少し騒いでたのにひどい!!」

多くの人が驚いたと思われる採用。まさにゴルガリ召集
フィニッシャーとしてイモデーンではなくこちらを採用した。
基本的には全切削からヴォルダーレンと組み合わせて22点ビームするためのコンボパーツだが、素引きや骨術師から出しても結構試合を決める。
(Japan Openでは3ゲームこいつで殴り勝っている)
コンボでマナがカツカツのときにマナの出ないクリーチャー7体からひねり出すとマナが増えたりするのも面白い。
トランプルが環境にマッチしており、護法2で相手がまごついている間にコンボが決まるパターンもあるのも偉い。
さすがに2枚引きたくないためピン刺しとした。

機能不全ダニ

普通に強いのにアルケミーではバフされててやばい子になってます

最大勢力であるゴルガリミッドレンジの対抗馬として版図ランプが二番手に位置すると読んでおり、その版図がメインに《一時的封鎖》を積みだしたため強気のメイン3枚に変更。
流行りだしたゴルガリ亭主やボロス世話人・溶鉱炉にも機能不全クリティカルヒットし、ボロス召集にもアンセム割りやゲインが偉いため(無脊椎動物だが)骨までしゃぶりつくせる。

グリッサ・サンスレイヤー

最強の殺戮マシーン

adver氏にシェアいただいた知見に基づき採用。
ゴルガリミッドレンジの常連であるが、その対クリーチャー性能は現環境最強レベル。
加えて、弱点である一時的封鎖のようなエンチャへのプレッシャーにもなるなど、根デッキにおいてもサイドとして万能。
地味にタイヴァーの[+1]能力とも相性が良く、対アグロデッキ中心に軸ずらしサイドインとして投入。(元々はアクロゾズだった枠)

脚当ての陣形

令和の《垂直落下》

妨害エンチャの多い、主にランプ系デッキ向けに採用。
着地してしまったアトラクサや天使をどかしてライフを攻めに行けたりもする。
サイドカードの割には腐りにくく、食物が骨術師の給餌にも使えるなど、かゆいところにも手が届く。

残虐爪の強奪

魔法の筒マジックシリンダー発動!

対ゴルガリミッドレンジに強いサイドカードが何かないかと考えこちらを1枚。
贈呈でこちらが打たれたくない軽量除去を奪うと相手を大幅にスピードダウンできて楽しい。


この筆者独自リストは図らずもadver氏検討リストとメイン採用カードがほぼ一致していることが発覚した。(ダニ3まで一致に驚愕)
独自にチューニングした2人がほぼ同じ結論に辿り着いたことに感銘を覚えたと同時に自信を持ち当日に臨んだ。

参考までにadver氏のデッキリストもこちらに掲載する。
フィニッシャーを《玉虫色の蔦打ち》《事件現場の分析者》にしている点が非常に面白く、どちらも素出ししやすい上に分析者は切削3がすこぶる偉く、タイヴァー[-2]能力の外れリスクも減るのはかなりの調整の結果と見受けられた。
なお、筆者は事前にこの知見を共有いただいていたが、コンボ中に土地を給餌にしない回し方に自信がなく不採用とした。



山辺カフカのうんc(自主規制)

ここでは調整の中で検討したもののゴmこのデッキには相応しくないと判断したカード達を紹介する。
なんの肥やしにもならないため適宜読み飛ばすことを推奨する。
ちなみに今後可能性のありそうな検討済カードはここでは省いているため、本当にゴm

タルモゴイフ

驚くべきことに今のスタンには沢山タルモゴイフがいる。
いずれも2マナでありタイヴァーとの相性はもちろん良い。
しかしながら、本来コンボプランが咎められた際のサブプランとして重宝すべきビートダウンプランが、同じ墓地対策で咎められるのは致命的である。
《迷いし者の魂》だけは貴重なセルフハンデス・生け贄要員としての仕事がありそうであり検討の余地があったが、どいつもこいつもトランプルすら持っておらずロマンはロマンと割り切って不採用。

アシュノッドの収穫者

喉首に当たらず、最低限パワー3もあり、蘇生すれば根を2回も誘発できる!と思い蒼紅杯直前までメインに2枚入れていたが、Nelson氏に鼻で笑われた代物。
リミテ専はリミテ指標で評価するためこういう訳の分からないところに目を付けがち。

自暴自棄の求血者/胆液飲み

リミテ専のリミテ指標検討枠その2。
ランクマでアグロに負け始めたときに軽量絆魂として目を付けだした。
さすがにまじめに調整している人に共有するのも憚られたため本邦初公開。

アーボーグの奪還

リミテ専のリミテ指標検討枠その3。
根もタイヴァーも釣れるのは偉い。
ちなみにadver氏も検討しているためここに挙げられている中では一番カードかもしれない。

ティタニア

切削で検索していてその堅さに惚れ、アグロへのサイドインパッケージとして検討してしまった。
ちなみにメインデッキに緑の伝説のクリーチャーなどいない。

帝王マイコイド

なんか相性が良さそうだったが根コンボとは何も絡まず引くほど弱い
追い討ちにしかならないが、陰湿な根が生むトークンは苗木でもファンガスでもなく植物である。

不気味な船長の玉座

サブプランのフィニッシャーとして検討。
ちなみに最終的なデッキですら吸血鬼1と恐竜1しかいない。

清掃人の才能

根がある状態でレベル2にしてバルトロメで鉱夫を無限サクリすれば無限切削うおおおおおお!!!!
(3色7マナ4枚コンボ)
鉱夫は単体では良いカードです、名誉のため。




閑話休題



山辺カフカの奮闘ストラグル

(なぜかここから丁寧語)

