はじめに
大分合同新聞からコラムの連載を依頼されたのは2020年の2月末だった。夕刊の廃止に伴い、折り込みの形で朝刊にくっついてくる「GXプレス」なるものが新設され、そこにコラム欄ができるとのこと。詳しく伺うと、コラムのテーマは「ビジネス」で、県内各大学の教員が月一の持ち回りで担当し、「県内のビジネスマンに役に立つ情報を提供するのがねらい」との説明だった。
「別府大学の中で俺が一番不適格やん」と心の中で爆笑したが、生来のひねくれ者の僕は「やります」と即答した。「アメリカ小説紹介」みたいな依頼なら断っただろう。タイトルは「役に立たない話」でお願いした。ひねくれてるでしょ?すると、担当の記者さんは「さすがにそれは・・・」と不安げな顔となり、「かもしれませんが」を付け足すこととなった。
とにかく、笑える内容にしようと思った。それ以外は何も考えなかった。ビジネスマンの皆さんにも、「ああ、仕事行くのよだきいなぁ」と思う朝があるだろう。というか、そんな日ばかりだろう(勝手に決めつけて申し訳ないが)。だったら、政治や経済から天文学的に離れた場所で半世紀、何かのついでに生きてきたような僕が、役に立たないけど笑える話を書き、それを読んだ人が「くだらねえなぁ、まったく、この別府大学の先生」と苦笑いしながら職場に向かえるのなら、それはきっと素敵なことだと思ったのである。
最初のコラムを書いてから、すでに2年が経過した。お褒めの言葉が詰まった手紙を頂いたり、激励の電話を頂戴したりすることが時々あって、そんなときには、掲載されたコラムをおそるおそる読み返したりする。すると、当時の自分の感情や字数制限で省略した個所を思い出したりするわけで、そんな「あぶれもの」を「補遺版」として残しておきたい気持ちが強まった。新聞掲載された「本編」と「補遺版」をこのページに少しずつ書いていこうと思った次第である。