暇空茜氏・東京都・Colaboの住民訴訟についての個人的なメモ
なんか面白いことやってるなと思ったので、現時点で私のこの訴訟についての所見をメモとしてとどめておきます。
「令和 5年(行ウ)第24号 損害賠償請求等義務付け請求住民訴訟事件」が正式な名称のようです。監査請求の経緯とかはより詳しい情報があるのでそちらに任せます。
暇空氏が記事で言及している、裁判の記録については、係属中であれば東京地裁の担当部で、すでに終わった事件であれば記録係で確認できる情報なので、暇空氏が虚偽をいう理由もない、それを前提にします。
(4/16追記)
結構調子のいいこと書いたけどこの記事は割と極論に振りすぎてます。
「冷静に考えたら、今回は審理計画の都合上、裁判官の釈明権の行使が原告と利害が一致しただけで、現状裁判官が大きく肩入れしているわけでもないのでは?」というのがこちらの補論になります。
訴訟のルールについての基本的なこと
義務付け訴訟(4号訴訟)
今回の事件ですが、原告・暇空茜氏は「被告・東京都はColaboに対し金〇〇円を返還請求しなさい」という請求をしています。
被告自治体に対して第三者に対する作為を求める請求を義務付け訴訟というのですが、俗に地方自治法の住民訴訟の規定で「4号」に該当するので4号訴訟とも呼びます。この4号訴訟は近年制度改定されたものです。
制度が変わる前の4号訴訟は「代位訴訟」といって、今回のケースに当てはめるなら原告は暇空氏、被告がColaboで、原告・暇空氏は自治体(東京都)に成り代わって被告Colaboに「都の金を返しなさい」という請求をするという立て付けになります。ただ、この代位訴訟ルールだと被告たるColaboが敗訴しても、自治体が請求権を行使する義務は発生せず、行政の裁量に委ねられていたのです。
これと比較すると、現行制度ではColaboは被告の立場ではない一方、裁判に被告が負けた場合Colaboに委託金返還の債務が生じる結論は変わりませんが、都は義務付けに応じて確実にCobaboに返還請求を行うことになります。だからこそColaboは、東京都側に補助参加して、都側が負けないように必要な主張立証を行うという流れになります。
Colaboが参加人として参加するのはなぜ?
Colaboが直接参加する意義は、ひとつは東京都だけでは十分な主張が行えない場合にColabo側が自ら補充主張を行うこと、もう一つは東京都とColaboの一蓮托生の関係が崩れる可能性を想定してのことでしょう。
今回の被告・東京都から訴訟告知を受けた利害関係者であるColaboにとり、参加は建前上は任意です。東京都が原告・暇空茜氏の請求を退ける動きをする限りにおいて、必ずしも訴訟に参加する必要はないわけです。
ここで問題になるのは、東京都は、都民のために奉仕する自治体であって、都民の総意に反してまで1団体にすぎないColaboの擁護者である必要はないのです。やらしい話をすれば、東京都はColaboの会計にダメが出されれば『お金が戻ってくる』立場であって、新たな事業の財源として充当することができるわけで、Colaboからカネが戻ってくること自体に必ずしも不利益があるわけではない(それどころか・・・)という立場といえます。
果たして東京都がColaboの味方であることを誰が保証してくれるでしょうか。今回の訴訟は、立て付け上は「被告・東京都への補助参加」ですが、実質的な第3の当事者としての立ち回りに転じざるを得ないことも十分想定するなら、もっぱら都にのみ防御を委ねる選択はないといえるでしょう。
裁判所が都の主張にダメ出し?
