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紅葉の大雪山縦走(赤岳から緑岳経由、黒岳まで)

連休を取っていたのに、またしても狙っていた山方面の天気が良くない。どころか、ちょうど今シーズン1番の寒気が入ってくるタイミングに重なった。直前まで山岳天気予報とにらめっこをした結果、気温を考慮に入れたとしても北海道しか選択肢はなく、昨年行った大雪山の日本一早い紅葉を今年も見に行くことにした。ただ、同じルートを歩きたくない病の私だ、なるべく通ったことがない、そしてピストンでなく縦走できるルートを探し、今回の行程となった。大雪山は登山口も充実していて色々なルートを取れるのでとてもありがたい。

前日に札幌で借りたレンタカーで層雲峡まで移動し、無料の大型駐車場で車中泊をした。翌朝 6:02 発のバスに乗るため層雲峡バスターミナルに向かう。縦走が長時間になるため絶対に1本目のバスに乗りたくて30分ほど前に着いた。前には7、8人がばらばらと並んでいて、寒いのに早く来すぎたかも、と思ったが、発車時刻までには後ろに長蛇の列ができていた。

バスターミナルと、右奥には朝陽に染まる黒岳

気温は5℃以下だったと思う。冬装備を着込んでいてもただバス停に立っていると芯から冷えてくる。5分前くらいにバス会社のスタッフがやってきて、チケットを売り始めた。

ファイルや手書きの説明の紙もついてきて嬉しい
チケットは道路にお店を広げる斬新なスタイルで売る

時間になると1台バスが来たが、1つ前の始発駅からの乗客で満席だった。バス待ちの行列がざわつきながら見守っていると程なく臨時便が来た。こちらも満席ではないがすでに乗客がいる。バス会社もこれほどと思っていなかったのか多少段取りに手間取っていたが、無事に2台目のバスに座ることができた。
大雪湖を経由して銀泉台まで1時間ほどバスに揺られ、やっと銀泉台の赤岳登山口に着く。満席のバス2台分の乗客が同時に登山口に集まっていた。盲点だったのはトイレにもまた長蛇の列ができていたことだ。長時間の縦走でトイレに行かずに登り始めるわけにはいかず、バス待ちとトイレで予定より30分ほど遅く登り始めることになった。
7:45登山口を出発する。

登山口から黄色の木々がお出迎え
樹林帯を歩くのはほんの少しだ

登っていく方面は白くガスに覆われ、身体は冷え切っていたが、登り始めればすぐに身体は温まり、数分も登ればもう山肌の紅葉に目を奪われた。登山口が標高1500mのため、すぐに視界は開ける。登山客が多く、道も狭いので自分のペースでは歩けない。それでも、最近は息が上がらない程度にゆっくり登る、を実践中なのでそれほどストレスにはならない。40分ほどで第一花園に着く。曇り空なのに、斜面の色付きが鮮やかに目に飛び込んでくる。ベンチも設置してあり、何人か休んでいた。

赤も黄もくっきりした色だ、さすが大雪山

第二花園、その先の奥の平までの道は、秋色の木のトンネルを抜け、赤い紅葉の絨毯の中を進む。ウラシマツツジ、チングルマ、ゴゼンタチバナ、エゾノツガザクラなどの紅葉のようだ。ところどころでリンゴのような匂いがふわっと香ってくる。味が似ているというコケモモの匂いだろうか。紺色や赤色の実もたくさん生っている。まだ花の同定を勉強中の身では紅葉した葉っぱでの同定は難しいが、時期になれば相当なお花畑であるらしく、可憐な花を咲かせる高山植物たちが秋にも楽しませてくれる素晴らしさを噛みしめる。これは7月頃にまた来なくては。

ナナカマドのトンネル
木のトンネル、すごく好き
ガンコウラン
何の花の終わりなのか分からない
チングルマの紅葉の絨毯


コマクサ平あたりまでくると、かなり人が多くなってきた。この先に赤岳への登りがあるので渋滞が起こっているらしい。これまでよりさらにペースを落とさざるを得ない上にゆっくり写真も撮りづらい。自然、周りの人々の感嘆の声が耳に入ってきたり、挙動が目に入ってきたりする。ゆっくり登る60代後半くらいの夫婦が「赤を通り越して小豆色になってるね」「綺麗だね」としみじみ感想を言い合っていて、お、素敵な感想!うんうん、と心の中で相槌を打つ。進むにつれ段々とガスがとれてきた。

ガスを纏う山のかっこよさも格別(晴れていくなら尚良い)

赤岳へ向けて100mほどの登りが始まるあたりからは行列ができている。列に並ぶようにゆっくり登りながら、止まったタイミングで背後を振り返ると東側のガスが下がってきて雲海になりつつある。北見富士であろうか、綺麗な形の山が雲の上に見え、白い景色の中を登ってきた人々が歓声を上げる。

山に登って何をしているのかといえば山を見ているのが我々登山者だ!

