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ぶりの繁殖

若者ことばで「ぶり」と「以来」がごっちゃになってきていることには気づいていました。でも、そこまで広がってきたか!と驚くことが結構あります。

最初に驚いたのは2019年7月に映画『いちごの唄』を観ていて、そんな台詞が出てきたときでした。

主人公の千日(石橋静河)が中学の同級生だったコウタ(古舘佑太郎)に「中学ぶりだね」と言うのです。

なんで驚いたかと言うと、この映画の脚本家はかの有名な岡田惠和さんだったからです。岡田さんは 1959年生まれですから、この映画公開の年には還暦を迎えたはず。

そんな世代の岡田さんでさえ2つの言葉を混同したのか? あるいは、自分は使わないにしても若者言葉として採用したのか?

実はつい先日も今泉力哉監督が twitter で「中学生の時ぶりに読んで」とつぶやいているのを読んでショックを受けたばかりです。

今泉監督は 1981年生まれの40歳です。この用法は若者に限らず 40歳ぐらいにまで広がってきているんでしょうかね?

今泉監督も自ら脚本を書く方なので、脚本の中の人物の会話なら全く驚いたりショックを受けたりしないのですが、自分自身の会話でもそうなのか!と驚いた次第。

まあ、逆に私のほうが新しい表現にいつまでも抵抗する固陋な年寄りだと言われればそれまでなんですけどね(笑)

本来であれば「以来」は最後に行なったのがいつだっかを示し、「ぶり」は最後に行なってからどれくらいの期間が経っているかを示します。

おんなじようなもんだろ、と思う人もいるかも知れませんが、

「以来」の前は「時点」、「ぶり」の前は「期間」

なのです。

ぶりの繁殖

例えば、今日が木曜日だったとして、先週の木曜日に入浴してから一度もお風呂に入っていなくて、今日久しぶりに入ったとしたら、それは「先週の木曜以来」であり「一週間ぶり」なわけです。

中学を卒業してから一度も会っていなかった元同級生に会ったら、それは「中学以来」ではあっても、「中学ぶり」というのは、ほんとはおかしいのです。「ぶり」を使うのであれば「10年ぶり」などと言うべきなのです。

何年空いたのか定かでない場合には「久しぶり」という曖昧な表現が使えます。

「平成25年以来」であったとしても「平成25年ぶり」では、何年以来なのか何年ぶりなのか、さっぱり解りません。いや、解らんかったんですよ、昔の日本人は(笑)

私は 2004年から2年間単身赴任をしていたのですが、2006年に地元に戻り、以前行っていた理髪店に久しぶりに行ったところ、いつも切ってくれていた技術者のお兄さんにこんな風に言われました。

「2004年ぶりですね」

私はもうちょっとでこう言うところでした。

「俺はヨーダか!?」

思えば、もうそのころから「ぶりの繁殖」は始まっていたようです。

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山本英治 AKA ほなね爺
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