石鎚山で出会った精霊の話。[中国四国遠征②]
こちらの日記でも触れた遠征登山2座目は、愛媛県石鎚山だ。
前回の服装の失敗を引きずる私は、取り急ぎカラー違いのパンツを購入して備えた。寒色系のカーキをチョイスし、件のピンクTシャツとも今回着る黄色のTシャツともフィットするので、我ながら満足だった。
コーディネートが決まれば、もう邪魔するものは何もない。むしろ前回あっての登山だから、余計に晴々しい気持ちで石鎚山に向かった。
ロープウェイを使って石鎚神社に向かい、それを抜けると登山口だった。まさに霊山だとしみじみしていると、のっけから下った。お金を払ってロープウェイで稼いだ標高はどうなっているんだ、と霊山ということも忘れて文句を言った。
石鎚山には鎖場が3箇所ある。鎖場までもなかなか登りごたえがあり、ヒイヒイ言いながら休憩をしていると、1人の登山者に話しかけられた。
「私のこと知ってる?ネットで検索してみて!また鎖場で会おう!」とめちゃくちゃ気さくなおじさまだった。そして去り際に、「そのパンツ、面白いね。」と言われた。
前回の失敗を経て、自分的に満足していたパンツを面白がられて、動揺した。しかもその方は、紫のTシャツにオレンジのパンツという、陽気なファッションセンスの持ち主だ。それと比べたら無難すぎるくらい無難なカラーリングだ。どこに面白さがあったんだろう、と?が浮かぶ。
その嵐のような出来事に頭が追いつかないまま、その方の名前をググったがヒットしない。あれはなんだったんだろう?と我々は混乱した頭を巡らせ、精霊ではないかという結論に落ち着いた。
もうすぐ鎖場、というところで精霊に再び出くわした。精霊の詳細がわかってきた。
石鎚山が大好きで、その日は508回目の登頂になるそうだ。それが地元新聞で取り上げられ、さらにはインスタでも有名な方だった。「鎖場頑張ろう!」と言って別れたが、出会うことなく山頂についてしまった。
山頂で精霊を探したが見当たらない。幻の精霊だったのかと諦めつつ、愛媛名物の鯛めしでお昼にした。
コーヒーブレイクに差し掛かる頃、天狗岳の方から精霊がこちらに向かってきているのが見えた。幻ではなかった!と喜んで今度はこちらから話しかけた。すると、「天狗岳一緒に行くよね?」とプランがすでに練られていた。
天狗岳を先導する姿は、まさに精霊だった。スタスタと物凄いスピードで進んでいき、508回目と1回目の差を痛感した。
登山スキルはもちろんすごかったが、尊敬すべきはそこだけではない。頼まずとも写真を撮ってくれたり、綺麗に見えるアングルや景色を堪能できるスポットを教えてくれたりと、石鎚山で楽しんでほしいという、石鎚山と登山者への愛に溢れていた。そして、モタモタな私に合わせてゆっくりと導いてくれたり、途中で怖くなって立ち止まってしまっていた他の登山者にも声をかけたりと、温かい優しさがさらっと出てくる姿が素敵だった。
今日も石鎚山にいるのかな?と考えると、思わず微笑んでしまう。次石鎚山に行くときも、出会いたいところだ。