マガジンのカバー画像

ことばと生き方──ことばに対するこだわり

94
若い頃から「ことば」というものに興味があり、2001年から2018年まで“ことばのWeb”を主宰していた流れで書いた文章を集めています。
運営しているクリエイター

#発音

米国人がやる謎のカニ・ポーズを見たことありますか?

英語を再勉強し始めたら、今まで習ってきたことと全く違う英語にたくさん出くわしました。 「Tはサイレント!」の怪たとえば僕らは often の t は読まないと教えられてきました。当時の学校英語でオフトゥンなんて発音したら、教師から「Tはサイレント!」と注意され、これがもしテストだったら減点されたはずです。 ところが、僕が会う多くの English speaking people が t を発音しているじゃないですか。 実は t を読む例に今まで一度も出くわさなかったわけ

ニッポンの「ン」、Japan の "n"

日本人が苦手とする英語の発音はたくさんありますよね? 例えば r と l の区別? あるいは曖昧母音? いや、もっと難しいのありますよね? それは日本人が苦手とする n の発音です。 え? いや、別に苦手じゃないですよ。n でしょ? ナ行でしょ? 舌を上あごにくっつければ良いんでしょ?──って? ほんとにそんなに単純? 英語でも日本語でも、ひとつの文字が必ずひとつの音を表しているわけではありません。音声学の専門家に言わせると、例えば英語の場合、同じ l でもそれが語頭に

外来語のカタカナ表記を考える

先日、ウチの番組を見ていたらテロップに「シラップ」と書いてあって驚きました。 「シロップ」じゃないのでしょうか? 少なくとも僕らは子供の頃からシロップと言い習わし、聞き慣れてきました。 誰かが「英語の発音はシロップではなくてシラップだよ」などと言い始めたのでしょうか? 確かに綴りは syrup なので、シロップよりはシラップのほうが近いのかもしれません。 そういうことは時々起きます。 例えばアメリカ合衆国第40代大統領のロナルド・レーガン(Ronald Reagan)

エバラギのエシダさんとカンデンな発音

もう随分昔の話ですが、私の会社の先輩で茨城県出身の石田さん(仮名)という方がおられました。そして、この石田さんには「エバラギのエシダさん」という異名がついていました。 こんなことがありました。 石田さんがアルバイトの女性にコピーを頼みました。A4サイズで1枚。 不幸にしてその女性は今まで事務のバイトをやったことがなく、しかもその日がバイト初日でした。彼女は受け取ってコピーを取りに行ったのですが、いつまでたっても帰ってきません。漸く帰ってきて言うには、 「石田さん、A4

いとはんとこいさん

日本語の多彩な敬称日本語は敬称が非常に豊富な言語ではないでしょうか。 陛下・殿下・閣下・猊下・先生など、相手の地位や身分、職業などによって使い分けるものがあります。これ以外にも会社の役職(社長・専務・部長など)や軍隊の階級(少尉・軍曹など)、貴族の爵位(公爵・侯爵など)も同じように敬称として使われます。 この手の単語はどこの国にもあるのかもしれませんが、上に挙げた全てが「名前+敬称」という形でも使えるし、敬称単独でも使えて、しかも、偉くなればなるほど名前なしの敬称単独で呼

日本人が発音できなかった音 ~おばあちゃんの外来語

ジェが言えない日本人って、昔はジェって言えなかったんですよね。 え、何それ?って言われるかもしれませんが、でも、そうなんですよ。かつて長年“ことばのWeb”を運営していたおかげで気がつきました。 何かと言えば、つまり、ジェが言えないから jelly がゼリーになっちゃたんですよね。 ジェが発音できないから、ゼネラル・モーターズとかゼネラル・フーヅとかゼネラル石油とかいう名前の会社があったわけです。ウチのおばあちゃんなんかゼントルマンって発音してましたから。 ジェが言え