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規定投球回到達&2桁勝利を目指す小島和哉が解決すべき「対左打者の投球」
(ヘッダー画像:球団公式Twitterより)
【9/9 M2-1F】
— 千葉ロッテマリーンズ (@Chiba_Lotte) September 9, 2020
先発の小島投手が7回1失点の好投で5勝目!
藤岡選手は決勝の2点適時二塁打を放ちました!
▼本日の成績はこちらhttps://t.co/YD6pmtYQDk#chibalotte pic.twitter.com/sq8ThvmZeo
どうも、やまけんです。
3月26日にNPBのペナントレースが開幕して、もうすぐ2ヶ月が経とうとしています。期待の若手選手や新加入選手の活躍に胸を躍らせたり、あるいは低調な成績の主力選手を憂いたりと毎日の結果に一喜一憂する野球ファンの方も多いのではないでしょうか。
今回は、多くのロッテファンから「次期左腕エース候補」と期待をされながら、あと一歩殻を破れずにいる小島和哉投手について書いていきたいと思います。
浦和学院高校から早稲田大学を経て3年目のシーズンを迎えた小島投手。今季は開幕から先発ローテーション入りしたものの、6試合で34回を投げ1勝1敗 防御率4.24という成績。2021年の抱負に「規定投球回到達」と「2桁勝利」を掲げている投手の成績としてはやはり寂しいものがあります。
先発投手は、1年間ローテーションを守り切った場合、約23試合から24試合に先発する計算になります(年間143試合÷ローテーション人数6人=23.833…)。5月9日までに6試合に先発した小島投手は、このままローテーションを守った場合、残り約17試合から18試合程度の先発登板機会があると考えられます(現在、他の先発投手との兼ね合いで一軍登録抹消中)。
今季の抱負である規定投球回到達にはあと109回、2桁勝利にはあと9勝が必要となります。残りの先発登板機会を18試合と仮定した場合、毎試合6回以上を投げ(109÷18=6.055…)、2試合に1試合で勝利投手にならなければ抱負に掲げた規定投球回到達と2桁勝利は達成できません。
今季は、規定投球回到達と2桁勝利を目指す小島投手の課題と解決策を具体的に考察したいと思います。
昨季、規定投球回到達に何が足りなかったのか
小島投手は昨年1年間先発ローテーションを守り、20試合に先発。113回1/3を投げ、7勝8敗 防御率3.73という成績を残しました。大卒2年目にして故障や体調不良がなく、1年間先発ローテーションを守り切ったことは十分評価に値するものの、規定投球回到達まであと6回2/3、2桁勝利まであと3勝と悔いが残る成績だったことも否めません。
ここでは、昨年の小島投手の投球成績を規定投球回に到達したセ・パ両リーグの投手と比較し、規定投球回に到達しなかった小島投手に何が足りなかったのかを振り返りたいと思います。
表を見ていただくと、小島投手の昨季の各種成績・指標は規定投球回に到達した投手の平均に及んでいないことがわかります。中でもP/IP(1イニングあたりの投球数)、BB/9(与四球率)、WHIP(1イニングあたりの許出塁数)の数値がとりわけ劣っていることが見て取れます。
昨季、規定投球回に到達した投手の中で小島投手よりP/IPが高いのは福岡ソフトバンクホークスの千賀滉大投手(17.32)のみ。また、小島投手よりBB/9が高いのも千賀投手(4.24)のみです。しかし、千賀投手の成績を深掘りすると、H/9(被安打率)が6.69、K/9(奪三振率)が11.08(規定投球回到達者中トップ)となっています。
千賀投手は与四球での許出塁が多いため投球数が嵩むものの、被安打による許出塁を少なく抑え、相手打者から多くの三振を奪うことで失点を回避し、多くの投球回数を消化していると言えます。
小島投手と同じロッテで規定投球回に到達した石川歩投手、美馬学投手の成績を詳しく見てみると、両投手ともH/9が9.00を超えるなど相手に多くの安打を浴びたものの、BB/9は1点台を記録しており、与四球による許出塁を極力抑えていたことがわかります。
千賀投手と石川投手、美馬投手では投球タイプが違うことが伝わったかと思いますが、奇しくもWHIPは千賀投手が1.21、石川投手が1.23、美馬投手が1.26で、それぞれ近い数値を記録しています。
小島投手は昨季WHIP1.35を記録しましたが、今季少しでも多くの投球回数を消化して規定投球回に到達するためには、相手打者への許出塁を極力減らすことが求められます。具体的には、被安打・与四球を減らし、WHIPを1.30未満に抑えることがひとつの目安になると言えそうです。
許出塁を減らすことで投球数の減少や失点リスクの減少に繋がり、投球回数の消化に繋がると考えられます。また、失点を防ぐことでチームの勝利を手繰り寄せ、結果として自身も勝利を重ね、目標である2桁勝利の達成に近づくと言えるでしょう。
今季ここまでの投球で改善は見られたか?
