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「処方権」界隈

18記事目。

本日は「X」(旧Twitter)をしている薬剤師であれば目にしているだろう「処方権」問題について書いていこうと思います。

個人的にもこの話題は嫌いではないのですが、何分個人名をさらしているので言及しづらく、こちらで言及していこうと思います。


導入(処方権とは?)

まずは「処方権」の動きについて…
これは一部の薬剤師、医師が

薬剤師に「処方権の一部」を持たせることで、医師・患者・薬剤師のすべてに余計な手間と時間、コストを削減しよう

という狙いです。

では「処方権」とはいったいなんぞやと。

処方権(しょほうけん)とは、医師や歯科医師が患者の病状に応じて、必要な医薬品を選定し、処方せんを発行する権利のことを指します。これは法律で定められており、日本では主に医師・歯科医師のみが持つ権利です。

chatGPTより

よく薬局で薬を「処方してもらった」と使われることがありますが、実際には医師・歯科医師の処方された薬を「交付してもらった」というのが正しいところ。

薬局はあくまでも「処方せん」に基づいて薬を交付する場所で、「処方せんに書いていない内容の薬」を勝手に「追加・削除」できません。

削除できないのも肝です。

「薬余ってるから減らしてよ。」「わかりました」で薬局も終わらせたいのですが、基本的には医師や歯科医師の許可が必要となります。

この調整等を含み、薬局では患者さんの持ってきた処方箋の内容に不備があれば「疑義照会」という手続きを踏む必要があります。

これが一癖も二癖もあるんですよ…

例えば、「ロキソニン錠 1日33錠 1日3回毎食後」という処方箋があったとします。

だいたい用法を確認すれば、1日3錠と入れたいところのご入力であることが分かります。

これに関しても薬剤師は(自己判断だけでは)勝手に打ち換えて薬を交付することができないんです。

わざわざ病院や診療所に電話(あるいはFAX)を用いて確認を行い、変更の旨の確認が取れれば薬を渡せるというもの。
*このFAXも個人的にはあり得ないのですが…。

これ電話やFAXしたところで、医師とつながらないケースも多々あるんです。現場としては早く返答もらえるだけでありがたいのですが、じゃあ何のための確認だよと。

他にも、薬をパッキングする一包化だって医師の指示がないと通常はできません。

あまりにも薬剤師に対しての権限がないのです。

これらのしょうもない内容の問い合わせは日々の薬局業務を圧迫します。
なんなら、医師から「こんなこと聞いてくんな」と怒られたりも。

薬剤師としては「知らんがな」レベルですが、法律的にNGです。
また、睡眠薬でも、モノによっては寝る前という処方せんの記載ではNGで、「就寝直前」でないと保険をおろしてもらえなかったりするわけです。
これもどっちでもいいレベル。言葉の齟齬レベル。

こんなことに医師に連絡がつかなければ、薬を渡すのに日をまたいでしまうこともあるのです。

ここを改善したくないですか?というのが薬剤師の「処方権」です。

なぜ「にぶい」のか?

こんなんみんな「賛成」に決まってるやんと思うでしょ?
薬剤師は「保守的」な人が多く、その権限を持つことに対する「責任」が不安で「反対」までする人までいるんです。

勝手な肌感ですが、「反対」する人なんかはごく一部だとは思いますが、私と同じで「結局医師に処方箋を出してもらって初めて稼ぎが生まれる」ところが最も主要な稼ぎ頭となっている薬剤師がやれ「処方権よこせ」と動くことで多数の医師に目を付けられ、「あの薬局は変な奴がいるから処方箋持っていくな」という動きをされると死活問題なんです。

これもあくまで一部の医師であり、そこまで問題にはならないだろうとは想定しますが、あえて火種を作りたくない「事なかれ主義」でいたいのです。

また、「処方権の一部」というところを拡大解釈している方も散見されるかと。薬剤師”ごとき”がお医者様に文句を言ってと言われたり、これを口火に医師の仕事を持っていかれると思う医師もいますね。

