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君と一緒に(声劇用コメディ台本→男1女1)
君と一緒に
A→ヒロキ B→カツハ
ヒロキ→高校三年生、平凡。勉強は出来る方
カツハ→見た目は17-18歳、不思議な雰囲気の美少女
A(俺はヒロキ。平凡な高校生3年生だ。受験の年だと言うのに両親の仕事の都合でこの辺鄙な田舎に越してくる事になった。)
「はぁ...なんでこんな田舎に...高校までのバスも1時間に1本しかないし......卒業したら絶対都心の大学行ってやる」
B「あれ?初めて見る顔...珍しいね、こんな田舎に移住してくる人がいるなんて」
A「あ、えっと…」
B「何も無いよねぇ、ここ…私は自然が多くて気に入ってるけど」
A「そ、そうですね」
B「君は何でこの町にきたの?」
A「あぁ...き、昨日東京から引越してきて、それで、そこの高校に通う事になって...」
B「そうなんだ、これからよろしくね!
…あなたの名前は?」
A「ヒロキ、です...」
B「私はカツハよ」
A「カツハ...さん。こちらこそよろしくお願いします!」
B「敬語はいらないよ笑
多分歳も同じくらいだし、ね?」
A「わ、わかった......」
B「ん?どうかした?」
A「いや...その……凄く美人だからつい見とれちゃったというか...」
B「うーん…もしかして、これが『ナンパ』ってやつ?都会の人は手が早いって本当だったんだ......」
A「ち、違う違う!!そういうのじゃなくて!!ほんとにただそう思っただけで...!」
B「ふふっ、冗談だよ。お世辞が上手いね、ヒロキ君は。」
A「い、いや…お世辞とかじゃないんだけど…」
(これが、俺とカツハの出会い。カツハは近くに住んでいるみたいだが、学生ではないようだ。)
B「柿原くん、おはよ」
A「おはよー」
B「今日、学校休みだよね?どこ行くの? 」
A「親のパシリだよ…隣町まで行かないとろくな店がないから都合よく使われてるって訳」
B「ふふっ…親御さんと仲良しなんだね」
A「まぁ、反抗期とかは大して無いし…仲良い方なのかなぁ?」
B「羨ましいな、私には無いから…」
A「えっ、それって…どういう事?」
B「秘密」
A「……」
B「そろそろバス来るし…私、行くね」
A「あ、あのさ!良かったらなんだけど……
一緒に行かない!?」
B「え?」
A「お金は出すからさ!パシリのついでに何か好きな物買ってこいって多めに渡されてるし!」
B「私と一緒に行きたいの…?」
A「うん…カツハと、一緒に行きたいなって…」
B「ごめんなさい、一緒には行けない」
A「……そ、そうだよね!急に迷惑だったよね!……ごめん」
B「ううん、私と一緒に行きたいって言ってくれたのはとても嬉しかったよ…でも……」
A「でも?」
B「私は、ここを離れられないから…」
A「なんで…?」
B「そういうものなの。まだ、ね……」
A「まだって事はいずれは外に出られるって事?」
B「わからないけど、多分ね」
A「じゃあ、その時は一緒に行こう!」
B「なんで、そんなに私を誘ってくれるの?」
A「な、なんでって…それは……」
B「それは?」
A「えっと………あっ!ば、バス来たみたい!
乗らなきゃ!一緒に遊びに行けるの楽しみにしてる!」
B「うん。私も…もし、君と一緒に行けたらとても嬉しい」
A「うん!それじゃあね!」
(なんで、か…そんなの分かりきってるけど、いざ言葉にするのはやっぱり恥ずかしいな。
結局あと一歩の勇気が出ずに、何も伝えられないまま半年が経った頃…)
B「ヒロキくん、おはよー」
A「おはよー(あくびしながら)」
B「ふふっ、すごーく眠そうだね」
A「そろそろ受験本番だから、夜遅くまで勉強しないといけなくてさー」
B「もうそんな時期かぁ、受かったら東京の大学に行っちゃうんだよね...」
A「一応、ね...」
B「寂しく、なるね...」
A「俺がいなくなったら、寂しいって思ってくれるんだ…」
B「当たり前だよ、ヒロキくんは私にとって…特別だから」
A「...あ、あのさ!!」
B「ど、どうしたの??」
A(勇気を出せ…!今しかない!!ちゃんと伝えなきゃ…!離ればなれになっちゃうんだぞ!!)
B「ヒロキ、くん……?」
A「俺、カツハの事が好きだ…!」
B「えっ…!?」
A「出会った時から、ずっと好きだった!!!」
B「…………私も…だよ」
A「!!!それじゃあ…」
B「でも、あなたと一緒には行けない」
A「っ!!…ど、どうして!!俺が東京に行くから!?だったら行かないよ!君と一緒なら、ずっとこの田舎にいたっていい!!」
B「違うの…私……行かなきゃいけないの……」
A「…!?カツハも、東京に……?」
B「ううん、もっと遠い所……」
A「……どこだっていい!!君と一緒なら何処にだって行くよ!!」
B「ほんとに……?」
A「本当だ…!!」
B「じゃあ私と一緒に…天竺に行ってくれる?」
A「ああ行くよ!!!
…………ん?な、なんて?」
B「天竺に行ってくれる?」
A「て、天竺?天竺ってあの…西遊記の?」
B「そう。私の先祖は沙悟浄なの」
A「さ、沙悟浄!?沙悟浄ってことは…これ、あれ!??…………か、カッパ?カッパなの!?」
B「そう、私はカッパよ」
A「えぇ!!カッパ!?カッパなの!?か、カッパ!?もしかしてカッパだからカツハって名前なの!?えぇ!?」
B「そうよ、カッパだからカツハよ」
A「浅い!!浅ぁぁぁい!!!いや!!信じられない!!だって美少女じゃん!!皿!!皿ないし!!」
B「これは変化(へんげ)した姿。令和のカッパはだいたい妖術使いなの」
A「わかんない!!令和のカッパ情勢わかんなぁぁい!!俺はっ!俺は信じないぞ!!!」
B「好きな食べ物は、きゅうりよ」
A「カッパだ!!!!これはもうカッパ!!!
きゅうりなんてカッパしか好きじゃないもん!!!カッパだぁぁぁ!!!!」
B「私の三蔵法師になってくれる??」
A「え、いや……」
B「やっぱり、無理なんだね……」
A「ま、待って!!」
B「いけるの?天竺。」
A「て、天竺…は……ちょっとなぁ……」
B「嘘つき…何処にでも行くって言ったのに…!」
A「いやそうなんだけど…まさか天竺だとは…
えぇ…天竺、天竺かぁ〜〜…天竺ぅ…?」
B「カッパンチ!」
A「グフッ…!?」
(突如として腹部に鈍痛が走った。華奢な腕から放たれたとは思えないほど重く鋭いボディブローは容赦なく俺の意識を刈り取っていく…)
B「さよなら……ヒロキくん」
A(薄れゆく意識の中で人ではない何かが、見えたような気がした)
B「これが、私の本当の姿。もう…君が見ることはないけどね……」
A「カ…ッパ……」
(その後、カツハが俺の前に現れる事は二度と無かった。年が明け、俺は東京の大学に進学した)
B「さよなら…ヒロキくん…」
A(俺は今でも、あの時のカツハの言葉が脳裏にこびりついてる。あの時すぐに応えられていたら、何か変わっていたのだろうか。だったら俺は……)
「すいません!ここに…妖怪研究サークルに入りたいんですが」
〜fin〜