ここまで小島投手の昨季の投球成績を振り返り、規定投球回数到達という課題をクリアするためには被安打や与四球などの許出塁を減らすことが求められると書きました。しかし、冒頭にも書いた通り現状の成績にはまだ物足りなさを感じてしまいます。
ここまでの6登板の投球成績を見てみても、昨季から劇的に改善が見られる点はありません。全ての試合で7回に突入するまでに交代を告げられており、投球回数の消化という点では特に物足りなく感じます。
昨季と今季の各種指標を比較しても、ほとんど現状維持といったところで、このままでは今季抱負に掲げている規定投球回到達と2桁勝利は厳しいのではないかと言わざるを得ません。
1年間先発ローテーションを守り切ること自体が初めてだった昨季は、この成績でも及第点が与えられ、来季(今季)以降のより一層の飛躍が期待されたかもしれません。しかしながら、今季の小島投手は左腕エース候補として期待される位置にいるはずで、それだけ期待の大きかった投手に昨季からの改善傾向が見られないことはファンとして非常に寂しく思ってしまいます。
小島投手の投球について深掘りしてみると、成績の伸び悩みに繋がっているのではないかと思わされる興味深い点が浮かび上がりました。左右打者別成績に目を向けてみたいと思います。
左右打者別成績:左打者に弱いサウスポー?
小島投手の今季の左右打者別成績に目を向けると、右打者に対しては被打率.200、被OPS.653とかなり抑えているのに対し、左打者に対しては被打率.339、被OPS.924と打ち込まれており、右打者よりも左打者を苦手としていることがわかります。
野球界では「左投手は左打者を抑えることの方が得意である」という言説が一般論のように語られることがありますが、こと小島投手に関してはその事例に当てはまらない投手であると言えます。
このまま左打者を苦手としていては、抱負に掲げる規定投球回到達も2桁勝利も達成が難しいと言わざるを得ません。この「左打者への投球」という課題をクリアできるかどうかが、小島投手がもう1ランク上の投手となれるかどうかの分水嶺といっても過言ではないでしょう。
では具体的に、左打者に対しての投球のどこに課題があるのでしょうか?さらに深く迫ってみたいと思います。
球種配分:左打者に使えない「伝家の宝刀」
今季の小島投手の球種配分を見ると、ストレート、カットボール、チェンジアップの3球種で投球の95%以上を占めており、基本的にこの3球種で投球を組み立てています。中でもチェンジアップは被打率.167、空振り率24.7%を記録しており、小島投手にとっての伝家の宝刀と言えるボールでしょう。
しかし、左右別の球種配分に目を向けると、左打者に対してチェンジアップをほとんど投げていないことがわかります。
「SPAIA」より、画像クリックで引用元にアクセスします。
右打者に対して28.4%投げているチェンジアップを、左打者に対してはわずか0.7%しか投げていません。左打者に対してはストレートとカットボールの2球種で投球割合が90%を超え、打者に狙いを絞られやすくなり、結果として被打率の悪化につながっているのではないかと考えられます。
実際に小島投手のチェンジアップの動画を見てみましょう。
小島投手のチェンジアップは、ホームベースの一塁側(右打者の外角方向)に逃げながら沈む軌道を描くボールであるため、右打者からは空振りや凡打を誘いやすくなる反面、左打者に対しては内角に甘く入ったところを痛打されるリスクがあり、それを恐れてほとんど投げられないのではないかと考察されます。
投手ヒートマップ:左右で極端な違いが?
