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#屋久島の鳥たち 11月

ヒタキたちの渡り

 11月になると、家の近くからよく聞こえてくる声があります。
「ヒ ヒ ヒ ヒ ヒ」文字にすると企んだ笑いのようですが、高くてよく通る声です。
 声の主はジョウビタキ。10月下旬から春先まで姿が見られる冬鳥です。
 この鳥は庭先の花壇や植木、耕作地や草原など開けた場所で、「ヒ ヒ ヒ・・・」と鳴き、縄張りを主張します。

家のすぐそばで見られるジョウビタキ
シルバーヘッドが名前の由来

 オスは頭が白っぽく、シルバーヘッドのおじいさんのようです。
 名前の「ジョウ」は漢字で書くと「尉」で老翁や翁、銀髪を表します。そして、「ヒタキ」というのは「火焚き」と書き、地鳴きの途中に入る「カッカッ」と鳴く声が火打ち石でたたく音に似ているからと言われます。
 ジョウビタキは家の周辺でよく声が聞こえてきますが、同じように「ヒ ヒ ヒ ヒ ヒ」と森の中で声が聞こえてくることもあります。
 森の中は鳥が動かないと姿を見つけにくく、じっと耳を澄まし、目を開き、何か動かないか待ちます。
 11月上旬まではリュウキュウキビタキがまだ残っていたり、本土にいたキビタキが遅れて渡ってきたところだったりするので、それらが声の主のようです。本格的に寒くなる前にこれから南へ渡って行きます。


そろそろ南へ向かうリュウキュウキビタキ。2021.11.24椨川で撮影

 11月下旬になるともうキビタキの姿は見られなくなります。この頃になるとルリビタキが声の主のことが多いです。ルリビタキも春先まで屋久島にいる冬鳥です。
 明るい青色の体にちょこっと入る差し色の黄色がおしゃれな小鳥です。なかなか姿を見つけられないので、出会うと嬉しいまさに「幸せの青い鳥」です。

出会うと嬉しくて、幸せな気持ちになるルリビタキ

 ジョウビタキがやって来る頃から姿が見られなくなるのがエゾビタキです。
 エゾビタキは9月上旬から10月下旬ごろまで見られます。夏にシベリア南部やサハリン、カムチャッカ半島南部で繁殖し、冬はフィリピンやニューギニアなどで過ごすために南下します。
 屋久島にはその途中で立ち寄りますが、家の近くの電線や林縁に見られます。あまり鳴き声は聞こえませんが、電線など目につきやすい場所にいるので見つけやすいです。エゾビタキが見られるようになると秋の訪れを感じます。

見やすい場所に静かに居るエゾビタキ

 エゾビタキと同時期、林縁に見られるのがコサメビタキです。こちらもあまり鳴かないし姿も目立たないので気付きにくいです。エゾビタキよりも更に南に移動し冬を越します。あまり屋久島でのんびりしていられないのか、見られる時期はエゾビタキよりも短いです。

メジロとコサメビタキ。コサメビタキは春の渡りの途中にも見られる

 ヒタキ類の多くは空中で昆虫類を採食します。
季節が進むと、エゾビタキがいたような場所にジョウビタキがやって来て、リュウキュウキビタキがいた場所にはルリビタキがやって来るというように、うまい具合に棲みかを引き継いでいっているようです。
 南へ旅立つ鳥たちが無事に冬を越し、また帰って来るのを楽しみにしながら、屋久島で冬を過ごす鳥たちの様子を観察するのもこれからの楽しみです。

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福留 千穂/ふくどめ ちほ
 鹿児島生まれの鹿児島育ち。県内の小中学校で養護教諭として勤めていましたが、ガイドを志し2014年に屋久島へ。屋久島の自然を案内する中で、野鳥の存在は避けては通れず、野鳥を覚えるために意識して見るようになったところ、野鳥のかわいさ、美しさ、たくましさに触れ、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。
 現在はカメラを片手に、野鳥の姿や鳴き声を探して歩く「とりさんぽ」が生活の一部になっています。
 耳を澄ますと、いろんなところから鳥の声がする。
 よく見ると、いろんな鳥が近くにいる。
 そのことに気付いてもらえ、野鳥の生活に気持ちを寄せてもらえると嬉しいなと思い、屋久島で見られる野鳥の様子をお伝えしていきたいと思います。