推し香水で狂おう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
こんにちは。山ごろしと申します。
引きこもりがちなシャイ・ガールのため、目潰しの手で失礼します。
突然ですがみなさんは、「推し香水」というものをご存じですか?
推し香水とは、読んで字の通り「推しをイメージした香水」のこと。視覚や聴覚だけでなく嗅覚でも推しを愛でることができる、オタクにとっては龍涎香もかくやという価値を持つスーパーアイテムです。
そしてそんな推し香水を、この私もひとつ所持しています。
これは去年の8月、こちらのサービスを利用して購入したもの。
推しの特徴を伝えると、プロの香水コーディネーターの方が、既存の香水の中から推しにぴったりの一品を送ってくれるというとんでもないサービスです。
この香水が届いたとき、私はそれはもう舞い上がったものでした。公式グッズなど一切存在しない、超ド級にマイナーな推しのイメージ香水。商品説明を読んでも結局何の香りなのかよく分かりませんが、とにかく良い香りがします。
推しの香り! かれこれ10年近く孤独に推し続け、友人に布教しても「ふぅん」という顔をされ続けていた、あの推しの香り! あまりのことに穴から顔を出した直後のプレーリードッグのような挙動になったことをよく覚えています。
そして現在、2022年3月。そんな喜びからおよそ半年が過ぎました。私の推し香水はどうなっているかというと……
そう、全然使えていないのです。テスト用として添付されていた紙に2、3回ほど吹きつけ、「ヒ……」とか細い奇声を発するのが私の限界でした。だって……あまりにも大切すぎて……。
しかしせっかくの推し香水。もっと有意義に、推しを最大限に感じられる方法で使わなくてはもったいない!
これを機に、推し香水を有意義に使おう!
と、いうのが今回の主旨になります。よろしければお付き合いください。
さて、推し香水の使い方として有意義なのはどういったものでしょう?私はあれこれ思索を巡らせました。
枕に吹きつける? 推しの衣装に似たものを揃えて、吹きつける? いっそ自分がつけて街に出てみる?
どれも今一つピンときません。何かもっと、私の心を弾ませてくれる方法はないものか……
……ん?
お?
あーーーーーーーーーーーッッ!!
これです! ぬいぐるみです! ぬいぐるみに推しの香りを纏わせてみれば、ぬいぐるみを疑似推しとして愛でることができるのではないでしょうか!? 推しはれっきとした人間の成人男性ですが、同じ哺乳類という点で見ればシロクマもほぼ人間といって差し支えないでしょう。
これです。もうこれしかありません。早速香水を吹きつけてみましょう。高鳴る心臓に急かされるようにして、私は推し香水のボトルを手に取りました。
香水をつけるなら、やっぱり耳の裏ですね。シュッ……。
シュッ……。
「推し」、完成!!!!!!!!!!
キャラ名を出すと私の素性を特定されかねないレベルでマイナーなので名前は明かせないのですが、推しはスーツを着るタイプの成人男性です。そのため今回は、私のリクルートスーツを羽織らせることで「推し」感の増加を試みました。このくらい利用しきってやらないと就活なんかやってられません。腐敗した社会に鉄槌を。
ちなみに背景のこれは、自宅に備えつけられている古すぎる暖房です。ガスの点検があるたびに「これは使ってないですよね?」と言われますが、バリバリ現役で活躍してくれています。今回はこの暖房くんにも顛末を見届けてもらいましょう。
しかし何と言うかもう、すでにかなりいい匂いが漂っています。推しの香りにドキドキとしてしまいますが、これで満足してはいられません。目の前のシロクマは今や推しそのもの。愛する推しにしたいことといえば、やはり……
「ハグ」ではないでしょうか。
フワ……
あ……
気づけば天井を見上げていました。あまりのことに思考も、気持ちも、私の心の何一つ現実に追いつかなくなってしまったのです。すごい。なんというかもう、ほんとすごい。何がすごいってこれです。
ハグするとちょうど、自分の顔の横に推しの耳がくるんですね。なのでこう、耳の裏につけた香水がこう、チョクでこう、ね、そういうことです。なんというかね、そういうことなんです。
な、暖房。
あー、テンション上がってきた。そうだ! あれもやりましょうあれも。
すれ違ったときに香水がフワッと香るやつも!
いくぞ……いくぞ……。
スッ……。
……うーん……。
ちょっとこれはイマイチでした。なんというか全然、「フワッ」とこなかった。ただ横目にシロクマを見ただけです。これはいけない。何かが決定的に足りていません。何かが……
……分かった!!
春風です! 私と推しの間を柔らかに吹き抜けていく、桜色の春風が足りません。というわけで春風を用意しました。このサーキュレーターこそが私にとっての春一番です。
では、この「強」の春風を利用して。
いくぞ……いくぞ……。
……フワッ……。
気づけば天井を見上げていました。自分の試みがあまりにも上手くいったとき、人は心が空っぽになってしまうものです。しかしその空っぽは、決して寂しい空っぽではありません。あまりにも満ち足りていたからこそ、空っぽになってしまうものなのです。
「フワッ」と、確かに推しの香りが漂いました。暖かくタンポポの綿毛を舞わせる春風に乗って、何の香りか分からない香りが私の鼻をくすぐったのです。
こうして私たちは、必然ともいうべき出会いを果たしました。
ふたりはすぐに惹かれあい……
一緒にお茶なんかしちゃったりして……
ふたりで手をつないで歩いたりもしちゃったりなんかして……
それを暖房はやさしく見つめてくれていて……
あははは……
うふふふ……
…………………………
ハッ。
額の奥がぼんやりと、霞がかったように重くなっています。どうやら眠ってしまっていたようです。いえ、そもそもあの幸せな時間は、すべて夢の中のことだったのでしょうか。
はぁ。今度ばかりは、寂しさで心が空っぽです。
……ん?
……え?
……あっ!!
夢じゃなかった。
夢じゃなかった!
私の「推し」は、ここに実在していたのです!!
推しは私の目覚めを待っていてくれたのです。目覚めてみるとやはりシロクマにしか見えない気もしますが、しかしその白い耳の裏から漂う香りは間違いなく推しのものです。ということはやはりこのシロクマは推し。
推しのいる自室、推しのいる世界というものは、こんなにも華やかに見えるものなのですね。心なしか、キラキラと金色に輝いているようにも思えます。
そんなわけで私はこれからも推しとふたり、二人三脚で生きていきます。みなさん、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。挙式の際はまたご連絡させていただきますので、ご都合よろしければぜひご参列ください。それではそれでは。
バイビ~~~~~~~~~~!!!!!!
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