
[SF小説]やくも すべては霧に包つつまれて 6
「ああ、そういえばこれ、お土産」
食後にまったりと雑談をしている中、暁が鞄から箱を取り出して那由多に渡した。
「ありがとうございます。ええっとこれは、『空母最中』?ですか」
那由多は箱の包装に書かれた文字を読み上げる。そこには迫力満点の宇宙空母の写真と、それを模したお菓子の写真が並んでいた。
「地球防衛軍の基地とかで買えるおみやげだよ。最近人気のやつ。地球防衛軍のいろんな空母の形をした最中だね。確か売れ筋四位くらいだったと思う」
「へぇそうなんですかぁ…」
那由多はおそるおそる包装用紙をはがし、箱を開ける。
その中には白い小袋に一つ一つおさめられた最中と、いくつかある最中の種類が書かれた紙切れが一枚。
「いずも、エンタープライズ、クイーンエリザベス、いろんな空母があるんですねぇ」
紙には各空母の形に形成され、飛行甲板などの武装を表す焼き目がつけられた最中の写真がずらり。
那由多にとっては見たことも聞いたこともないものまでたくさんだ。
「これ、中の餡子粒あんなんですね」
「たしか小豆のつぶつぶを航空機に見立ててるとかなんとか…」
「へぇ…」
神﨑の補足、#漉し餡__こしあん__#派を寄せ付けない絶妙な表現技法に感心する那由多。
「おいしそうですね、ありがとうございます!」
暁の贈り物に笑顔でお礼を言って箱を戸棚にしまう。
「いやそれにしても、地球防衛軍はいろんなお土産があるんだな」
最中の箱を横目に見ていた光龍が口を開く。
「さっき俺があげた小惑星加乳糖なんかも人気だぞ」
「そういえば前は月見餅とかもらいましたよね」
「防衛軍の基地の見学者とかようにいろんなお土産が開発されてるらしいぞ。それぞれの基地で開発して、どのお土産が人気なのか勝負することもあるみたいだし。いっぱい種類があるから、俺も全部買ったことはないけど」
「…地球の平和を守るのも大変なんだなぁ…」
地球防衛軍のお土産話におもむろに口を開く光龍。
「まあ、素敵なお土産で喜んでもらうのも私たちの仕事だからな」
何気ないお土産の話で盛り上がる一同。
そんな地球防衛軍の知られざる仕事話をしていると久しぶりの再会にもかかわらず、時は流れるように過ぎてゆくのであった。