夢小説

ほどけていく。

身体の末端からゆっくりと。

彼の指がわたしの輪郭をなぞるたびに、わたしの形がほどけてしまう。
指。あの指だ。滑らかで、繊細で、力強くて、ゴツゴツとして、長くて、ちょっとひんやりしている高校生の指は、20代も半ばのOLにはあんまり刺激的で…。そういえば楽器をするって言ってたな。きっとわたしには聴かせてくれないだろう。やってるとこを見せてと言っても、「恥ずかしいからヤダ」ってはにかむんだ。そう、きっと彼は…

「今日は静かなんだ?」
呼びかけられてハッと気づく。少し形を取り戻した輪郭が惜しい。
「なに?考え事?」
うん、ちょっとね。
「俺のこと?」
…違いますー。
「ウソだ。」
ウソじゃないもん。
「ふーん」

彼の指はもうわたしの手足をほどき終えてしまった。段々と身体の真ん中に手が伸びる。それはまるで、ケーキのいちごを最後に食べるみたいに幼くて、弱った獲物を痛ぶるように残酷だ。わたしはそんな彼の手つきが、普段は冷静な彼に甘えられているように思えてたまらなく好きなのだ。

くすぐったいくらい優しく、彼は最後のいちごに手を伸ばす。胸が高まる。鼓動は彼に伝わるだろうか?きっと彼は分かってるんだろうな。年の割に冷静で、年相応に可愛らしい恋人が囁いた。

「じゃあ、俺のことしか考えられないようにする。」

そして、わたしは、輪郭を失った。

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