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熊から猫まで

人の名前や職業の後に付ける「公」って、何なんでしょうね?

江戸落語には熊さんとか八っつぁんとかいう人たちがよく出てきます。時に彼らは落語の中で熊公くまこうとか八公はちこうとか言われたりもします。「やい、熊公」なんてね。そう言えば、渋谷には忠犬ハチ公がいます。

この「公」って何なんだろうとふと気になりました。

「公家」の「公」ですかね、あるいは「公爵」の「公」? ちなみに公爵は爵位の最上位です。いずれにしても、元々は偉い人につける敬称であったようです。 たとえば、「伊藤博文公」などと。

それを公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵のいずれにも該当しない、近所の熊さんや八っつぁんに当てはめて親愛の情を表したものが「公」であると、辞書には書いてあります。

なるほど。

そして、「熊公」「八公」という固有名詞ではなく、一般の人称代名詞として、二人称の敬称である「貴公きこう」というのもありますね。あるいは、もう誰も使わなくなりましたが、かつては友だちのことを「ダチ公」と言う人もいました。

伊藤博文は実際に公爵であったとのことですが、公爵だから伊藤博文公と呼ばれたわけではなく、そんな爵位のなかった古い時代の人でも、例えば菅原道真などはよく「菅原道真公」と言われます。

で、それを略して「菅公」などとも言います。

そう聞いて、私と同じ年輩の人なら何かピンと来たかもしれません。

そう、私たちの時代、学生服のトップ・ブランドはカンコー学生服でした。私が中学に入学した時に買ってもらったのもカンコー学生服で、このメーカーの人が中学の入学説明会の時に学校に来ていたのを憶えています。

だから、私だけでなく、私の中学では全員がカンコー学生服で、市内の中学もほとんどそうだったのではないかと思います。

当時はカンコーって何だろう?と思っていたのですが、このカンコーが実は「菅公」だったのです。

なんで学生服が道真公かって? そりゃあなた、菅原道真公は後に学問の神様になって大宰府天満宮に祀られているではありませんか。

熊さん、八っつぁんから伊藤博文、菅原道真まで、随分幅が広いなと思うのですが、先ほどあったように忠犬ハチ公などと、これは親しみを込めて動物に使うこともあるのです。

ハチ公は固有名詞ですが、犬全般を「ワン公」、猫全般を「ニャン公」と呼ぶのも同じです。それらが訛って「わんこ」「にゃんこ」となったわけです。

さて、先ほど引いた辞書をさらに読み進めると、「公」は親愛の情だけではなく、軽い侮蔑を込めるときにも使われるとのこと。

この例は「先公」、「ポリ公」でしょうね。先生やポリスを蔑んで言うときに使う表現です。

私のかつての上司は交通違反で警官に止められた時に、一時停止違反か何か割合軽微な違反だったらしいのですが、ひたすら平身低頭謝って謝って謝り倒したらなんか許してくれそうな雰囲気になったそうです。

それで漸く無罪放免かと思った瞬間に、「おまわりさんが」と言うべき所でうっかり「ポリ公が」と言ってしまい、結局切符を切られたとのこと(笑)

「公」という漢字は人名に使われると「きみ」と読まれるように、もともとは「君」「あなた」という意味だったのだそうです。

なーんだ、結局「○○公」って「前田くん」とか「田中くん」とかいうのと同じようなものじゃないですか。そう考えると「ポリ公」だって「ポリくん」みたいなもんで、警察官を「ポリくん」て呼ぶのも可愛くて良いじゃないかと思ったりもするのですが…。

まあ、でも、いずれにしても、おおやけの場でものを言うときには充分注意しましょうね(笑)

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山本英治 AKA ほなね爺
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