吉持亮汰(元楽天)ドラフト答え合わせインタビュー全文公開!【前編】骨も腱も筋肉も……運命を変えたケガの実態
絶賛発売中の『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ1998-2022〈増補改定・完全保存版〉』では、NPBの現役から離れた6名のインタビューを行いました。
嶋基宏(元楽天、ヤクルト)、坂口智隆(元近鉄、オリックス、ヤクルト)、内海哲也(元巨人、西武)
白濱裕太(元広島)、寺島成輝(元ヤクルト)、吉持亮汰(元楽天)
アマチュア時代から取り上げてきたからこそできる、内容の濃い、プロ生活を振り返る「ドラフト答え合わせインタビュー」ができました。
noteでは本誌4ページに収まりきらなかった部分も含めた全文を前編・後編に分けて、公開しちゃいます!
【後編はここをクリックしてください】
●こんなはずじゃなかったプロ人生
――7年間の現役生活、お疲れさまでした。2015年秋のドラフトで楽天から2位指名を受けた際に描いたプロ野球人生と実際のプロ野球人生には大きな隔たりがあったと推察します。
吉持 そうですね。こういうプロ人生になるとは思わなかったですね。
――1軍出場は1年目の21試合のみ。ドラフト前後の期待値の高さを知る一人として、「吉持亮汰はこんなもんじゃない!」と思っていましたし、現役を終えたいま、「こんなはずじゃなかったのに……」というフレーズがどうしても口をついてしまいます。
吉持 自分もそう思います。こんなはずじゃなかったなと。
――ドラフト候補として自分の記事が載っている『野球太郎』を当時、読む機会はあったのでしょうか。
吉持 読んでました。いい評価をしてくれてましたよね。「うんうん、そうだよな。おっしゃる通りです」と同意しながら読んでいました。
――今日は当時の記事のコピーを持ってきました。
吉持 見せてください。
――能力値を示すグラフでは肩力と走力がともに最高値。「圧倒的な脚力」「出塁すれば二盗、三盗は当たり前のように走るエゲツない走塁はプロ向き」「投手として140キロ台を連発する強肩ぶり」といったように図抜けた足と肩を高く評価するコメントが目に付きます。
吉持 肩と足は自分のセールスポイントだと思っていました。自信がありました。
――50メートル5秒6というすごいタイムが世に出てますね。
吉持 大学4年生の時に5秒68が出たんですよね。取材で聞かれた時にそのタイムを答えたからだと思います。
――打撃面では「バットを短く持ってセンター返しを心がけ、ボール球を見極める選球眼のよさが際立つ」との評価です。
吉持 バットを短く持つようになったのは大学4年の春からです。ロッテの荻野貴司さんに憧れがあったので、短く持つスタイルを真似てみようと思ったんです。
――4年春に首位打者を獲りましたよね。短く持つことの効果を感じながらのタイトル獲得だったのでしょうか。
吉持 効果は感じました。バットが操作しやすくなりましたし、外のボール球を振らなくなりました。ボールに届かないと体が判断するのでバットが止まるようになったんです。
――「打撃では非力さが目立つが、コンタクト能力はある。プロのスピードに力負けしないスイングを身につけられるか」とも書かれています。
吉持 そうだよなと思いましたよね。
――「三拍子揃った即戦力内野手。打撃もいぶし銀で勝負強い」とのスカウト評も載っていますね。
吉持 いぶし銀のような選手になりたいという理想像はありました。つなぎの打撃ができて粘り強く、右打ちが巧い井端弘和さん(元中日ほか)のような。
――「いずれは日本屈指の韋駄天として球界に名を馳せる存在に」とあります。
吉持 自分もそのつもりでした。1軍でレギュラーを獲り、年間30盗塁以上をマークできるような三拍子揃った選手になる。そういうイメージを描いてプロの世界に飛び込みました。
●理想を狂わせた最大の要因
――理想と現実の大きなギャップを生んでしまった最大の要因はなんだったのでしょうか。
吉持 やはりケガですね。1年目に死球を右手首に受けて尺骨を骨折。3カ月ほどかけて骨はくっついたのに2年目のシーズンを迎えても痛みがとれなかったので、2017年6月に手首を切って中を見てみたところ、手首の腱が9割切れていたことが判明したんです。
――右手首死球の際に骨だけでなく、実際には腱もダメージを受けていた。
吉持 おそらくそうだろうと。レントゲンなどの画像には映らなかったので開けてみるまでわからなくて。腱を繋ぎ合わせる手術によって、よくはなったものの、元の状態に戻ることはなかった。結局、手首の痛みは最後まで消えませんでした。
――そうだったんですか……。
吉持 3年目のファーム開幕戦では守備中に左足太ももの腱が剥離するケガをしてしまって。サッカー選手が引退に追い込まれてしまうようなケガで、手術を勧められました。ただ、手術をしても完治するわけではなく、しかも復帰まで2年半かかると言われて。医者からは保存療法だと再発すると言われていましたが、最終的には保存療法を選択しました。
――2018年の2軍の出場数が1試合どまりだったのは、そういう理由だったのですか……。その後、再発は?
吉持 6年目の2021年6月にベースを踏んだ際に再発してしまいましたね。
●メンタル面で感じたプロの壁
――3年目のシーズン終了後に育成選手契約となりました。
吉持 ケガが多いので育成にしますと。しっかりケガを治して頑張れと言われましたね。
――しかし実際は、その後も手首、足ともに本調子のコンディションとは程遠い状態でずっとプレーしていた。
吉持 痛みの程度に波はあっても、常に痛かったですね。なんとか試合に出れるという感じでした。打撃で大切な下半身に力が入らないから、思うようなバッティングもできなかったですね。
――「圧倒的な脚力。出塁すれば二盗、三盗は当たり前」というドラフト候補時の評価を体現できる足の状態ではなかった。
吉持 そうですね。ただ、そんな足の状態でも30メートル走タイムはチームで1番速いんですよ。現役最後の年でも。
――そうなんですか⁉ でも入団時に50メートル5秒6台を誇ったタイムは落ちているんですよね?
吉持 落ちてます。明らかに。
――ケガ後の50メートルタイムは?
吉持 正式に測ったことはないのですが、自分の体感では5秒9から6秒1の間ですかね。
――十分速い……。能力値グラフで最高値を誇ったツールの器のデカさを感じてしまいます。
吉持 でも、プロの世界で盗塁を成功させることの難しさは強く実感しました。特に1軍では。プレーしている時のメンタルの状態がプロとアマでは違いすぎました。
――プロの壁を感じた要素ですか?
吉持 そうですね。プロはメンタルの消耗がきつかったです。「失敗しちゃいけない」という気持ちがアマ時代の比ではなかった。一塁牽制で刺されてしまったら、弱気になってリードは小さくなってしまうし、盗塁を刺されると、「次も失敗したらどうしよう」となり、次のスタートがなかなか切れなくなってしまったり。
――ミスを引きずってしまうタイプだった?
吉持 そうですね。特に足を故障してからは、余計にメンタルがネガティブになっていきましたね。体が思うように動かないので余計に自信が持てない。「走ったらセーフになれる!」とはなかなか思えなかったです。
『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ1998-2022〈増補改定・完全保存版〉』のインタビュー全文公開はいかがだったでしょうか?
本からnoteにお越しいただいた方は、いままで読むことができなかった、未掲載部分を読み、いかがだったでしょうか?
まだ誌面を未読の方、このような深く、独占情報満載のインタビューがあと5本掲載されている『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ』をどうぞよろしくお願いいたします!