バラフォンと「つながる」
アミドゥ、ヤクバは
幼い頃から楽器に触れてきた。
グリオの伝統を守るために、彼らのお父さんは、子供たちを学校に行かせなかった。学校で勉強をすれば、若者は都市に出て働きたくなる。それを恐れたのだという。
ジャンベ、バラフォン、ンゴニ、トーキングドラム、カリバス、笛(?)
西アフリカで使われる伝統楽器を自由に使いこなす。 その中でもメイン楽器はバラフォン。
バラフォニストとして世界的にもその評価は高く、各コンペティションでも彼の率いるチームは優秀な成績を納めている。
バラフォンというのは、西アフリカの木琴のような楽器。ころんころんとほっとするようなそれはそれは温かくて愛らしい音がする。
アミドゥは小さい頃から子供用のミニバラフォンが横にないと眠れないくらいに、バラフォンを溺愛していた。
お母さんは、そんなアミドゥを「バラニ」(小さなバラフォン)と呼んだそうだ。
アミドゥが時々、そんなバラフォンについて不思議な話をすることがある。
アミドゥはよく、バラフォンを弾くとき「自分とバラフォンが『繋がっている』」と表現する。
本当に不思議なのだが、私もバラフォンを弾いているとき、アミドゥかヤクバのどちらかから連絡が来ることがある。
ある日、アミドゥがなんとなくバラフォンが弾きたくない日があった。弟のヤクバにそれを話すと
「アミドゥ、僕も今日同じだよ。
なんか弾きたくないんだ。」
という答えが返ってきたそう。
二人がなんとなく大好きなバラフォンを弾きたくなかった、その日の夜。
アフリカの故郷、オロダラで二人の家のすぐ近くにあるヤクバの友人が腕に大けがをして片腕を切り落とさなければなくなった。幼い時からずっと一緒に遊んできた友達でそれはとても悲しかったそうだ。
そういう悲しいお知らせや嬉しいお知らせを、二人はバラフォンを通して事前に受け取ることが、ある。
また、ある日こんなできごとがあった。私たちが一緒に所属するプチョンの青少年のための施設の音楽チームKENEMAの練習中に、突然、バラフォンを支えているスタンドが壊れ、ガシャーンと大きな音を立ててバラフォンが床に落ちた。ひょうたんの部分がかけてしまって、どんなに作るのが大変か、高価なものかわかっているので、自分のせいではないとわかっていても、心の中で冷や汗をかいていた。
すると、アミドゥが
「バラフォンが、今この部屋の中にあった悪いものを全部持っていてくれたんだよ。だから、いいことだ。」と言った。
ピリリと張りつめていたチームの雰囲気が一気にほぐれて、私たちは練習を再開した。
グリオの中には、歳をとると占い師のように、予言をする力を持つ人もいるそうだ。
アミドゥは、自分はまだそこまで歳をとっていないし、まだいろんな経験をしていないため、そこまでの力はないという。
「歳をとって、おじいさんになったらもしかしたらできるかもね」と笑って言う。