雨ときどき止む
最近、天気予報で「雨ときどき止む」っていうのがあるじゃないですか。いや、ひょっとしたらすでに最近とは言えないくらい前からある言い回しなのかもしれませんが、少なくとも私の子供の頃にはなかった予報です。
最初に聞いたときはなんじゃそりゃ!?と思いました。そうは思いませんか?
だって、そりゃぁ、雨はときどき止むでしょうよ。もちろん朝から晩まで降り続ける日もありますが、それは梅雨とか台風とかのときで、それ以外の雨は大概ときどき止むのですよ。
と、まあ、最初はものすごく違和感を覚えたものですが、何度も聞いているうちに、なんか少し気に入ってきました。
雨ときどき止む──って、なんか一篇の詩のようではありませんか。
そう、雨はときどき止むのです。
「止まない雨はない」というほど固くて強い表現ではありません。
「雨止んで晴れ渡る」というほど晴れやかな表現ではありません。
ただ、雨はときどき止むのです。
雨が降っていても、大体はときどきふっと止むのです。
まるで人生のようではないですか。
「晴れときどき曇り」とか「曇り一時雨」とか、天気予報というものは通常は体言(名詞)で終わるものです。それがここでは用言(動詞)で終わっているところに不思議が宿っていると思いませんか? そこに何か意思のようなものを感じてしまいませんか?
晴れにも曇りにもそれほど明確な終わりはありません。でも、雨はいつか止むのです。たとえそれがときどきに過ぎなくても。
ところで、「曇りときどき雨」という予報はありますが、「雨ときどき曇り」という予報はありません(多分)。「○○ときどき△△」という表現は、△△よりも○○のほうが明らかに時間が長いということを表しています。
それを考えると、「雨ときどき止む」は、なーんだ、「雨ときどき曇り」と同じか、と思ってしまいます。
でも、「雨のち晴れ」や「雨ときどき曇り」が、雨が止んだあとどうなるのかに気を取られてしまった表現であるのに対し、「雨ときどき止む」はあくまで雨に焦点を当てており、雨が止んだあとのことには触れていません。
だからこそ、逆に私はこの表現に、ある種のメッセージを感じてしまうのです。
なんであれ、雨はときどき止む。そこから先はお前次第だ、と。