体がまた熱くなってくるが、空気は冬のようにひんやりしていて気持ちがいい。葉を全て落とし、頂点に真っ赤な実だけをたわわにつけたナナカマドが見える。

とにかくナナカマドの赤が鮮やかだった

途中平坦な道を挟み、また100mほどの登りだ。また人との間隔が狭まる。大人数で気が大きくなっているのか、高校生男子のように大声ではしゃぐ50代くらいのおじさんや、なぜか英会話のリスニングを結構な音量で流しながら、狭い道で列を追い抜こうとして失敗している大学生くらいの青年など、普段の静かな山歩きではあまりお目にかからないタイプの登山者を横目に、マイペースで登っていく。

広大な景色の中に連なる人びと

10:00 最初のピークである赤岳に到着。山頂看板の撮影待ちの列に並び、後ろのおじさんに撮ってもらう。

止まると寒いし人が多すぎるので、早々に縦走路に向けて歩き出す。急に人がまばらになり、大地もばぁっと広がって山を感じられるようになった気がする。大雪山らしい景色の中を歩き、小泉岳に着く。

これぞ大雪山の広さ
人が写ると広大さが際立つ
秋色が本当に好きだ

縦走者も思ったより多かったが、ここから緑岳方面に歩き出すと前後に人が見えなくなり、やっとフッと息をつく。ちょうど歩いていく稜線にガスが遮られて雲海のようになり、大地と空気のコントラストが壮大だ。

急に誰もいない
どこまでも歩いていける雲の上の世界

赤い壁の白雲岳避難小屋が見えてきた。ちょうどお腹も空いてきて、緑岳か避難小屋の辺りでランチにしようと決める。

中央より左あたりに小屋が写っているので目を凝らして見て下さい

緑岳まで登ると、同じことを考えた何組かが小さい山頂でお昼休憩をしていたので、私は写真だけ撮り、避難小屋に向かう。

広大さ、人との対比その1
広大さ、人との対比その2

途中にYAMAPには載っていない水場があった。明らかに水が汲めるように板が渡してあったし、私には神器・浄水器があるので喜んで汲む。

すごい勢い

この時期でも雪渓が残っている(ということは1年中あるのだろう)窪地におり、小さい渡渉箇所を超えて50mほど登り返すと避難小屋だ。小屋を覗くと若い女性の小屋番さんがいて、可愛いステッカーが売っていたので思わず買ってしまう。裏手にはテン場があった。小屋のInstagramでよくヒグマ情報と共に目にしていた景色だ。テン場を見下ろす位置にテーブルとベンチがあいていたので、ここでランチタイムにする。

山に抱かれるようなテン場
今日はモンベルで買ったチャイ
ヒグマとの共存


昼休憩を終え、黒岳方面に進路をとる。雲は多いし下からも絶えず湧いてくるものの、青空が広がってきた。今日は必要ないかな、と思っていたサングラスを取り出す。時間と体力と雲の感じを見て、白雲岳は今回は登らないことにし、北海岳へ向かう。

ナナカマドを何回も撮っていた
つやつやタイプの葉の紅葉は綺麗
白雲岳はまた今度
青空に映える秋色の大地
色と質感がとてもいい
すごくモフモフしていた、何だろう

景色のいいところで岩に座って喋っていた女性2人の前を通り過ぎると、1人が私の靴を見て「vivoだー。足疲れないですか?」と声をかけてきた。vivobarefoot信者の私は「全然疲れないです!おすすめです!」と鼻息荒く答えたが、「あー、ふふ」となぜか愛想笑いをされた。登山靴難民だった私を救ってくれた、足裏感覚を使いながら気持ちよく歩ける大好きな靴なのだが、疲れますよね!と盛り上がる事を期待されていたのかもしれない。歩くという行為において1番感覚を研ぎ澄ますべきは足だ。山を全身で感じたい私にはvivoの靴はもう必須の相棒だ。

ちなみに、登山靴についての面白い記事はこちら


休憩していた2人
ため息が出る道


14時頃、北海岳に着く。

また会いましたね

ここから先は1年前に歩いた道だ。正確には1年と1週間前だが、今年の方が紅葉が進んでいて去年の記憶よりも色とりどりだ。去年の山行も詳細に記録したためか記憶がかなり鮮明で、どうしても比べながら歩くことになった。(大体1年も経てば登山道の様子など忘れてある程度新鮮に歩けていた気がするのだが、ちゃんと文章に残すことの弊害がこんなところに出た!)

変なコケ(?)たち
実が美味しそうすぎる
去年お昼を食べたベンチ
渡渉箇所
草紅葉がピークだ

去年より赤色が多く、印象の違いを楽しみながら懐かしく歩き、黒岳石室には14:50 に着いた。最後はロープウェイで降りるものの、山の上にいる時間としてはもう遅い。立ったまま軽く休憩すると、またここからは知らない道、黒岳に登り返す。黒岳周辺には、鳥を撮ろうというのか巨大望遠カメラを持った軽装の人が何人かいてじっと登山道の脇を見つめている。ロープウェイでそれを目的に登ってきたのだろうが、何を撮ろうとしていたのだろう。やはり先ほどの晴れ間は一時的なもので、黒岳のピークを踏んだ時にはほぼ白い景色となっていた。

さようならまた来ます!

そのまま一気に400m下る。途中、足がガクガクになっている登山者を何人も抜いた。朝から気になってはいたが、軽装だったり、明らかに普段登山をしていないような歩き方の人がたくさんいた。そういう人は赤岳までのピストンだろうと思っていたが、こんな長距離の縦走までするのか、と驚いてしまった。このルートが誰でも行けるような感じでテレビか何かで紹介されていたのだろうか。
もやもやを感じつつも、16時に7合目リフト駅に着く。

チケットがいちいち可愛い
下りのリフトって楽しい

紅葉の中リフトにゆられ最初は楽しかったのだが、このリフトが15分もあり、途中から体が冷え切るし足に乳酸は溜まるしでほうほうの体で降りたのだった。(着地の時足が痛すぎてよろめいた!)そこからは快適なロープウェイに乗り換え、無事に層雲峡に戻った。

YAMAPの軌跡


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