次に、投手ヒートマップに目を向け、小島投手が左右の打者に対してどのコースに多く投げているかをいるかを見てみたいと思います。
「SPAIA」より、画像クリックで引用元にアクセスします。
※ヒートマップの閲覧には無料の会員登録が必要です。
右打者に対してはストライクゾーン全体が赤くなっており、高低内外を幅広く使って投球を組み立てていることがわかります。一方、左打者に対してはストライクゾーンの外角のみが赤くなっており、外角中心の投球となっていることがわかります。
先程の球種配分と合わせて考えると、右打者に対してはストレート、カットボール、チェンジアップの3球種を高低内外に散りばめることで的を絞らせず、被打率を低く抑えられていると言えます。一方、左打者に対しては外角にストレートかカットボールの2球種が来ることがほとんどで、打者からすればかなり狙いを絞りやすくなると言えるでしょう。
また左打者に対しての与四球も、外角中心に攻めたところを見極められるケースが多く、「外角にボールが集まる」と踏んだ相手打者に見切られているのではないか?と感じるケースがよく見受けられます。
3月30日 vs楽天戦 4回 島内宏明選手に対しての与四球
4月28日 vs西武戦 5回 森友哉選手に対しての与四球
昨季との比較:スライダーの投球割合に変化が?
今季は左打者に打ち込まれている小島投手ですが、一方で昨季の左右打者別成績に目を向けると、右打者に対しての被打率が.253、左打者に対しての被打率が.255と左右の打者に対しほぼ同じ成績を残しています。昨季に関して言えば、小島投手は左打者を特別苦にしていなかったと言えます。
昨季と今季の小島投手の投球を比較すると、スライダーの投球割合に変化が見られます。今季のスライダーの投球割合は2.7%と非常に低くなっていますが、昨季は9.6%の割合で投げており、被打率.151を記録した優秀なボールです。今季はスライダーの投球割合が減少した分、カットボールの投球割合が約7%上昇しています(20.5%→27.4%)。
「Baseball LAB」より、画像クリックで引用元にアクセスします。
昨季の投手ヒートマップを見てみると、今季同様左打者に対しては外角中心の投球をしています。同じ外角中心の投球でも、昨季は左打者から逃げるカットボールとスライダーの2球種を有効に使い分けながら打者を打ち取っていたと考えられます。
今季は小島投手の意識的、あるいは感覚的な問題で昨季ほど自信を持ってスライダーを投げられなくなったのか、あるいはバッテリー間の打ち合わせ等で意図してスライダーを投げない方針にしているのか、真相は定かではありませんが、今後の左打者攻略のヒントとなりそうです。
実際に、5月16日に小島投手がイースタンリーグの読売ジャイアンツ戦で先発登板した際、左打者に対してスライダーを投じる場面があり、課題解決に着手しようとしている様子がうかがえます。
5月16日 vs読売二軍戦 2回 保科広一選手に対しての投球
5月16日 vs読売二軍戦 2回 平間隼人選手に対しての投球
2球とも浅いカウント(初球)で投げており、かつボール球になっていますが、このスライダーがあることを意識させるだけでもカットボールやストレートの被打率を抑えられる可能性はあるだけに、昨季と同等以上の水準で安定して投げられるように調整していただきたく思います。
左打者への「サードピッチ」が鍵を握る
小島投手は左打者に対して
①チェンジアップを使えない
②内角を攻められない
③昨季使っていたスライダーの投球割合が減少している
ことが原因で打ち込まれ、現状の成績に繋がっている可能性が高いと考えられます。今後、規定投球回到達に向けて少しでも多くの投球回数を消化するためにも、左打者に対する投球には改善の余地があります。