JapanOpen2024 Day1/Day2の筆者のプレイはYouTubeアーカイブ動画として残しておりますので、よろしければ是非ご視聴ください。
Day1は回線状態等の都合で3つの動画に分かれてしまっており、以下には4マッチ目以降のプレイのみ収録されております。


結果としては、
Day1(スイスラウンド)を 7-2(14位/462名) の成績で通過した上で、
Day2(SEラウンド)を3回戦まで勝ち抜き、 Top16(11位/64名) になることができました!
最後のジェスカイ召集との対戦もあと一歩というところだったので悔しさがないと言ったら嘘になりますが、想定していた以上の結果がついてきたことも事実でありそこにはしっかり満足したいと思います。

予選ウィークエンド以外では初めての構築実績

ツイートにも記載しましたが、一緒に調整したadver氏もともにTop16まで残ることができており、一時的にもこの大会のメタゲームにおける根デッキの支配率を12.5% (2/16人) まで高めることができました。
公式のスタンダードメタゲームブレイクダウンに《陰湿な根》の字が刻まれたのは初めてじゃないでしょうか?

公式本配信ではadver氏がSE 2回戦でフィーチャーされており、根デッキで勝利する瞬間も放映されておりますので、是非ご覧ください。

(追記)
adver氏が私より先にnote記事を書かれていました!(書き終わるまで気づかず)
少し異なる視点の意見も書かれておりますので、こちらも是非お読みください。

また、蒼紅ちか氏運営のスタン研!にも、筆者のデッキをベースにした解説記事を上げてくださいました。
エッセイ的にだらだら書いた本記事よりもエッセンスを纏めており大変読みやすくなっております。


そしてりす太郎氏にもデッキ紹介動画を上げていただきました。
私の配信アーカイブよりも回し方が分かりやすく可視化されているので是非こちらもご覧ください!

ローグ氏にも同じくデッキ紹介動画を上げていただきました!

なんとJim Davis氏の動画でも紹介されました!
㊗️海外デビュー!


おわりに

冒頭にも書きましたが、今回の大会でついにオリジナルデッキで結果を残すという夢を叶えることができました。
そして、言語化が難しいと述べた「自分がなぜオリジナルデッキを好むか」の本質にも近づけたような気がします。


私はリミテッドを主戦場にしており、リミテッドでは毎回握るデッキが異なります。
当然、環境ごとに強いデッキ・アーキタイプは存在するため環境によってはデッキの多様性が低くなりますが、特にドラフトの場合は「最強カラーが判明するとその色が混みやすくなり、結果的に他の空いた色の方が強くなる」という新陳代謝が発生しやすいです。
直近のブルームバロウのプレミアドラフト環境も日ごとにアーキタイプ勝率が様変わりする良環境と言われており、これこそがリミテッドの楽しさだと感じております。

一方で、構築の場合は本当の最強デッキが判明した場合はドラフトと同じような新陳代謝は起こりません。
もし全く隙のない最強デッキが判明した場合には全員がそのデッキを握るのが正となってしまうことは、MtGの歴史も物語っていると思います。
実際には多くのデッキに隙があるため大体はある程度メタゲームが回りますが、それでも最終的には最適解に近いいくつかのデッキリストに収束されていく印象があるくらい、カードパワーのデザインは難しいと思います。

その点、このデッキ多様性について最近のWotCのデザインチームは非常に良い仕事をしていると感じます。
まさに今回のJapan Open 2024の結果は、現在のスタンダードのカード群がデッキ多様性を高く保てるようデザインされていることを分かりやすく証明したと言えます。
蒼紅杯・Japan Open 2024が終わった今もなお、この環境の最強デッキやTier階層を述べることができる人は少ないのではないでしょうか。
この状況こそ、筆者として構築フォーマットに望んでいる状況です。


加えて、オリジナルデッキによる自己実現・セルフプロデュースが可能なことも、筆者がそれを好む理由の一つだと感じております。
私にとってこの根デッキは忘れることのできない、かけがえのないデッキとなりました。
実際に回していて楽しいデッキですので、ぜひ多くの人に一度遊んでいただきたいです

このデッキのプロモーションを違った角度から一つだけするならば、今のところかなり安価に組むことができます。
唯一の高価なカードであった《アガサの魂の大釜》を廃したため、土地以外で一番高価なカードがアンコモンの《機能不全ダニ》や《陰湿な根》になるかもしれません。
土地は今後他のデッキにも必ずや採用できるカードでしょうから、資産面ではスタンダードで遊ぶ初めのデッキとしてオススメできると思います。(プレイング面は少々クセがありますが)

そして、やまげんさんのボロス召集が存在感を放ち最終的にTier1まで登り詰めたように、願わくばこの根デッキが現スタンダード環境に一石を投じるデッキとなれば幸いです


最後に、
知見を多く共有してくださったadver氏含めたShelterサーバの皆さん、
貴重なアリーナ公式大会の場を設けてくださったWotC Japan運営の皆さん、
失策に気づくきっかけをくださった蒼紅杯運営の皆さん、
私の配信で長時間声援を送ってくださったリスナーの皆さんに
に感謝の意を示させていただきます。

少々長めの駄文となりましたが、以上をもってスタンダード陰湿な根デッキ調整録を締めさせていただきます。

また、ただの宣伝ですが筆者が記事を寄稿した一般TCG理論に関する冊子も販売されましたので、よろしければこちらもお手に取っていただけますと幸いです…!

それでは、ばいばい、さよなら、再見!




※以下、おまけ程度ですが有料部分として筆者なりのサイドボーディングプランを記載しております。投げ銭代わりによろしければ是非…!


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