私の出身地でもある奈良には野生の鹿がいます。
「767年に春日神社が創建される際に主神の建御雷命(たけみかづちのみこと)が鹿島神宮から遷る際に白鹿に乗ってきた」とされ、神鹿(しんろく)と尊ばれるようになったことから、1957年に国の天然記念物に指定されました。現在では文化庁によって保護され、奈良市街地に野生の鹿が人と共存しています。
しかし、奈良市街の外に鹿が出て、農作物の被害は深刻となり、農業従事者は「鹿害訴訟」を起こしました。現在では奈良市内を4つの区域に分け、山間部では約4000頭の鹿を捕獲する事業が許されています。
高校の時、社会の先生から、「運転する車が鹿と衝突するような交通事故を起こしたら、処罰される」と聞いていたのですが、実際は、不慮の事故は処罰の対象にならないらしく、今日まで知りませんでした。
奈良の鹿は、通常、人に危害を加えるようなことはありません。近づくと愛くるしくお辞儀をしてきて人懐っこい。
とは私は思っていません。襲い掛かってくるようなことはありませんが、子供の頃、荷物を荒らし、奈良の町で行われた写生会で絵を食べられた友人の姿が今でも忘れられません。
一方、屋久島は鹿せんべいで”餌付け”されることなく、人の暮らしと距離を置かれています。天敵となるような肉食獣が確認されておらず、年々数を増やしたようですが、近年では数を減らしているとのデータもあります。20年度のヤクシカによる農作物への被害額は約300万円。ピークだった11年度に比べ1割以下に減ったといいます。
鹿が里に下りないように保護柵をつくり、農作物被害を防いでいますが、時折、里まで下りてきます。被害が出ている場合、町による鳥獣捕獲が実施されます。2014年には屋久鹿の食用肉”ジビエ”が解禁しましたが、2020年度に有害獣駆除で捕獲されたのは2319頭。ピーク時の半分に満たない数です。
ちなみに、狩猟は基本的に趣味の範囲であるのに対し、有害鳥獣駆除は国や県、役場からの依頼で行い、鹿1頭で5000〜3万6000円程の報酬がもらえます。狩猟期間は11月15日〜翌年2月15日までと定められていますが、有害鳥獣駆除隊に入れば、期間外でも特定の鳥獣に限って狩りをすることができます。
屋久島に移住してから、鹿肉を販売する業者に友人が居て、何度か鹿肉をごちそうしてもらったのですが、その仕事をやめてしまいました。平野には、狩猟免許を持った方が居て、時々、区の行事の時にご馳走してくれます。とても豪快でおいしいです。飲食の事業を新たに始めるにあたってはジビエを取り入れてもいいと思っています。