今後、左打者を抑えるために、ストレートとカットボールを活かせるサードピッチ(第3の球種)の確立が求められるでしょう。そこで、小島投手の左打者に対してのサードピッチとして3つの球種が考えられます。
1つ目は右打者に対して高い空振り率を記録しているチェンジアップ。これを左打者に対しても投げ、ストレートとの緩急や落差で空振りを奪えるようになるのが理想ですが、既に書いた通り甘く入ったら痛打されやすいなどのリスクがあることも事実です。
2つ目は昨年まで左打者に対して投げていたスライダー。左打者から逃げる変化で、現在投げているカットボールと球速や変化量で差別化でき、空振りや凡打を誘える可能性があるボールです。しかし、配球的には依然外角中心となることが考えられ、外角への制球が今以上に肝を握ることになります。
3つ目として自分が推奨したいボールが、左打者の内角に食い込むツーシームです。外角へのストレートとカットボールが左打者に対する投球の中心となっている現状、相手打者は外角に狙いを定めて踏み込みやすい状況であると考えられます。そこでもし内角に食い込むツーシームを投げた場合、対応は容易ではないでしょう。
ツーシームに限らず、内角のボールは少しでも甘く入ると打者にとって絶好のチャンスボールとなってしまうリスクを孕んでいるため、容易に投げ込めるわけではありません。それでも、左打者に対して内角に食い込むボールがあると相手に意識させるだけで、外角のストレートやカットボールが今以上に活きるボールとなることも考えられます。
根拠なしに直感的にツーシームを推奨するわけではなく、小島投手は大学時代にツーシームを投げていたこと、またプロ1年目のオフにツーシームの再習得に挑戦していることもあり、サードピッチの3つ目の候補として挙げました。
(自分の投球は)もともと真っすぐ中心なんですけど、カウントを取る時のツーシームやカットボールで打たせて取れることが昨秋に比べれば多くなってきたのかなと思います。そういう意味でも真っすぐを良くするための変化球がいい感じになってきたかなというのはあります。
オフに入ってからは、吉井理人一軍投手コーチの指導でツーシームを試す日々だ。「少し手ごたえを感じているので、投げ込みというかしっかりと感覚をつかんで、試合で使えるようになったらいいかなと思っています」と、小島投手も新たな武器を手に入れようとしている。
プロ入り後、公式戦ではほとんど投じていないことから、プロの試合で使うまでの手応えを得られなかったのかもしれませんが、ツーシームをマスターすることができれば、投球の幅が広がり、対左打者の攻略にとって大きな恩恵をもたらしてくれるに違いないと自分は思います。
まとめ
小島投手が「左打者への投球」という課題をクリアした時こそが、今季抱負に掲げる規定投球回と2桁勝利に大幅に近付くときなのではないかと自分は思います。そのためにはやはり左打者への攻め方、さらに言えば変化球の使い方を見直すべきではないでしょうか。
上に書いたサードピッチ候補の球種もそれぞれにメリット・デメリットがあり、一軍の打者相手に投げるまでの道のりも一筋縄とは行かないでしょう。しかし、左打者に対する苦手意識克服のため、さらに規定投球回到達のための鍵は間違いなくこのサードピッチであると思います。
今季、残り想定される17試合から18試合程度の先発登板機会で、左打者に対する攻め方に変化は見られるのか、安定して6回以上投げられるようになるのか、そして勝利を積み重ねることができるのか?
ロッテファン、小島和哉ファンの方は観戦の際に是非注視してくださると幸いです。