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ふつうの日記 2021.09.18『涙のスターマリオ』

・泣き

 漫画を読んで泣いてしまった。1回読んで泣き、読み終わってからパラパラめくり返してまた泣いた。年を取ると涙腺が弱くなる、というのは本当だと思う。私も年々涙もろくなってきている。
 中学生の頃まではれっきとした逆張りチルドレンだったので、「映画とかで泣いたことないんだよねww」みたいな態度を貫いていた。今思い出すと消えたくなるような記憶だが、実際泣くことはあまりなかったような気がする。いい話だな、悲しい話だなと思っても泣くには至らなかった。
 しかし最近はもうダメだ。映画や漫画や小説やゲームでもボロボロ泣いてしまうし、1枚のイラストとか音楽でも泣いてしまう。アイドルマスターシンデレラガールズに森久保さんという気弱なキャラがいて、その子のキャラソンは7分超の長ーい曲なのだけれど、初めて聴いたときはなんかもう歌い出しからアウトロまで7分ずっと泣いてしまった。深夜3時ごろ、布団の上で泣きながら「森久保……」と呟いていた記憶が鮮明に残っている。
 作品鑑賞中の「泣き」は邪魔なものでもある。視界がぼやけてよく見えなくなるし、鼻水の処理にも追われてしまう。今日の私もズビズビと鼻をかみ続け、なかなかページを進められなかった。それでも、自分が泣いた作品は強く印象に残るものだ。ティッシュのありかを探したり腫れたまぶたの重さが気になったり、集中を阻害されているはずなのに少しも冷めた気はしない。
 たぶん、「泣き」の時間は無敵状態になっている時間なんだろう。マリオでスターを取った状態、カービィで無敵キャンディを吸った状態だ。敵にぶつかってもノーダメージではね飛ばす、鼻をかんでいても作品から意識が離れない。おそらく今日の私の体は七色に輝いていたと思うし、いい感じのBGMも流れていたと思う。だけど私は気づかなかった。なんてったって、無敵状態だったから。
 中学生の頃の私は、泣かないほうが強いと思っていた。しかしそれは間違いだったのかもしれない。泣くようになったということは、無敵になれるようになったということ。ティッシュと一緒にスターを抱えて、私は無敵キャンディを舐めていた。


・タオルケット

 タオルケットが好きだ。タオルケットがあれば私は生きていける。地球の地面が全部タオルケットになったら、ウォーキングを始めようと思う。


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