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過去はまるで生き物みたく
ミーンミンミンミンミンジーッ……
ガタンッガタガタン、ゥォーン……
耳障りな音と、繰り返される肩の揺れで、目を開けた。
赤錆の様な匂いが鼻をつく。
視界には、サンサンと音がするかのような日を灯した窓と
古ぼけた、派手好きの女性が赤ワインをこぼした様な色の座席。
それに、垢塗れの黄ばんだつり革が写った。
「……そうだ、うっかり寝ちゃって」
ぺりっとしたのりの様な口元を拭い、しわのついた紺色のスコートを慌ててなおす。
そして私は気づく。大事に持っていたはずの「アレ」がない。
あれあれ、とつぶやき左右のざらとした場に手をやり、のけぞり鉄柵を見上げる。
血の気がさっと引く。体はこわばり熱を奪われた感覚が襲う。
「探しものは、これかね。」
頭の糸をたぐる前に、声がした。ふっと前をみる。
座席と窓だ。
横をみる。
座席だ。
上をみる。
鉄柵だ。
下をみる。
有羊膜類竜弓類爬虫類竜盤目獣脚亜目テタヌラ類コエルロサウルス類所属
Tレックスだ。
【to be continued……】