
旅
恋人でも友達でもない
パートナーなんて俗っぽい
アラフォーとアラフィフの男女
何とはなく日帰りではあるが
初めての小さな旅
こんな中 あんな田舎に有名な商業施設があると
前から言っていた田舎に車で出かける
まるでスカスカの高速道路を軽快に抜け
何時ものとおり職場の笑い話
都会に憧れた若い頃と違って
住処と同じような景色の連続に
最近は親近感を抱くね なんて
中途半端に老いた台詞を吐きながら
田舎の中に突如現れた
都会のと全く違わぬ商業施設
そこだけが紋切り型に都会と化し
返って畑や山林が哀しみに満ちている
何のことはない
都会のミスプリントでしかなかった
幾ばくか会話も途絶えつつ帰路へ
帰りは下道を通って帰ろうと国道を走らせる
田舎もんが田舎に親近感を抱くね
なんて言っていたのに
帰路は雲が寂寞の風を吹かせる
そして男女という名の夜へ飛び込む
このルーティンを好んでるのか嫌悪してるのか
その判別すらつかないまま
互いの住処への帰路は既に闇に包まれ
前をゆく車のテールランプの多さに苛立つ
彼女への手土産も早々に渡し
コインパーキングでお別れをする
精一杯の ありがとう またね を繰り返し
彼女はきえてゆく
私はその距離を早く伸ばそうと信号を急ぐ
追い抜いた筈の信号が また目の前に表す
向かい車線のヘッドライトの数だけ
物語があることへの畏敬も憧憬も
かなぐり捨てて
自分たちの関係性を再認識するための
ただそれだけの為の旅
こんなの旅じゃない
気付けば彼女からのSNSに既読をつけたまま
浅い眠りについていた
その日の旅が 夢の一場面だったかのように