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穂高を愛した男、宮田八郎さん

突然だけれど、うちにはテレビがない。

2013年くらいの引っ越しからテレビを捨てた。
2011年の震災以降、テレビメディアの価値が一気にぼくの中で
無くなってしまったことと、それ以前から広告業界にいながらテレビの
つまらなさに辟易していたことが相まって捨てたのだ。

なので、テレビを見るとしたらたまーに、実家に帰るときか、外食する蕎麦屋なんかにテレビがあるときくらい。

前置きが長くなってしまったけれど、先週末、妻の実家に家族でお邪魔した。たまたま茶の間でNHKBSがかかっていた。

さあ、早いけど今夜は寝ようかなそろそろ...と思っていたら、いきなりその番組は始まった。

「BS1スペシャル「穂高を愛した男 宮田八郎 命の映像記録」だ。
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/3115733/index.html

ぼくはヒマラヤのコーヒーをはじめ、アウトドア関連の仕事をしているが、
宮田さんとは直接面識はない。
とはいえ宮田さんや彼のハチプロダクションのことはもちろん知っていた。

北アルプスは穂高岳山荘の小屋番であり、山岳レスキューのプロであり、そして穂高を撮影し続ける映像クリエイター。
その在り方、生き方自体に、特に映像クリエイターとしての情熱に僭越ながら興味があった。

ぼくにとっては”生きるチカラ”に溢れた山岳映像作家として文字通り雲の上の人。2018年に海の事故で亡くなったと知ったときには、いつかお会いしたいと思っていただけに何とも言えない気持ちになった。

そしてついに出会えた。気がした。
今回のこのドキュメンタリー番組で。

予想をはるかに通り越して、宮田さんの穂高への想いが半端なかった。
山小屋の仕事、レスキューの仕事、映像クリエーター。
どれをとっても穂高への、山への愛に溢れている。

こんなにひとつのこと(場所)を愛し続けることができる人が羨ましい。
かっこいい。

山という自然への畏怖と愛。その自然を楽しむ登山者への愛。共に働くスタッフへの愛。そして家族への愛。

愛に溢れた人だったんだね。本当に。
お会いしたかった...

亡くなった登山家の谷口けいさんの死に向き合う中で宮田さんが
残された言葉。

「生きるために山に登る」

登山者にとって死はある意味で身近な存在。
人はそれでも山に登る。
それは生きるチカラを実感する行為、生きることそのものなのかもしれない。

よく山は人生に例えられるけれど、本当にそうなのだなと改めて感じ入った。
人は「生きるために人生を歩む」。
生きるチカラを実感するために。

ぼく自身もあと少ししたら宮田さんと同じ歳になる。
このことを心に刻みたいと思う。

宮田さん、本当にありがとうございました。


(写真は小学生の家族登山で行った涸沢)

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山本喜昭(野外文化活動家)
アウトドアとスローライフのレーベルYAMANOVA主宰。生きるチカラ探究者。ネパールの女性の雇用を生み出し森を育てるナマステヒマラヤコーヒー販売中。