ステロイドの塗り薬についてその①
ステロイドの塗り薬は多数ありジェネリックになると名前は覚えづらいし・・・でも、臨床の現場での使用頻度は多いという薬です。
今回はその中でも基本的な事項を述べてみました。
ステロイド外用剤(塗り薬)のランク
Ⅰ群~Ⅴ群の5段階が日本では設定されています。
Ⅰ群:ストロンゲスト
Ⅱ群:ベリーストロング
Ⅲ群:ストロング
Ⅳ群:ミディアム
Ⅴ群:ウィーク
と、なっています。正直「〇群」と言われても
「強いのはⅠ群?Ⅱ群?」
と、ピンとこないので「〇軍」と読みかえて、野球の1軍2軍のように印象付けても良いかもしれません(野球を知らないとさらにピンとこないかと思いますが・・・すみません(-_-;)
ランクの一覧は良く目にするのでここでは割愛します。
ステロイドのランク表の読み方
Ⅰ群から強い順に並んでいるのですが、その群の中も強い順に並んでいます。ですので、同じランクなら変わらないというわけではありません。同じランク内でも上位と下位では差は出てきます。
また、このランクは日本は5段階ですが、アメリカは7段階となっており、その他の国では4段階で設定されているところもあります。各国の分類によって評価が変わる薬剤もあります。
このランキングを意識しすぎて「医師の説明が間違っている!」と、息巻いて指摘するのもあまり良くは無いかと思います。
医師の中には自身の経験も含めて強い弱いを判断している事もありますので、そこは処方医の意図を汲む必要があるかと思います。
最終的に重要なのは
「この症状はこの薬に合っている」
という理解をしていけるようになる事かと思います。
まずは、各ランクの代表的な薬物を私の偏見も含めて述べてみます。
Ⅰ群(ストロンゲスト)
デルモベートとダイアコートの2種類しか存在しません。
剤型の多さからするとデルモベートを覚えておくことをお勧めします。
デルモベートは軟膏・クリーム・スカルプローションなどがあり、クロベタゾールプロピオン酸エステルとしてはさらにシャンプー剤もあります(商品名コムクロ)。
ちなみに先発品のデルモベートスカルプローションはアルコールを基剤とする製剤ですが、後発品の中には乳液タイプがあり製剤として大きく異なる場合があるので、後発品の選択は慎重に行う必要があります。
この群の特徴は、副作用の面でも一番強いため短期間の使用が原則であり、使用部位も限られます。顔面に使うことはほとんどありません。
皮膚の萎縮も早く現れる事があります。
デルモベートやダイアコート、(ランクは一つ下になりますが)フルメタの3種は皮膚刺激の副作用は多い気がします。その為、後発品への変更により刺激が変わる事があるので、変更は慎重にすると良いかと思います。
Ⅱ群(ベリーストロング)
薬剤師をしていて、この群の中で一番目にするのはアンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)かと思います。剤型も軟膏・クリーム・ローション(乳液タイプ)と3つ揃っています。また、軟膏はヒルドイドソフトとの等量混合の処方はよく見かけます。
アンテベートはガイドライン上では長期の使用での副作用のリスクは記されてます。個人的にも長期間使うのであれば必要に応じてランクは下げていく必要はあると思います。
また、このランクは顔に使用する事もありますが、専門医以外は顔面には使用せず、体までの使用としている医師が多いです。
Ⅲ群(ストロング)
この群の代表はなんと言ってもリンデロンV(ベタメタゾン吉草酸エステル)かと思います。
剤型も軟膏・クリーム・ローション(乳液タイプ)と3つ揃っています。また、リンデロンVGも同じ成分のステロイドが含まれております。
OTCでも販売されているランクです。
ちなみにリンデロンVとVG、軟膏とクリーム、ローションなど調剤ミスを引き起こしやすく、薬局としては悩ましい薬なうえに、以前には後発品の名称が「デルモゾール」という商品もあり、デルモベートと間違えやすい鬼門の薬でもあります。また、一般名の「ベタメタゾン」という名称が他のステロイドにも含まれている文字列であることが、これまた面倒くさい事になっています。
よく使われる薬なので、ここは愛着を持って「ベタ吉」とでも呼んで覚えておいてください。
この群は一般的には体への使用となります。顔に使用する場合もありますが、専門医以外ではあまり見かけたことはありません。あっても短期間の使用に留めるように指示が出ている事が多いです。