そんなんではないと私は思っています。

ここ最近の流れ

私個人としては「処方権万歳」派です。

ただ、筆頭の先生方が最近荒れている。
結局は薬剤師にもっと職権を持たしたいがために話題作りのヘイトスピーチを行っているだけだとは思いますが、純粋に見れば罵られているだけ。

それを嫌がる薬剤師の先生方も多く、「処方権界隈」だの「反サロ」だの言われていますね。

あくまでプロレスであると割り切れば「頑張っているな~、期待されているんだな~」と思うのですが…。

また、おそらく「高額療養費制度の改悪」がきっかけかと思いますが、一般の方が、違うところで「医療費削減」をしてくれと言い出したところもきっかけで、「薬剤師ヘイト」が増えていることも大きいかと。

なお一つの案で「市販薬類似薬の保険外し」が話題に挙がると医師会が全力で止めにかかってきたり、その市販薬の処方権も医師にという動きをしたり。

「保険外し」まででおさまれば、処方権に近い権限が増えるので、いったんそこで段階を置くのも一つかと思いますが、「保険外し+医師の処方」となれば、より薬剤師の分野が限局されます。

ここは避けたい…。

医師はあくまで「医療の自身の分野のスペシャリスト」で薬剤師は「薬のスペシャリスト」
患者の求めから自身の専門分野外の薬を出そうとした場合の処方内容がめちゃくちゃだったりはよくあります。

ここまでなれば不安なところはありますが、「医師の診断」に対して「薬剤師が薬の選択調合」までなっても同じ6年大学に行くことを考えれば不思議でもなかったのに、市販薬は登録販売者ができて半分奪われ、なお詳細出ていないもののコンビニ販売には「薬剤師や登録販売者不要」と。
乱用薬物の指導だけは薬剤師が行えと。

今度処方箋調剤分野に関しても「袋詰め師」と叩かれたり。何ならAIでよくねと言われたり。

さんざんすぎますよね?

それでも私は日々自分にできる限り、店舗や私を利用してくださる方に誠心誠意対応する以上は考えていないわけですが…。

立ち上がるのはいつなんだ?

いくら世論で薬剤師不要論が上がっても、結果約6万件の薬局が3万件まで激減するだけだと思っています。

そのトップ50%にねじ込めるように今後の診療報酬の流れを捉えながら仕事を行うだけ。

私はそう考えています。

そのころまで自分の薬局が残っているかもわかりませんが…笑

ただおそらく薬局が半分になれば、免許はあるが雇用されない薬剤師は急増。そういう方メインに声が上がっていくのではないでしょうか?
腐っても私立の薬学部はストレート卒業で6年間1200万円以上必要なのに、稼げないどころか就職すらできないなんて最悪でしょう。

薬局が半分に減って困る病院・クリニックも少なくはないと思います。
院内調剤しないのは、自院で在庫管理したくなかったり、医師自身が調剤にも関わる、あるいは薬剤師を雇用するという追加の支出が出る為です。
なお医薬分業(医師が院内調剤→院外に委託の流れ)になったのは、利が上がる薬だけ無理やり処方すれば儲かるよね。かつ、自院の採用薬一覧以外の薬を出せず、治療の幅を狭めてしまうのを防ぐのも理由です。

門前薬局はある意味でその門前のクリニック・病院の薬品倉庫であり、行けばすぐに薬が手に入る環境が一番整っていることは間違いありません。
医師が特殊な薬を処方しており、門前薬局外に行けば、すぐに薬が手に入らなかったり変更依頼の問い合わせが増えたり、医師の仕事は増えるでしょう。

なかなか困りださないと動かない気はしますね。

現状発起人の先生方が啓蒙に励まれていますが、なかなか成果が出ないのもここが大きいのかと。

他力本願で申し訳ないのですが、個人的には変わることを切に願っています。

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