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【観劇】零明 by 劇団ストレイシープス

 小さな小屋(劇場)が大きなお屋敷に見えた。そして、それはまた、どこまでも永遠に続く暗闇の中でもあった。音楽は耳鳴りのようで、これはもしかしたら頭痛なのかもしれない。いや、この痛いほど胸に響く音楽はどちらかと言えば動悸だ。いずれにしても、美しい痛みだと思った。

 登場人物たちの言葉は淡々と、いやどちらかと言えば冷たく、すこし早口で交わされる。その鋭い刃で相手の空間を切りあうような会話から、私たちは想像する。関係性を、思考を、感情を、真実を。そして、何一つわからないまま、何か小さな事実を頼りに、私は何かをわかった気になる。けれど、きっと私はまだ何もわかっていない。

 観劇してからずっと頭の中でぐるぐると様々なシーンがまわる。面白かったなぁ。芝居を観ながら文学を読んでいるかのような感覚だった。陳腐な感情を押しつけるようなノイズがないのが素晴らしい。でもその分、役者に求められる技術レベルは高くなるよね。まず白いキャンパスになることが必要なんだろう。そこがまだ難しいかな、と思う役者さんもいた。

 しかし、賜未るいかが、とても美しかった。そこに❝居る❞だけでずっと舞台を見ていられる気がした。目線ひとつで伝わる、表情を変えずとも感情が見える。透明度の高い存在感と、浮世離れした綺麗な声が、物語の説得力になっていたと思う。はまり役。

 自分の経験不足、実力不足を感じたなぁ。
 また勉強させてもらいに行こう。

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