Ⅳ群(ミディアム)
この群でよく使われるのが、ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド )、 クロベタゾン酪酸エステル(キンダベート )あたりですが、いずれも先発品ではローション剤が無いという弱点があり、先発品で3つの剤型が揃っているのは プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(リドメックス)となります。
この群は顔にも頻繁に処方されているのが特徴です。また、小児科では顔のみならず体にも使用される薬剤群です。
ミディアムと形容されているものの、臨床的には一番弱い物と考えても良いかと思います。
Ⅴ群(ウィーク)
プレドニゾロンのみですが、眼科用以外ではほとんど調剤したことがありません。
部位による吸収の差
これもネットで調べると良くある資料です。ここでは割愛します。
大きく分けると顔と体の2種類で十分かと思われます。
顔と体の境目はどのあたり?を知っておく事の方が重要かと思われます。
私の経験上では顔の上は額から、下は顎まで、左右は耳より前が妥当かと思われます。
輪郭の内側と言った方が伝わるかもしれません。
顔は基本的にⅣ群(ミディアム)クラスを使用しますが、重症度によってはさらに上位のランクを使用する事があります。
目の周りの場合、粘膜にかかる部分はⅤ群(ウィーク)を使用しますが、粘膜でない場合はⅣ群(ミディアム)を使用する場合もありますが、ここは主治医の判断が重要視されます。
Ⅳ群を使用した場合、眼に入るリスクはありますが目の粘膜に直接使用しない限り心配し過ぎる事はありませんが、服薬指導上目に入らぬように注意は促した方が良いかと思います。またⅤ群に属するプレドニン眼軟膏でも数週間の使用で眼圧上昇が起きた事例は出会ったことが少しだけあります。プレドニン眼軟膏の場合、多くは眼科医が処方しているので眼圧に関しては診察で診てますので殆どリスクは無いと思われますが、専門医以外の処方では長くても2週間程度に留めておいた方が良いかと思います。
また、吸収率が異常に高いのが陰嚢の部分です。陰嚢は角質がほとんど無いため薬剤の吸収が良くなります。
塗る量の目安はFTU
F フィンガー
T ティップ
U ユニット
ですが、人差し指の先端から第一関節まで塗り薬を出した量がだいたい0.5gで、これが掌2枚分に止めると良いですよという目安です。
ちなみにこの1FTUは、外用のチューブによって口径が異なりますが、どのサイズを基準としているかと良いますと25gです。
25gチューブなんてステロイドに無いじゃん!
と、思ってください。
保湿剤や整形領域の薬に多いサイズです。
また、チューブの出し方によって大きく量は変わります。
正直言って、正確に絞り出すことは不可能です。
また、目安としてもなんかいまいち使いづらいのが
1FTU=手のひら2枚分=0.5g
というところです。
なんかわかりやすい数値の組み合わせなんですが、2倍したり2で割ったり・・・
そもそも精密な使用はできませんので、次のように考えても良いかと思います。
1FTU=手のひら2枚分=0.5g=顔一面
手のひら2枚でも良いんですけど、これで良いんじゃないかと。
1FTU=顔一面
1と一で揃いましたし。
Fはfingerでなくfaceって事で。
一本何日分?
1回1FTUで1日2回の塗布なら
5gチューブでは5日分
と、なるわけですが、ここで注意していただきたいのが、今はステロイドの話題である事です。
薬剤師として大切な確認がありまして、医師の指示が「症状によって塗るのか?」、「症状にかかわらず塗る指示なのか?」を確認しなくてはいけません。
保湿剤では一定期間決まった範囲に塗り続けるわけですから、1FTUから計算してもいいのですが、ステロイドの場合改善に伴い塗る範囲は減っていきますので注意が必要です。
乾癬など改善しても塗り続けていく治療もありますし、慢性化した皮膚炎では改善が見られても続ける指示を出す事は多々あります。
なので、
一本(5g)は顔一面の広さなら一週間程度
と、ザックリ考えれば良いかと思います。
一本、一面、一週間。
どうでしょうか?
あくまでも使用の目安です。
これを基準に使用量と改善度を評価しても良いかと思います。
今回はこれくらいで。
また、よろしくお願いします。