株式会社 栞日
先日 2020.9.9[水]、栞日の法人成りが完了して〈株式会社 栞日〉が設立されました。そして同日、予定どおりの日程で、栞日が継承する銭湯〈菊の湯〉の現場責任者「湯屋チーフ」が決まりました。この春から一緒に仕事をしているレギュラースタッフ(土日祝日に手伝ってくれている「週末スタッフ」に対して、週5日間フルタイムで本店に立ってくれているスタッフを「レギュラースタッフ」と呼んできた)と共に、ふたりは社員として栞日に参加します。
7年前の夏に個人事業として栞日を開業した当初から、法人成りは僕のひとつの目標でした。それはなぜ?と問われると、実は明瞭に答えることができません。今回も、友人の紹介で相談に応じてくださった会計士さんから、シミュレーションの結果、法人成りのメリットは「ないともいえない。あとはオーナーの気持ち次第」と伝えられたとき、迷わず法人化を選びました。個人事業主が法人成りを選ぶ理由は、売上が大きくなったときの節税対策が一般的です。栞日も(本当におかげさまで)開業以来この7年間で、それ相応の事業規模に成長していましたし、今回の〈菊の湯〉継承にあたって収支計画を描いたとき、「いよいよかな」と感じたことが、このタイミングで法人成りに舵を切った直接的な要因ではあるのですが、「いつか栞日を会社に」という開業以来の願望の根底には、もっと別の感情があったように思います。
いま思えばその感情は、「組織」に対する「憧れ」に近いものでした。より正確に云えば「個人ではなく組織として、この社会の中で関与できるフィールドにおいて、自分の仕事を展開するプレイヤーになれること」に対する「羨望」でした。そのとき僕の脳裏にはもちろん、開業目前までお世話になった古巣〈haluta〉や、その創設当初から注目してきた〈D&DEPARTMENT PROJECT〉、学生時代に通い続けた、黒磯〈SHOZO〉に益子〈starnet〉など、幾つもの「憧れ」の背中がありました。「あの先輩たちのように、自分もフィールドで駆け回りたい」そして(いま列挙した組織がまさにどこもそうであるように)「自分のチームから巣立ったメンバーがそれぞれのフィールドで活躍する姿が見たい」。それは「組織」に対する「憧れ」以外のなにものでもありません。
栞日を開いて、雑誌『KINFOLK』を取扱い始め、ひとつの価値観を信じるチームが社会の価値観を揺るがす可能性に立ち会いました。雑誌『PAPERSKY』が、中原慎一郎さんをガイドに迎えサンフランシスコを訪ねる「GOOD COMPANY」特集を組んだとき以来、自分が目指したい「GOOD COMPANY」の像を捜し続けています。英語「company」は、ラテン語「com(共に)」「panis(パン)」に「y(仲間)」が付いた言葉で「ひとつのパンを分け合う仲間」の意。スタートラインに立ったいま、この先に続く果てのない道で、この仲間たちと(そして、まだ見ぬ仲間たちと)どんな風景を拓いていけるのか、楽しみでなりません。
とは云え、栞日の為すべき仕事は、これまでと何ら変わりません。この地域に暮らす/訪れる、誰かにとって「あってもなくても構わないけれど、あったら嬉しい日々の句読点」になれたなら、と祈りながら、場をつくり、営むこと。その誰かが、世間や日常からはぐれたくなったとき、いつでもはぐれることができる行き先として、そこにあって、開かれていること。
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設立日(9月9日)は、このタイミングで法人成りするきっかけをつくってくれた銭湯〈菊の湯〉に敬意を表して、「菊の節句」の別名を持つ「重陽の節句」。最も大きな「陽の数(奇数)」である「9」が重なり、縁起がよい日とされています。この季節に咲く菊の花から滴る露が川に落ち、その川の水を飲んだ者が長寿になった、という古代中国の「菊水伝説」にあやかって、日本でも邪気を払い不老長寿を願う日として、五節句のひとつに数えられています。栞日の水脈が、永く後世に流れ継がれていくことを祈念して、この節目の日を選びました。
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さて。栞日カンパニーの仕事はじめは、銭湯の継承。湯屋チーフも決まり、次の関門はクラウドファンディングです。目下審査中のプロジェクトは近々スタートの見通しですが、ひと足はやく、いつも栞日を見守ってくださっているみなさまには、プロジェクトページの限定公開URLをお伝えします。
https://camp-fire.jp/projects/323598/preview?token=2jnv2zdt
→ 公開されました!(2020.9.14[月]正午)
https://camp-fire.jp/projects/view/323598
いつもながらの長文なので(ごめんなさい!)、お時間が許すときに目を通していただけたら幸いです。
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最後になりましたが、〈株式会社 栞日〉の社員を紹介します。
▼ 菊地徹[代表取締役]
▼ 菊地希美[取締役 / 焼菓子研究所所長]
▼ 工藤愛子[社員 / 喫茶チーフ / 宿屋チーフ]
▼ 山本ひかる[社員 / 湯屋チーフ]
希望も愛も光もあって、あかるい未来のカンパニーです。どうぞ、よろしくお願いします。