「#」を何と読みますか?
どこの業界にも会社にも独特の専門用語や符牒があるもので、僕も大学を卒業して放送局に就職したときに、たくさんのよく分からない言葉に出会いました。
その中でも特に不思議だったのが、番組(特にドラマなどの続きもの)の回数を示すのに「シャープ1」「シャープ2」などという表現が使われていることでした。
台本の表紙にも書いてありましたし、会話でも例えば、「あの番組、シャープ3ぐらいまでは良かったけど、その後グダグダになってきたね」などと使います。
初めてその表現を聞いたときには、シャープって何? 「半音上げる」じゃないの?と思ったものですが、しかし、十年ぐらい後にその謎が解けました。
イベントの仕事でハワイに行っていた時、連日行われる現地人スタッフとのミーティングに提出されたレジュメに #1, #2 という記載を発見したのです。
で、会議での彼らの発言を聞いていると、なんと彼らは number one, number two と発音しているではないですか!
そう、アメリカでは #は number と読むんです。
ナンバーって No. って書くんじゃないの?と思われた方も多いでしょう。はい、No. という表記も使われます。一方で # もよく使われるのです。
日本のテレビ局はそれを真似して #1, #2 と言い出したのですが、なーんだ、読み方が違っていたんですね(笑)
そもそもシャープは # じゃなくて、♯ じゃないですか。それが分かっていなかったんです。
# と ♯ の違い分かります? シャープは横の線が水平ではなく斜めになっているでしょ?
何故だか分かります?
♯ は五線譜に書き込む記号です。五線譜には水平の線が5本並んでいるので、そこに # を書き加えようとすると、五線譜の罫線と重なってしまって読み取りにくいんですよね。斜めになっているからこそはっきり見えるわけで、だから、シャープは何が何でも # ではなくて ♯ でなくてはならないのです。
さて、# については、最近では hashtag あるいは hash という読み方が広がっています。そう、インターネットで分類や整理のための名前をつけるときに頭に # をつける習慣ができたことによるものですよね。
つまり、順番やランキングを示す # は number、インターネット上の分類用語としては hashtag と読まれるわけです。
ところで、先だって祝日の夜に具合が悪くなって救急相談センター #7119 に電話した話(この件についてもいずれここに書きます)をアメリカ人に話していたら、「その # は hashtag ではなくて pound と読むんだ」と訂正されてしまいました。
日本では自動応答の電話などで、「最後にシャープ・キーを押してください」などと言っていますが、僕としては「他の日本人と違ってこれがシャープではないことは知っているぞ!」と誇らしく語ったつもりだったのですが、なんと、キーボード上の記号としては hashtag ではなく pound と読み、# と書かれたキーのことは pound key と言うのだそうです。
hashtag でないのはともかくとして number でもないとは! そりゃそうですよね、number key ではわけが分かりません。だって、0 から 9 も全部ナンバー・キーですから。
しかし、よくよく調べてみると、これは主にアメリカの言い方らしいです。イギリスでは pound と言えばまず通貨 £ (ポンド、と我々は発音していますが)ですもんね。じゃあ、#キーのことは何と言うか?── hash key なのだそうです。
ああ、ややこしい。
いっそのこと日本ではこれら全てを「井桁記号」と言うことにしませんか?
それでよろしければ井桁キーを押してください(笑)