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医薬品卸の談合事件って結局どうなったの?

こんにちは。れぱのんです。

医薬品卸の談合事件が発覚したのは昨年(2020年)の12月ごろ。あれから企業にはどんな影響があったのか。IR情報などにも目を通しながら振り返ってみましょう。なるべく読みやすいように書いていきますね。

そもそもの経緯は?

細かい説明は省きますが…

37都道府県で57病院を運営するJCHO(独立行政法人地域医療機能推進機構)は2年に1度、まとめて医薬品の入札を行う。この金額が半端じゃない。

2016年と2018年のたった2回で1400億円にものぼる。

そりゃ、卸としては何としてでも売上を出さなきゃいけない。


普通の業界であれば競争していくんだけど「薄利多売でお互いに体力を削り合うのは得策ではない」と思った卸たち(業界1位アルフレッサ、2位メディセオ、3位スズケン、4位東邦HD)が、お互いに落札できるように金額などを調整していたのです。

お互いの企業が利益を確保できるよう、金額を下げすぎず、いい感じな配分となるように。これは「公益の利益に反する」ということで、公正取引委員会によって取り締まられています。

どうしてバレた?

業界2位のメディセオが課徴金減免制度を利用したため。

課徴金減免制度とは、入札談合について公正取引委員会に自主申告することで課徴金(罰金)を減免される制度のことです。「すいません。実は僕ら談合してました。捜査に協力するのでちょっとオマケして下さい。」てな感じですね。

その甲斐もあって、メディセオは起訴・告発を逃れています。

逆に、他の3社7名(アルフレッサ、スズケン、東邦)の幹部たちは独占禁止法違反で刑事告発され有罪判決(懲役1年半〜2年、執行猶予3年)が言い渡されました。

(課徴金減免制度について詳しく知りたい方はこちら

実は2003年にも…

薬剤師歴が長い方は知っているでしょうが、2003年にも課徴金給付命令が下されています。この時は10社が談合に関与。今回の4社もしっかりと名を連ねています。

バイタルネット(1億9818万円)
アスカム(8,777万円)
スズケン(5,354万円)
東邦薬品(4,658万円)
小田島(4,354万円)(後のアルフレッサ
恒和薬品(3,134万円)(後のアルフレッサ
クラヤ三星堂(2,847万円)(後のメディセオ
マルタケ(2,462万円)
オオモリ薬品グループ本社(1,531万円)
シグマソリューションズ(7,44万円)

合計で5億3679億円の課徴金給付命令が下されたことになります。

え、ということは…?

2003年に罰則を喰らっているにも関わらず、2004年以降も相変わらず談合を行なっていたと見られています。談合の時効はたったの3年なのです。そのため、2019年に行われた調査の段階で対象となったのが2016年と2018年の入札だった。というだけ。

2016年と2018年のことばかり書かれていますが、時効で免れているだけで毎年のようにやることやってます。

「バレなきゃ丸儲け」だとでも思ってるのでしょうかね。

最近また新たに…

2021年11月9日には公正取引委員会が九州の卸6社に対し、独占禁止法違反の疑いで立ち入り調査を行っています。大手4社の子会社もしっかりと名を連ねており、もはや「談合がなかった時の方が少ないんじゃね?」とさえ思ってしまいます。

今回は国立病院機構が発注する31病院向けの医薬品(200億円分)が舞台。

今回は「九州エリア」だけですが、他の地域にまで捜査が及んだら…

医薬品卸たちは冷や汗じゃ済まないですね。「国立病院機構との取引が本マルではないか?」という見方さえあるようです。


決算報告書にはこんな感じで掲載

各社「独占禁止法違反」について決算報告書にて報告しています。そして、役員報酬の減額なども実施されています。(添付資料は別に読まなくて大丈夫です。)

【アルフレッサ】

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【メディパル】

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【スズケン】

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【東邦】

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卸の利益率は低すぎる!?

