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本公演稽古、身体

本公演、清水邦夫の「狂人なおもて往生をとぐ」の稽古。

出役の俳優が、はな役の女優に、官能的に触れるシーンがある。
彼は演劇を初めて日が浅く、まだ身体が、役同士ではなく、役者同士のものとしての反応を見せていた。
今回は、その辺りのウソをどう取り除いていくかというアプローチで演技指導をした。

1 椅子に体重をあずける
女優に形式的によりかかることはできても、身体に力が入り、リラックスできていない。何故その人物がそのような行動にうつったのか分からない。まずは椅子に体重をあずけさせた。これなら難なくできる。

2 女優に接する
椅子のように体重をあずけてみる。それでも力は入っている。抱きしめる、肩に顎を置く、といった形を指定しながら、体温を感じるように、欲求を満たすために、という内面にまで踏み込む。その仕組み自体は納得。

3 セリフをつけてシーンを通す
セリフをつけると、すぐにそのセリフの説明になってしまう。女から身体は離れ、むしろ距離が開く。ここで、先ほどの肩に顎を置く、という姿勢でセリフを発させてみると、今までのような演説めいた口調は消え、甘ったるい声色になり、耳元で囁くような仕草もしてみせた。2人の関係性が見えてきた。
俳優はその変化に気付き、「無意識の意識化」が1つできたのではないかと。

というようなアプローチで、上手く段階を踏んで、というよりは、あの手この手で、といった感じ。
演技指導は難しい。

関係性というのは、セリフが無くとも、顔や腰の距離感や、触れ方で見えるもの。
今回はセリフの多い芝居だが、特にこの身体的なアウトプットを大きくして、新たな舞台に仕上げたい。

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