#屋久島の鳥たち 8月
ホトトギスとウグイス
5月の連休が過ぎたぐらいから、「キョッ キョ キョキョキョキョ」と高らかに鳴く声が聞こえ始めます。
カッコウの仲間のホトトギスです。夏鳥としてインドや中国南部から渡って来ます。
特徴的な大きな鳴き声なので、誰もが聞いたことがある声の鳥ではないでしょうか。
この鳴き声を、「特許許可局」や「テッペンカケタカ」、「ホ ト ト ギ ス」と聞きなしされることが多いよう。
屋久島では「トッピョ(トビウオ)獲れたか」と聞きなしされるそうです。トビウオの獲れる時期に渡って来るからと聞いたことがあります。
「時鳥」と漢字をあてることもあるので、農業や漁業の時を知らせる鳥という認識が昔からあったのでしょう。
しかしホトトギスは上空を飛びながらだったり、森の梢にとまったりして鳴くので、はっきりと姿を見ることは少ないです。
ホトトギスをはじめカッコウの仲間は托卵といって、他の鳥の巣に卵を産んで子育てをしてもらうのが有名です。ホトトギスはウグイスに托卵します。
実際に托卵している様子は見たことありませんが、仕組みを調べてみるとその用意周到さに驚かされます。
まず、渡って来る時期からちゃんと理由があるようです。
托卵相手のウグイスの繁殖時期に合わせて、他の夏鳥より少し遅れて来るようです。
ウグイスが巣作りをしているような場所にやって来たホトトギスの雄は「キョッ キョ キョキョキョキョ」と鳴きます。
その声を聞いた雌がやって来て、大きな声で「ピピピピピ!」と鳴き自分の存在を雄に知らせ、おそらくその際交尾をするのではないかと考えられます。
ウグイスが2~3卵目を産むタイミングで、親鳥が巣を離れた隙に自分の卵をウグイスの巣に産むのだそうです。
その際ウグイスの卵を1個巣の外へ出し、それにそっくりな卵を1個産むことが知られています。
ウグイスの卵より1~2日早く孵化するホトトギスの雛は、ウグイスの卵を背中で押しやり巣の外へと捨ててしまいます。そして、育ての親のウグイスから餌をもらい大きくなるのだそうです。
見事な戦略で子育てを他の鳥にさせてしまう。ホトトギスってちゃっかりしているなぁと感じてしまいます。
このようにウグイスがホトトギスに托卵されてしまうと、巣立つ雛がみんなホトトギスになってしまいそうです。
でも実際は、散歩道や森の中ではホトトギスの姿を見るよりもウグイスの巣立ち雛に出会うことの方が多いです。
どうやらウグイスの繁殖は、ホトトギスが渡って来るよりも前に1回目が終わっているそうです。ホトトギスはウグイスの2回目の繁殖の時期に渡って来ているようです。
あと屋久島ではホトトギスよりウグイスの方が断然多い気がします。
ピンポイントで托卵されてしまったウグイスは残念な気もしますが、ホトトギスも子孫を残すために遠路はるばる渡って来るので、托卵に心血を注いでいるホトトギスを応援したくなります。
ホトトギスの声が聞こえるのも8月ぐらいまで。
托卵のことを知ると、「あとはまかせた!」と言っているように聞こえてしまいますが、無事にウグイスから大きく育ててもらい巣立ってほしいですね。
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福留 千穂/ふくどめ ちほ
鹿児島生まれの鹿児島育ち。県内の小中学校で養護教諭として勤めていましたが、ガイドを志し2014年に屋久島へ。屋久島の自然を案内する中で、野鳥の存在は避けては通れず、野鳥を覚えるために意識して見るようになったところ、野鳥のかわいさ、美しさ、たくましさに触れ、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。
現在はカメラを片手に、野鳥の姿や鳴き声を探して歩く「とりさんぽ」が生活の一部になっています。
耳を澄ますと、いろんなところから鳥の声がする。
よく見ると、いろんな鳥が近くにいる。
そのことに気付いてもらえ、野鳥の生活に気持ちを寄せてもらえると嬉しいなと思い、屋久島で見られる野鳥の様子をお伝えしていきたいと思います。