#島ぐらしと魚たち 4月
ブロッコリー山とトビウオ
4月。
この世の緑色すべてをちりばめたような、春の屋久島の山々。
それはまるで、巨大なブロッコリーそのもの。
島を代表する魚、トビウオたちもブロッコリー山を見に……、来ているかはわからないけれど、この時期は「時期トビ」と呼ばれるツクシトビウオをはじめ、ガタンコ、セミトビ、アカ、アオと様々な種類が安房港に水揚げされる。
それらは大きさによって中中(チュウチュウ)、中(チュウ)などと選別される。
トビウオ漁師は皆、一目見ただけで判別できるのがすごい。
大漁した日には船じゅうトビウオだらけで、足の踏み場がないのもすごい。
鮮度が落ちないうちに驚くべき速さで箱詰めしていく。
その手際の良さ、永遠に見ていたいぐらい無駄がない。
漁師さんたちは皆、頭も顔も体中トビウオのウロコにまみれ、日焼けした肌に白い歯が、めっちゃかっこいい。漁師は船にいると3割増しでかっこいい。
青く銀色に輝くトビウオを刺身で食べれば、他の魚にはない、そのもちもちとした食感に驚く。
九州ならではの甘い醤油で口に運べば、思わず目じりが下がってしまう。骨や頭は良い出汁に、全身使えるエコでSDGsな魚なのだ。唐揚げもいいな、押し寿司も最近食べてないな。
新鮮なトビウオを車に乗せ、どんな料理にしようか、わくわくしながら家路を急ぐ、赤信号で停止し、違和感にふと腕見る。皮膚に張りついて乾いたトビウオのウロコが、春の日差しに輝いていた。
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川東繭右(かわひがし まゆう)
東京都目黒区出身
島の魚に魅了され、2011年屋久島に移住
学校司書補として勤務する一方で、魚の面白さや美味しさを普及する活動を行なっている
趣味は魚の耳石集め
好きな魚はクサカリツボダイ ヒトミハタ
お魚マイスターアドバイザー
水産庁魚のかたりべ
鹿児島県指導漁業士