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ことばと生き方──ことばに対するこだわり

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若い頃から「ことば」というものに興味があり、2001年から2018年まで“ことばのWeb”を主宰していた流れで書いた文章を集めています。
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#言葉

閲覧数 4000 を超えて、クチコミについて考えてみた

僕がとある店について書いた Google Maps のクチコミの閲覧数が 4月30日に 1000 を突破した。 ご存じない方も多いと思うが、あそこに何かを書いてその閲覧数が一定数を超えるとメールで知らせてくれるのである。 実は 1000 を突破できたのは、僕なりの書き方のコツみたいなものもあってのことだと思っている。そのことについて、少し書いてみようと思う。 Google Maps のクチコミと言えば、悪意のある事実無根の書き込みをされたとして、先日医療関係者が集団訴訟

好きな言葉──我々の異性は女性です

先日、嫌いな言葉について書きました ↓ ので、今回は好きな言葉について書きます。 僕が、恐らく中学時代だったと思うのですが、思春期に出会っていたく感動した表現──それは「我々の異性は女性です」でした。 おぼろげな記憶で書いているので間違っているかもしれませんが、多分1970年代初頭の資生堂の男性化粧品ブランド「ブラバス」の CMコピーでした。(追記註:ブラバスだと思い込んでいたのですが、調べてみるとどうやら資生堂は資生堂でもブラバスではなく MG5 のコピーだったようで

ポケモンの名前に見る和英翻訳の妙技

先日、英語の先生と話しているときに、ポケモンの日本語名と英語名の話題で盛り上がったので、そのことについて書きます。 その先生はユダヤ系アメリカ人で、来日して日本語の翻訳者になるべく勉強をしている人です。 彼は小学校時代ポケモンカードの収集に熱中したのだそうです。僕は年が年だけにポケモンのことは近年までほとんど何も知らなかったのですが、数年前から iPhone で Pokémon GO をやっています。僕がそのことを話したのが発端でした。 そこで、「君の一番のお気に入りの

これって徳島弁?(どなたか徳島県出身の方いらっしゃいませんか?)

僕の母方の祖母は徳島県出身で、大阪に出てきてからもかなり徳島弁(阿波弁)の語彙で喋っていたように思うのですが、中に時々「これってほんまに徳島弁?」と首を傾げたくなるような単語や表現があって、もし note を読んでいる人の中に徳島出身の方がおられたら訊いてみたいなと思ってこの記事を書きました。 祖母は明治時代の末に徳島で生まれ育って、徳島で結婚し、二女を設けましたが、夫とは早くに死に別れ、まだ幼かった長女と次女(僕の母)をつれて大阪に出てきました。 そして、僕の母が結婚し

あなたのお尻はいくつありますか? ~翻訳は難しい

ここ数年、僕は家でヨガをやっています。最初は YouTube の動画を見ながらやっていたのですが、今はアプリを入れています。で、このアプリの日本語が微妙に気持ち悪いのです。 元々は英語で作られたアプリを日本語化したものらしいのですが、時々翻訳のミスがあって「足」と言うべきところを「手」と言っていたりするのです。そんなもん、動画を見てりゃ分かるだろうと言われるかもしれませんが、画面を見ながらだとできないポーズもたくさんあります。 だから、画面を見ずに音声だけ聞いてやっている

言葉の音に引っ張られる

言葉の響きに引っ張られて意味を間違えてしまうことってありますよね? たとえば、「はんなり」「あざとい」「おっとり刀」「可及的速やかに」「すべからく…すべし」「嗚咽」「煮詰まる」などについては、前に note に書いたとおりです。 これらの言葉が本来の意味ではない意味に取り違えられてしまうのは、違う意味の単語に音が似ているからではないか、と私は考えています。 今回は他の例についても書いてみたいと思います。 「手をこまねく」と「手招き」文化庁が発表した「平成20年度『国語

【国語】立ったり座ったり問わなかったり

立ち振舞い一人ひとりの人間はそう簡単に変われないものですが、全体として人々の言葉は結構変わって行くものです。そういうわけで人間、いつの時代でも、年を取ってくると大体は若い人の言葉遣いが気に入らなくなったりするものです。 これは言葉遣いだけの問題ではなくて、「最近の若い者は…」という表現はすでにギリシャ・ローマ時代の文献にも書かれていたらしいですから。老人はずーっと不満なわけです(笑) 私もご多分に漏れず、新しい日本語のいろんな部分になんとなく違和感を覚えて、ここにもいくつ

ぶりの繁殖

若者ことばで「ぶり」と「以来」がごっちゃになってきていることには気づいていました。でも、そこまで広がってきたか!と驚くことが結構あります。 最初に驚いたのは2019年7月に映画『いちごの唄』を観ていて、そんな台詞が出てきたときでした。 主人公の千日(石橋静河)が中学の同級生だったコウタ(古舘佑太郎)に「中学ぶりだね」と言うのです。 なんで驚いたかと言うと、この映画の脚本家はかの有名な岡田惠和さんだったからです。岡田さんは 1959年生まれですから、この映画公開の年には還

言葉の中の男と女

ベルリン映画祭が男優/女優の区別を廃し、最優秀男優賞と最優秀女優賞を統合して最優秀主演賞ひとつにするのだそうです。Politically correct! ジェンダーに対する配慮。時代の要請ですね。 でも、となると俳優さんたちにとっては、今まで男女別に競っていたのがライバルが倍になるわけで、それはそれで大変だなと思います。 最優秀主演賞と並んで最優秀助演賞というのもできるらしい(今までは主演/助演の別はなかったのかな?)ので、これでプラスマイナスゼロとも言えますが、主演は