これは業界関係者であればご存知だと思いますが…とんでもない売上高に反し、利益は全然出せていません。ちょっと経常利益率を見比べてみましょうか。太字の数字だけ見てみてください。

アインHD▶︎4.24%
2021年4月期(売上高2,973億円/経常利益126億円)薬局

ウエルシアHD▶︎4.83%
2021年2月期(売上高9,469億円/経常利益458億円)ドラッグストア 

シミック▶︎5.95%
2021年9月期(売上高857億円/経常利益51億円)CRO

武田薬品▶︎11.45%
2021年9月期(売上高31,978億円/税引前利益3,662億円)製薬

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アルフレッサHD▶︎1.22%
2021年3月期(26,031売上高億円/経常利益319億円)卸

メディパルHD▶︎1.64%
2021年3月期(売上高32,111億円/経常利益529億円)卸

スズケン▶︎0.85%
2021年3月期(売上高21,282億円/経常利益182億円)卸

東邦HD▶︎0.84%
2021年3月期(売上高12,102億円/経常利益102億円)卸

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卸だけ極端に数字が低いというのがわかっていただけますでしょうか?どの企業も兆を超える売上高があるのですが、他業界ほど利益を出せていません。

もちろん、企業努力はしてる

当たり前ですが、各社しっかりと企業努力はしています。最近の取り組みだと下記のような感じ。大企業同士で手を取り合っている様子が分かります。興味がある方はリンクを貼ってるので読んでみてください。

アルフレッサ▶︎ビッグデータ・AI を活用した配送業務量予測および適正配車のシステム導入について~アルフレッサとヤマト運輸によるヘルスケア商品の共同配送スキーム構築の第一弾~(2021年8月3日)

メディパル▶︎(株)メディセオと(株)マツキヨココカラ&カンパニー 持続可能な社会を実現するための 新たな医薬品流通最適化モデル構築に向けた取組みに関するお知らせ(2021年10月29日)


スズケン▶︎Amazonへ医療関連物資の提供開始(2021年9月28日)

東邦▶︎新市場区分における「プライム市場」選択申請に関するお知らせ(2021年10月15日)

プライム市場について知りたい方はこちら

これからどうなる?

正直、談合事件の完全解決はまだまだ先だと思います。九州から他地域へ調査が広がれば、まだまだ膿は出てくるはず。医薬品卸業界の大手4社が1兆円以上の売上高を達成しているわけですが、これから先も苦しい経営は続くことでしょう。

これは大手に限った話ではなく、中小ならなおさら苦しい状況です。

日本医薬品卸売業連合の調査によれば1992年に351社あった医薬品卸企業が2020年には71社にまで減っています。そして大手4社が市場の約80%を占めている状況です。

かなり数は減りましたが、さらに寡占化は続くと予想しています。もちろん医療業界において無くてはならない存在ではあるので存在自体が無くなるとは思いません。が、「医薬品単体」の卸という存在はなくなるかもしれないですね。

お金とかの話

医薬品卸への就職を考えている人もいるかもしれないので…一応、有価証券報告書に記載されている平均年収や勤続年数も見ておきましょうか。

【アルフレッサ HD】平均年収689万円
(平均勤続年数14.0年、平均年齢44.2歳、対象38人)

【メディパルHD】平均年収775万円
(平均勤続年数18.3年、平均年齢46.7歳、対象169人)

【スズケン 】平均年収609万円
(平均勤続年数20.2年、平均年齢45.7歳、対象4,116人)

【東邦HD 】平均年収587万円
(平均勤続年数18.5年、平均年齢47.4歳、対象227人)

ご覧の通り、ホールディングス(HD)なので全社員の平均年収は公表されておらず、スズケンぐらいしかあまり参考になりませんが…それでも平均年収は高めの部類ではないでしょうか。

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ちなみに初任給はと言うと…

【アルフレッサ HD】
222,000円(薬剤師職)

【メディパルHD】
210,330円(薬事職|アトル:本社福岡)

【スズケン 】
251,500~259,500円(薬剤師職|転勤可)
236,500~256,500円(薬剤師職|転勤不可)

【東邦HD 】
261,000円(薬剤師職)

決して高くはないですね。調剤薬局やドラッグストアよりスタートラインが低い分、昇給はどんどんしていくのかもしれませんが、大きく稼ぎたいのであれば敢えてこの道を選ぶ必要はないのかな…?というのが率直な感想です。

もちろん「仕事内容が好き」とかであれば全然良いんですけどね。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました。なかなか厳しい経営状況であり、今後さらに不祥事が見つかる可能性を秘めていることを考えると…就活/転職アドバイザーとしては安直におすすめできません。


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れぱのん@薬剤師(元人事)
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