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ふつうの日記 2021.08.05『透明な乳液』
・乳液
※今日の日記は、昨日の日記を読んでいただけるとより分かりやすいかもしれません。↓
https://note.com/yama_taisetsuni/n/nf935ffb7c7bc
昨日の散歩の帰りに、実は乳液を買っていた。乳液がずっと切れていて、ここ1週間はボトルの底に残ったわずかな量を叩き落として使っていたのだ。
そして今日の昼、その乳液の詰め替えを決行した。洗って乾かしたボトルを開け、詰め替えパックの口を切って、乳液をとくとくと流し込んでいく。と、明らかな違和感があった。乳液が透明なのだ。
私は今回、いつもとは違う乳液を買っていた。同じメーカーで同じボトルだけど、ちょっと成分が違っているやつだ。だから特別疑問には思わなかった。乳液というと白く濁っているイメージだけど、こういう乳液もあるんだなぁ……と思いつつ詰め替えを終え、空っぽになったパックを見て、驚愕した。
化粧水だった。
なんたる失態。私は動揺のあまりどうしていいか分からなくなり、ふらふらと洗面所に赴いていつもの場所にボトルを戻した。普段使っている化粧水の隣に、乳液の皮を被った化粧水が並んでいる。ど、どど、どうしよう。
確かに、昨日の私は疲れていた。暑さと二週間ぶりの外出に疲労困憊し、「早く帰りたい」という思いを抱えて陳列棚に向き合い、低下した判断力をもってあの詰め替えパックを選んだのだ。慣れないことをするんじゃなかった。化粧水を入れられて、乳液のボトルも困惑しているだろう。乳液のボトルに入れられた化粧水のほうも困惑しているだろう。ごめん、私はなんてむごいことを。
完全に開けてしまったので返品もできない。私はすぐさま乳液を買いに行った。するとドラッグストアに入るなり、「抽選キャンペーン中です!」と若い女性が近づいてきた。未だ混乱のさなかにある私は言われるがままクジを引く。引いている間、女性は私をじろりと眺めてこう言った。
「肌白いですね!」
やめて!
いや、褒めてもらえたこと自体は純粋に嬉しい。しかし私は昨日、この引きこもりの象徴たる青白い肌を健康的にしたくて散歩をしたのだ。そしてその散歩のせいで私は、私は、乳液を、化粧水を……。
引いたクジには「エステ」と書かれていた。エステ? ここはエステではないが? 女性は「わぁ~っおめでとうございます!」と甲高い声を発し、私を店の隅のテーブルへ連れていく。テーブルの上には、見慣れない店名の印刷された紙袋が並んでいる。そうか、この女性はドラッグストアの店員ではない。近所にあるエステサロンの店員だ。やめろ、私はエステの無料体験になんて興味はない。離してくれ、私は、私はただ、乳液を買いたくて…………。
エステの勧誘をどうにか断り、私は乳液を買って帰宅した。間違えて買った化粧水を霧吹きに移し、今度こそ乳液のボトルに乳液を注ぎ込む。液体はちゃんと白かった。
洗面所には今、化粧水と化粧水と乳液が並んでいる。「トホホ~、もう真夏の散歩にはこりごりだよぉ~」と、言わざるを得ない。
・カルピス
ちょっと久しぶりにカルピスを飲んだ。カルピスは初恋の味らしい。初恋ってかなり美味しいな。