五十路おっさん海に育
増税と買収の波が押し寄せ、私の会社が大規模なリストラをした。
国家や企業が国民を守る時代は終わったのだ。
「窓際の魔術師」と呼ばれ、30年会社でカバディしてきた。家族も貯金もない、身軽だ。
もはやこの国に私の生きる場所はない。
なので海に還る事にした。フフッ、母なる海よ。私の声を聞いてくれ。
できる事なら無事着水しエラ呼吸にならせたまえ、マンボウくらいになりたまえ。
そう願い、私は海へ飛び込んだ。
さよならワールドこんにちはオーシャン。
私を胎内に戻し給えーーー……!!
次に目が覚めた時、そこは海の中だった。
私は当然息が苦しくなるし全身鞭打ちで死ぬと思った。
だが、ならなかった。むしろ爽快だ、公衆の面前に全裸でぶーらぶらしている気持ちよさ、最高だ。
ふと気づく、水が見え、息もできると。
何が、と自分を触って確かめる。
胸にぷっくりホタテ貝、足に魅惑の生魚、腹にどんどこ元気な振動。
私はママ(ーメイド)になっていた。
【to be continued……】