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あした、なにしよう。

風薫る五月。松本のベストシーズン。例年であれば、街をあげての工芸月間「工芸の五月」で、道も店も賑わう季節だ。が、それも今年は望めない。

昨年の「工芸の五月」に〈栞日分室〉のこけら落としとなった企画「現在民藝館展」を開催してくださったアーティストユニット〈L PACK.〉が、自身たちの日用品店〈DAILY SUPPLY SSS〉に加えて、もうひとつの場の運営に乗り出したのも、同じ年の初夏だった。

いま「ひとつの場」と云ったけれど、この「場」、みっつの顔を持つ。実空間〈SANDO〉、紙空間〈HOT SANDO〉、仮想空間〈NEW SANDO〉。そして、彼らはこれを束ねて「WEMON PROJECTS(ゑもん・ぷろじぇくつ)」と称した。このプロジェクト、大田区と東急が仕掛ける「池上エリアリノベーション」の一環だというから、またおもしろいことに巻き込まれているなぁ、と始動する前後から注目していた。

実空間(実店舗)としての喫茶店(これはまさに「喫茶店」だ、とオープン直後に訪ねたとき、僕が直感した)〈SANDO〉のオープンに先駆け、創刊準備号「0号」が発行された紙空間(フリーマガジン)の〈HOT SANDO〉は、その後、毎月コンスタントに号数を重ね、その度に栞日にも届けられた。「クリエイターが持っている個性的な思考や視点、何かを見つける発見方法」をシェアするための誌面には、毎号たのしい発見が散りばめられていて、僕も愛読していた。

その〈HOT SANDO〉が、今年度は仮想空間(WEBマガジン)〈NEW SANDO〉の中で〈NEWS AND HOTSANDO〉として発信していく、と聞いたとき、紙でなくなってしまう寂しさを覚えつつも、このご時世、実態のある印刷物を街場に置いて取りに来てもらうことが難しいことも理解できたから(実際〈L PACK.〉のおふたりにもご一緒いただいたフリーペーパー「書を読もう、家に居よう」も、WEB版のみにせざるを得なかった)、あたらしい展開に期待した。

期待していたら、なんと僕に執筆依頼が舞い込んだ。これは、あたらしい展開だ。驚きつつも、ありがたく引き受け、書いてみた原稿が、先日リリースされた。〈NEWS AND HOTSANDO〉は、魅力的な街で活動する誰かへのインタビューや対談、イベントなどからなる交流記録『Hi, How are you? やあ、そっちはどう?』と、各地で活動している店主やクリエイターのいまの思考に触れるコラム『Tomorrow Never Knows あした何しよう』の二部構成で、今回、僕が文章を寄せたのは後者の方(短いエッセイなので、何かの箸休めにご笑覧ください)

今年は五月の松本で〈L PACK.〉に会えなくて、本当に、本当に、哀しいけれど、こうして仮想空間上でだけでも交流できたことは、とても嬉しかったし、救われる想いさえした。声をかけてくださった、小田桐さん・中嶋さん、ありがとうございます。でも、やっぱり、さみしいから、あと一歩踏み込んで、〈L PACK.〉と今年の五月の松本を結ぶ試みを企てたい、と考えている。

と綴っていたら、気づいたけれど、喫茶〈SANDO〉は、あしたが1歳の誕生日。ちょっとフライングかもしれないけれど、ハッピーハッピーバースデー!

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