褥瘡治療薬のファーストステップ
薬剤師にとって褥瘡治療薬は難しく感じる人が多いかと思います。私もその一人でした。
その中で、薬剤師の活躍が外来だけでなく個人在宅、施設在宅にも広がってきており「お大事にどうぞ」だけでは済まされなくなってきてます。
そんな中で私の理屈(屁理屈?)を述べていきますのでよろしくお願いします。
「ヤクワンロジック」なんて偉そうな呼び名で呼んでくれると嬉しいです。
基剤に注目して考える
私の読者のうち、多くは薬剤師かと思います。
薬剤師であればやはり製剤の特徴から考えていきたいと思います。
その中で主成分でなく基剤を注目してください。
基剤は主に二種類
吸水性基剤
一つは吸水性の基剤。これは患部を乾かすために使います。「乾かす」というとカラッカラにするようなイメージになりますが、臨床では浸出液を吸い取る事がメインのさようです。
実際の基剤としては、ユーパスタなどに含まれる白糖であったり、アクトシン軟膏、ブロメライン軟膏に含まれるマクロゴールです。
白糖もマクロゴールも浸出液を吸い取る事で患部を乾かしていきます。
水分を保持する基剤
もう一方の基剤は皮膚の水分を保持する基剤です。
ここで疎水性の基剤と言い切れないのがややこしくしています。
上記の吸水性の基剤は水分を組織から吸い取る事に対して、皮膚の水分を保持する基剤のため、ワセリンなどの軟膏はもちろん水分含量の多いクリーム剤もこちらに含まれます。
代表的な製剤としてゲーベンクリームがあります。
クリーム基剤は通常では患部を乾かすタイプに属しますが、褥瘡治療では浸出液があるためクリーム剤では浸出液に洗い流されてしまうので、こちらに属します。
その他、こちらに属する薬はプロスタンディン軟膏、アズノール軟膏、ワセリンなどがあります。
感染の有無に注目する
次に基剤に違いに注目する一方で、患部の感染の有無に注目して考えます。
抗菌作用のある製剤
抗菌作用のある製剤はとして、ポビドンヨード含有のユーパスタ軟膏、カデックス軟膏、ゲーベンクリームが代表的です。
抗菌作用の無い薬剤
一方で抗菌作用の無い褥瘡治療薬は、アクトシン軟膏、プロスタンディン軟膏、フィブラストスプレー、アズノール軟膏、ワセリン、亜鉛華軟膏、亜鉛華単軟膏などがあります。
浸出液の有無と感染の有無の二つで考える
つまり、浸出液の有無と感染の有無を二つで考える事が今回のヤクワンロジックの中心です。
図に示すと以下のような感じになります。
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X軸に患部の乾燥状態、Y軸に感染の有無を組んでみました。
ここで画面をスクロールせずに各エリアに一つずつどんな薬が考えてみると良いと思います。
①感染有しー湿潤エリア
ここは浸出液も多く、感染もある褥瘡を考えます。ちなみにヤクワンロジックでは重症度を考えずに進めます。
あくまでも褥瘡治療を考えるためのファーストステップですのでできるだけ簡単に考えていきます。
ここではやはりユーパスタ軟膏かと思います。
その他、イソジンシュガー、カデックス軟膏もあります。。
②感染有り―乾燥エリア
患部が乾いてきた褥瘡に対して、①エリアの薬を使用しては過度に患部を乾燥させてしまう以外に、単に薬が患部に乗っているだけで効果も十分に発揮できなくなります。
このエリアの代表的な薬はゲーベンクリームとなります。
ゲンタマイシン軟膏、フシジンレオ軟膏、クロマイーP軟膏などでも応用ができますが、ゲーベンクリームの広い抗菌スペクトル以外にクリーム剤である為、ある程度浸出液を吸い取る作用を持ち合わせているので、他の軟膏剤より使いやすいのが特徴です。
③感染無しー湿潤エリア
このエリアの薬剤は①と同じく吸水性の基剤の物になります。
代表的な薬はアクトシン軟膏になります。基剤はマクロゴールになります。
余談になりますがマクロゴールの吸水作用は分子量に比例し、分子量の多い物ほど水分保持作用が強いとされています。
内服薬のモビコールがその作用を活かした下剤です。
④感染無しー乾燥エリア
このエリアは①~③よりも重症度は軽いのが特徴です。
この④エリアの薬はこれ!というのは難しいところです。
褥瘡の原因の一つが、患部の血流障害という事を考えれば私のオススメの一品はプロスタンディン軟膏です。
肉芽の形成が不十分であればフィブラストスプレーが使えるエリアです。
以上をまとめるとこんな感じになります。
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とりあえずここから!
褥瘡治療薬でイメージがわかない、理解しづらいという方はまずはこの4製剤を中心に覚えていく事をお勧めします。
慣れてきたら有料エリアも読んでいただくと理解は深まるかと思います。
各論は自分の考えや経験も含まれてますので、あえて有料のカギをかけさせていただきました。
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