原告・暇空茜氏の報告するところによると裁判所は期日において被告側の準備書面について補充の主張立証を求めたようです。
重要そうな部分は太字にしてます。
今回の期日はTeamsでのミーティング形式で行われたらしいのので、暇空氏の脚色がないとするなら、Teamsで裁判所が発した命令そっくりそのままなのかもしれません。
これが真実かどうかについては、裁判公開の原則があるので、すくなくとも裁判官が当事者に発問した重要事項は、口頭弁論調書という形で、閲覧可能な文書にまとめられるはずだと思われます。気になる人は東京地裁に問い合わせてください。
実体法上のルール
一般社団法人の会計において「その数字おかしいんじゃないの?」ってのが争点になってるのが今回の訴訟なので、裁判所が提出を求める以上は、参加人であるColaboは提出を拒否できないことになります。
もともと「義務付け訴訟」の前身の代位訴訟ルールであればColaboは被告の立場です。立法趣旨に照らせば、参加人申出の有無にかかわらずこの条文の指すところの「訴訟の当事者」に含まれると解釈できます(ツッコミあればどうぞ)。
手続法上のルール
今回の訴訟は行政事件なので、行政事件訴訟法と地方自治法に記載の特則がありますが、特別の記載がない場合、基本ルールとなるのは民事訴訟法です。裁判所が「出しなさい」といったのはシンプルな理屈です。
大雑把にいうと、「釈明」(149条)は主に訴訟の当事者、「釈明処分」(151条)はそれ以外の事件関係者に対して事件の全容を明らかにするための裁判所の権限を規定するものです。Colaboが補助参加していようがしていまいが、裁判所はColaboに、必要に応じて説明を求めることができる、ということ。
なお、行政事件訴訟法の釈明処分の特則(第二十三条の二)については、Colaboは同法同条に規定する行政庁にあたらないので今回は無視できます。
必要に応じて厚生労働省を参加人として呼び出したりできることを規定しています。
Colaboに拒否権はない
また、主張の裏付けとして証拠文書が必要になった場合、より強力な権限の行使たる「文書提出命令申立」という手続きがあるのですが、もちろん当事者・第三者にかかわらず法人の会計帳簿や計算記録を対象にすることができます。
回答拒否イコール敗訴?
いずれにしろ、裁判所は、争点を明確にするために被告・東京都側に補充の主張立証が必要であると言っているわけで、「原告の主張に対する答えになっていない」と裁判所が指摘するのであるから、東京都側が明確な答えを示さない限りにおいて、その部分の原告・暇空茜氏の主張は争わないものと推定して、裁判所は相応の結論を出すことになるでしょう。
要するに「我々が問題ないといったから問題ないのだ!」というトートロジー的な反論は都側はそもそも認められておらず、原告の指摘に的確な反論を用意しないままにすると「会計を正当と認めるべき根拠もないから〜」などと判決文に書かれてしまうことになるでしょう。
事実認定は他の訴訟でも援用できる
ところで、Colaboは名誉が毀損されたとして暇空茜氏だけでなく複数人を相手取って訴訟を提起しています。監査委員会ほか自治体や各行政機関の判断(行政処分等)は、「公定力」といって、裁判所は原則としてそれが正しいものとして事実認定の基礎にします。
今回の住民訴訟における原告の請求が認められると、単にColaboが受け取った金が東京都に返還を求められるのみならず、東京都の監査結果の公定力を覆す効果も生じます。
Colaboが戦線を拡大しすぎたのは裏目に出る可能性も?
Colaboの言うことろ「監査はなにも問題なかった!」(同法人の解釈による)というのを根拠に、Colaboに不都合な言論を封じるために恫喝的訴訟を行なっているとすれば、その前提たる監査結果が覆ると、それらの訴訟の結論も大きく変わってしまうことになります。
仮に住民訴訟が確定する前に判決が出てしまったという場合でも、事実認定の基礎が覆ったことを理由として、再審請求を行うことができます。仮に控訴・上告手続中であれば、その期間に「再審事由」を控訴・上告(または上告受理申立)理由として追加で主張することになるでしょう。
いずれにしてもColaboは東京都の監査結果が覆ることは絶対に避けねばならない立場であると言えるでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?