ふつうの日記 2021.08.01『書き順クイズと悲しみの勝者』
・書き順
再放送のクイズ番組で、書き順クイズをやっていた。漢字一文字をピックアップして、「この漢字の○画目はどれ?」というやつ。私はこのテのクイズが得意なので、これは全問正解できるぞ、と始まる前からドヤ顔をしていた。
1問目を難なく正解し、さらにドヤ顔を激しくしたところで2問目が出題される。「戯」の字だ。薄い灰色で表示された「戯」の、左上の「┣」の二画が順番に濃くなぞられる。それから、「三画目は?」というナレーション。三画目は分かった。一番左端の、「ノ」の部分だ。自信がある。だけど私はこのとき既に、高々と伸びきった鼻をへし折られていた。
番組が示した「┣」の書き順は、一画目に横線、二画目に縦線だった。しかし私は普段、どう考えても、縦線から先に書いている。
番組はスムーズに進行する。出演者の回答が一斉に開示され、司会者がほどよくイジりを入れてから正解発表に移る。当たり前だが、誰も「┣」の部分には触れない。三画目は「ノ」。正解者は一人だけだった。私も正解した。のに、全く喜べない。
私は静かにテレビの前を去った。もはや勝利には何の意味もなかった。私は台所に独り佇み、コップ一杯の麦茶を飲んだ。その背に悲しみを湛えながら。
・爪
左足の人差し指の爪がヒビだらけになっている。どこかにぶつけた覚えはないので、寝ている間に妖精にバキバキにされたのかもしれない。妖精用のミニミニ金槌で。
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