#屋久島の鳥たち 6月
巣立ち雛と親鳥
新緑も落ち着く5月下旬から6月上旬には、巣立ち雛が見られるようになってきます。
やけに地鳴きがにぎやかだなあと辺りを見渡すと、そこには羽の色のコントラストがまだはっきりしない雛の姿が見られたりします。よく見ると嘴に黄色味が残っていてひよこ感があります。
よく目にするのがヤマガラです。
ヤマガラはシジュウカラの仲間で、その中で唯一オレンジ色が鮮やかな鳥です。それほど警戒心は強くなく、人のすぐそばまでやって来て、ニーニーニー!とこちらに何かを言っているように鳴きます。
その雛はオレンジ色がまだ薄くクリーム色をしていて、嘴も黄色味があります。
ジャワジャワジャワ!ジャワジャワジャワ!と翼をぶるぶる震わせて親鳥にご飯をねだっているようです。きょうだいがいれば争奪戦になるので、全身で「お腹すいた!ごはんちょうだい!」とアピールしているように見えます。
羽の色が徐々に変わり始めると、自ら何かをとって食べようとしている姿も見かけます。
ホオジロの親子もよく見かけます。
雄は木のてっぺんや電線など目立つ所で、よく通る声で鳴きます。歌舞伎役者が隈取りをしているような顔をしていて、凛々しいスズメといった雰囲気です。
夫婦で子育てをするのか、成鳥の雄雌と雛たちが一緒にいるのを見ることがあります。
親鳥について行きながら、雛たちも自分で何かを探して地面を突いているように見えますが、時々親鳥がサッと前に来て、大物の昆虫を口に運んでいるようです。
飲み込むのが大変そうな大物を丸飲みにすると、雛はしばらくご満悦の様子でじいっとしています。その表情がかわいらしい。
親鳥の役目は雛にごはんを運んでくるだけではありません。
こんな場面に遭遇しました。
散歩道のフェンスの上に1羽の雛がぼーっとしてとまっています。それに気づいた私は、カメラを向けてその子を撮影しようと集中していました。
するとそのフェンスの下でうろうろするものが。この雛の母親でしょうか。
翼を少し広げ、身を低く構えるような恰好をし、私の前を右へ歩いてはまた戻って左へ歩きを繰り返しているのです。
これは擬傷行為と呼ばれ、保育中の親が敵の注意を引き付けようと傷ついたふりをして敵をだまし、子を守ろうとする行為だそうです。
私の関心はそちらに向かいます。そのすきに私を子から離し、そして飛び立ちました。雛も親鳥の方に飛んでいき、2羽は無事に敵(この時の私)から害されずに済んだのです。
こんな小さい体で子どもを守ろうと身を呈する姿に、目頭が熱くなってしまいます。
時には巣立つ前の雛が巣から落ちたりして、地面にいることもあります。かわいいので、連れて帰って面倒を見てあげたくなりますが、そのそばに親鳥がいてケアもしています。そっとその場から離れましょう。ケガをしている場合は、県の鳥獣保護担当部署に連絡しましょう。
外の世界に出た雛たちは、自分たちで羽ばたき、食べ物を捕らえ、生きていかなくてはなりません。
たくさんの試練が待ち受けているでしょうが、鳥たちの子育てや雛たちの成長を、近付き過ぎずそっと見守っていきたいですね。
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福留 千穂/ふくどめ ちほ
鹿児島生まれの鹿児島育ち。県内の小中学校で養護教諭として勤めていましたが、ガイドを志し2014年に屋久島へ。屋久島の自然を案内する中で、野鳥の存在は避けては通れず、野鳥を覚えるために意識して見るようになったところ、野鳥のかわいさ、美しさ、たくましさに触れ、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。
現在はカメラを片手に、野鳥の姿や鳴き声を探して歩く「とりさんぽ」が生活の一部になっています。
耳を澄ますと、いろんなところから鳥の声がする。
よく見ると、いろんな鳥が近くにいる。
そのことに気付いてもらえ、野鳥の生活に気持ちを寄せてもらえると嬉しいなと思い、屋久島で見られる野鳥の様子をお伝えしていきたいと思います。